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『マウンテンドクター』で4度目の医師役の岡崎紗絵 「ドラマには人生を動かす力があると感動しました」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)カンテレ

山岳医療にスポットを当てたドラマ『マウンテンドクター』で、杉野遥亮が演じる主人公らのチームの麻酔科医役で岡崎紗絵が出演している。「Ray」モデルでの華やかな活躍の一方、女優としては地道に作品を積み重ね、10年を経てGP帯でヒロイン級を務める存在に。「命を救うと共に人間味も色濃く出る」という今回の役に、思うことや向き合い方を聞いた。

“正義”みたいな役をよくやりました

――『マウンテンドクター』の制作発表で「譲れないこと」について、「白米は白米」と話されていました(笑)。焼肉のワンバンがダメとのことですが、牛丼のつゆだくも?

岡崎 牛丼はギリギリかな(笑)。白米は白米で食べたいんです。ふりかけや梅干しはいいんですけど、タレとかが掛かってしまうと私はNG(笑)。そこは分けたいです。

――岡崎さんのスクラブ衣装は見覚えがありますが、医師役は4回目でしたっけ?

岡崎 研修医も含めると、前の『ブラックペアン』、『アライブ(がん専門医のカルテ)』、『ナイト・ドクター』に今回で、4回目になりますね。

――小さい頃も含め、実際に医者になりたいと思ったこともありますか?

岡崎 ないです(笑)。小さい頃はお医者さんにかかることが多くて、カッコいいなと憧れはありましたけど、自分がなれるなんて考えもしませんでした。

――でも、医者役にはハマっていて。

岡崎 振り返れば何度もやらせていただいて、嬉しいです。私にそういうイメージがあるのか、わかりませんけど。

――初期は警察関係の役も多かったですね。

岡崎 そうですね。鑑識だったり科捜研だったり。“正義”みたいな役が結構ありました。

処置中も全体をフラットに見ている役割です

――今回の村松典子は麻酔科医ということで、知ってることはありました?

岡崎 麻酔を使うんだろうな、というくらいで、実際に何をするのか、あまり知識はなくて。医療監修の先生にお話を聞いたりしました。全身管理と呼吸管理をしているんですよね。患者さんが運ばれてきて、みんなでワーッと処置に当たっている中でも、全体をフラットに引きで見ているそうです。お医者さんの中でも、職種で役割はだいぶ違うんだなと思いました。

――他の医療ドラマでも、麻酔科医は重要な存在として描かれています。

岡崎 手術をする外科医とかはわかりやすいですけど、それを支えている人も周りにいる。私自身、今回勉強になっています。

――医療シーンの練習もしたんですか?

岡崎 やってます。山で事故が起きたりするので、患者さんがどういう症状なのか、連携プレーで探る段階がまずあって。私はポンプで呼吸をアシストしたり、点滴を入れたり注射を打ったり、基礎的なことが多いです。

――本物っぽく見せるために、意識することも?

岡崎 器材の持ち方ひとつでも、指をピンとしているとソレっぽいとか、先生に細かく助言をいただきました。

山道を30分歩いて脚が上がらなくなって

――典子は「山に登るのは面倒くさい」と言ってますが、岡崎さんは登山の経験は?

岡崎 あまりないです。小学生の頃にハイキングをしたり、そんなにキツくない山を親と登ったくらいで、大人になってからはありません。体力に自信もないので。

――今回の撮影では、実際に山に行っているんですよね。

岡崎 もう大変です。山道を30分くらい歩くだけで、本当にしんどくて。杉野さんたちは5時間かけて登ったロケもあったそうですけど、私は30分でゼェゼェ言っていて、あり得ないと思いました(笑)。

――どこかが痛くなったりするんですか?

岡崎 まず脚がもつれてしまって、上がらなくなりました。木の階段みたいなのが続いているんですけど、幅が一定でなくて、デコボコや石があったり、トラップのようで。体力をどんどん消耗してしまいます。

――事前にトレーニング的なことはしました?

