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オジサンのくしゃみの音が大きな理由は? 激しいくしゃみで肺が破れることも

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

花粉症シーズンになり、くしゃみで困っている患者さんが外来でも増えてきました。くしゃみが呼吸器系に及ぼす影響を、呼吸器内科医の目線から考察したいと思います。

くしゃみとは

くしゃみは医学用語で噴嚔(ふんてい)といいますが、医師に「ふんてい」と言っても通じないくらい市民権を得ていません。何なら、各種学会「くしゃみ」と記載しているくらいです。

くしゃみも咳も、異物を出す反射です。両者の大きな違いは、くしゃみのほうが衝動性(自分で止められない)が高いことと、それぞれ関与する神経が異なるところです。

くしゃみはどちらかといえば鼻の刺激によって起こるもので、三叉(さんさ)神経が関与します。咳は、咽頭~気道の刺激によって起こるもので、迷走(めいそう)神経が関与します。

アレルギー性鼻炎のときにくしゃみと咳がダブルで襲いかかってくる理由は、鼻汁がのどに垂れ込んで咽頭~気道を刺激するためです。

くしゃみは肺に負担をかける

くしゃみの威力については、過去にも記事に書いており、速度は自家用車くらい、飛距離はエアロゾルで最大7-8メートルに到達します(1)。ネットでは時速360キロメートルという数字が出回っていますが、これは昔の説に過ぎないというのがくしゃみ界の主流です。

さて、くしゃみは気道の内圧を急激に上昇させることがあります(図1)。肺はデリケートな臓器なので、急に息を吸ったり吐いたりすると、肺が破れて気胸という病気になってしまうことがあります。

肺に開いた穴が大きいと、呼吸するたび肺がしぼんでしまい、外科的な処置が必要になります。

図1. くしゃみは肺に負担をかける(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)
図1. くしゃみは肺に負担をかける(筆者作成)(イラストは看護roo!より使用)

過去に、15歳の男の子がくしゃみをして肺が破れてしまったという報告があります(2)。また、激しいくしゃみによって、喉の奥や横隔膜にまで穴が開いてしまったという報告もあります(3,4)。

オジサンのくしゃみの音が大きい理由

くしゃみの大きさが激しいほど、呼吸器系にかかる圧負荷が大きくなります。反面、我慢したり、鼻をつまんだりすると、それによっても圧負荷が大きくなるので、これもまた問題です。

適度なくしゃみ」というのが落としどころになりますが、人によってその「適度」のレベルが異なります。

たとえば、中高年のオジサンのくしゃみの音は大きいことが多いです。私もオジサンなのであまり批判的なことは書けませんが。

これは、男性のほうが女性より呼吸筋が多く、くしゃみ前に吸う空気量が多くなるためです。空気を抜く際ブーブーと音が鳴る風船も、大きく膨らませたほうが音が大きくなります。

若い人の場合、吸気量・呼気量をある程度コントロールできます。しかし、中高年になると、これが加減できなくなったり、周囲の目線を気にしなくなったりします。

このため、「オジサンのくしゃみの音は大きい」というイメージがあるのかもしれません。

くしゃみのエチケット

そういった側面もあり、日常生活では医学的考察よりもエチケットのほうが重要かもしれません。

厚労省が推奨している通り、咳やくしゃみ時は、マスクやティッシュ・ハンカチ、服のそでを使うことが望ましいです(図2)。

図2. 咳エチケット(参考資料5より引用)
図2. 咳エチケット(参考資料5より引用)

(参考)

(1) 「くしゃみの速度は新幹線より速い」は本当か? コロナ禍の研究で判明した真の速度(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20220423-00291885

(2) Bourne CL. J Emerg Trauma Shock . 2013 Apr;6(2):138-9.

(3) Yang W, et al. BMJ Case Rep. 2018 Jan 15;2018:bcr2016218906.

(4) Karangizi A, et al. Ann Thorac Surg. 2013 Jul;96(1):301-2.

(5) 厚生労働省. 咳エチケット.(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187997.html

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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