岡崎 小さな山を登りに行きました。どんなものかなと思って、地元で親と行ったんですけど、それでもゼェゼェしていました(笑)。

自分を曲げないところは似ているかも

――舞台になっている長野には、馴染みはありました?

岡崎 小さい頃はよく、家族でスキーに行ったりしていました。

――地方ロケのお楽しみがあったりもします?

岡崎 そばはたくさん食べてます。あと、1話のロケーションで松本城がすぐ近くに見えて、撮影の中空きに行ってきました。昔の急な階段とか作りがちゃんと残っていて、火縄銃が展示されていたり、面白かったです。

――典子は快活で明るい性格という設定で、キャラクター的には岡崎さんの素に近い感じですか?

岡崎 私も明るくしようとはしていて、自分を曲げられないところは確かに似ているかもしれません。でも、(山岳医療チームの)MMTに入って、院長に「何をやらされるんですか?」とストレートに言うような度胸は、私にはありません(笑)。

仕事と普段の姿が全然違うのを出せたら

――演じるうえで核にしていることというと?

岡崎 医者として見せる姿と普段の姿が全然違うので、そこをちゃんと出していけたらいいなと思っています。人の命を救う責任感はありますけど、後半には典子の悩みが医者人生の鍵になってくるので。

――1話で母親と電話するシーンがあって、「病院を継いでもらわなきゃならない」と厳しく言われていました。

岡崎 だいぶ強いお母さんがいて、今の病院には内科医としての修業に出されたことになっています。

――麻酔科医になったことは知らないようで。

岡崎 これから明かされることもありますけど、家ではどんな子だったのか、どう立ち回ってきたのかが垣間見えました。親に敬語でしたし、背景は考えています。

――3話では養子だったことも会話の中で明かされましたが、典子は自分でも医者にはなりたかったんですよね?

岡崎 そうですね。幼少期から、お母さんに憧れる気持ちも持っていたと思います。人生に良くも悪くも大きな影響を受けた存在。後半に親との関わりが色濃く出てくると、典子の気持ちが落ちて、元気でいられなくなったりもします。

患者さんがそこにいるなら行こうと

――典子は山に登るのを面倒くさがっていても、いざ事故があると「私も行く」と出ていきました。

岡崎 やっぱり医者としての信念や自分のあるべき姿には、揺るぎないものがあって。山に登って、そこから患者さんのいるところまで1時間以上かかって、典子も「行く」とは言ったものの、うわっとなったと思うんです。でも、患者さんがそこにいるなら行く、ということなんですよね。

――主人公の歩とは幼なじみですが、そういう関係の感覚はわかりますか?

岡崎 歩と(焼鳥屋の)真吾は小学校から一緒で、私にそういう存在はいません。この3人だから生まれる空気感や言えることはあって、現場でも台詞を変えたり、柔らかい感じにしたりしながら、幼なじみらしく演じるように努めています。

――歩の初恋相手でもあったということで、小学生なりに告白とかされたんですかね?

岡崎 初恋だったと知っているということは、周りにそそのかされたり、「お前のことを好きらしいよ」みたいなことはあったんでしょうね。そこは今後フィーチャーされることはないですけど、典子もまんざらではなかったと思います(笑)。

――山岳医療の現場で、典子が歩に「麻酔科医にもやれることはあったね」と言うシーンもありました。

岡崎 歩にとって典子は誰よりも近い存在で、一緒にいるだけで、気持ちの安定が違うと思うんです。頼りにされていて、私も現場でそういう存在になるのは夢ですね。

作品に携わる想いをより強く持って

――岡崎さんは女優デビューからは10年なんですよね。1月クールの『アイのない恋人たち』に続いてGP帯のヒロイン格で、すっかりステータスが上がりました。

岡崎 背負う責任とか見られ方とか、いろいろ変わってはきました。作品に携わる一員としての想いを、より強く持たなければいけないと、すごく思っています。

――自分の成長を感じられるときもありますか?

岡崎 ひとつのシーンが、自分で想像していたより良くなったと思うときはあります。難しいと感じていたのが、現場で不安が解消されたり。そういうことを1コ1コ積み上げて形にできたのが、成長の瞬間かもしれません。そんな瞬間が増えていくように、頑張っていきたいです。

――役者冥利みたいなものは、どんなときに感じますか?

岡崎 自分自身というより、たとえばこの作品を観た医療従事者の方に「励みになった」と言っていただけると、本当に嬉しいです。『ナイト・ドクター』のときも、「医者になろうと決意しました」とか「看護学校を受験する勉強をしています」といった声をいただいて。人生を動かすほどの力がドラマにあるんだと、感動しました。

――岡崎さん自身が、ドラマからそういう影響を受けたことは?

岡崎 「ああ、そうか」と思えた台詞はありました。「自信満々に見える天才だって、裏ですごく努力している」というような話があって。学生時代に観て、私も天才はいいなと思っていましたけど、「やっぱりそうだよな。努力しないと始まらないな」と思ったのは、すごく覚えています。

瞬発力がないとパニックになります

――岡崎さんの女優キャリアはずっと右肩上がりに見えますが、危機感を覚えた時期もありました?

岡崎 今でも全然ありますけど、お芝居を始めた頃は、何をどうしたらいいか、わかりませんでした。正解はないし、教わるものでもなくて。トンチンカンなことをして「違う」と言われたことも、自分だけ違うところに目線を向けて、映像を観るとおかしくなっていたこともあります。

――モデルから女優に活動を広げた頃ですね。

岡崎 ドラマって瞬発力が必要なんです。自分が考えてやったことを「そうでなく、こうしてほしい」と言われたとき、柔軟に対応できないと大パニックになります。経験を積まれた方は即座に変えられると思いますけど、私は「どうしよう?」と固まってしまって。いったん立ち戻って考え直さないとできなくて、危機感はありました。

――今は対応できるようになったんですね。

岡崎 日ごろから頭を柔らかくして、いろいろな線を考えるようにしています。「これしかない」と決めてしまうと、他は何もできなくなってしまうので。そういう余裕や柔軟さを持ちたいと、日々心掛けています。

日焼け止めをいっぱい塗っても焼けてます(笑)

――夏の連ドラ撮影は大変なこともありますか?

岡崎 熱中症にならないように気をつけています。山のシーンでは簡単に脱水になりますから。でも、水を飲みすぎても、トイレがすぐ近くにはないので、バランスを測っています。あと、焼けないようにしたくて。山では日焼け止めをめちゃめちゃ塗って、飲む日焼け止めも飲んで、やれることは全部やってますけど、それでも焼けるんですよね(笑)。

――仕事終わりに一杯、みたいなこともしますか?

岡崎 それはお楽しみで、ビールは最高です(笑)。皆さんの差し入れでも、アイスやスイーツは自分でご褒美にします。私からの差し入れはスタミナ丼とかこってり系にしてますけど(笑)。ごはんもしっかり食べて、元気に撮影できたらと思います。

Profile

岡崎紗絵(おかざき・さえ)

1995年11月2日生まれ、愛知県出身。2012年に「ミスセブンティーン」でグランプリ。「Seventeen」モデル卒業後の2016年から「Ray」専属モデルに。女優として2015年に映画デビュー。主な出演作はドラマ『教場Ⅱ』、『ナイト・ドクター』、『花嫁未満エスケープ』、『アイのない恋人たち』、映画『mellow』、『シノノメ色の週末』、『緑のざわめき』など。

『マウンテンドクター』

カンテレ・フジテレビ系 月曜22:00~

公式HP

(C)カンテレ
(C)カンテレ

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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