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新労使協約がギリギリ合意されたことで次回WBC開催は2024年になりそうな無視できない根拠

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
第4回大会メキシコラウンドの開幕セレモニー(筆者撮影)

【一気に活動を再開させたMLB】

 現地時間の3月10日に急転直下でMLBと選手会が新労使協約に合意し、同日夜に正式にロックアウトが解除された。それと同時に4月7日の開幕に向け、各チームは契約交渉を含め一気に活動を再開させた。

 翌11日からスプリングトレーニングが正式にスタートするとともに、改定された各チームのオープン戦日程が明らかになっている。

 とはいえ、チームによってはメジャー担当のスタッフをロックアウト期間中自宅待機させており、彼らも選手と同じように慌ただしくキャンプ地に向かっている状況だ。十分な準備期間もないままに、17日から始まるオープン戦に突入していくことになる。

 現在はMLBと選手会の間で、シーズン開幕当初は26人のロースター枠を拡大するかについて協議されており、できうる限り選手の負担を減らすかたちでシーズン開幕を迎えることになりそうだ。

【新労使協約合意でWBCも開催可能に】

 新労使協約に関して、合意後に米メディアを通してその内容が徐々に明らかになってきているが、その中にはMLBの国際戦略も含まれており、今後5年間でメキシコ、アジア(日本の可能性大)、プエルトリコ、ロンドン、ドミニカ、パリ7ヶ国で試合もしくはツアーを実施していくことで、合意している。

 MLBの国際戦略といえば、WBCも重要なイベントだ。MLBと選手会の共催イベントだけに労使協約に合意できたことで、こちらも開催に向け準備が進んでいくことになるだろう。

【MLB「現時点で詳細は何も分かっていない」】

 ただシーズン開幕に向け大忙しのMLBと選手会にとって、今はWBCについて協議していく余裕まではないようだ。MLB広報に確認したところ、「現時点で詳細は何も分かっていない」という回答を得ている。

 すでに日本ではメディアを含めて2023年の開催を期待しているようだが、日程上の理由から難しいと考えざるを得ない。どう考えても早くて2024年になりそうだという結論になってしまうのだ。

 改めて思い出して欲しいのが、2021年開催予定だった第5回WBCの延期が2020年に決定した背景についてだ。なぜ1年前に延期が決まり、早くても開催できるのは2023年になったかを考えてみたい。

【労使協約の切り替わりで2023年以降の開催に】

 当時も本欄でその背景を解説する記事を公開しているのだが、改めて整理しておこう。

 2020年はシーズン開幕前にWBCの予選ラウンドが実施されることになっていたのだが、新型コロナウイルスの影響でMLB自体の活動が中断され、それに伴い予選ラウンドも中止に追い込まれてしまった。

 MLBは第3回WBCから本大会開催の前年に、本大会出場を争う予選ラウンドを実施するようになった。第3回大会の際は前年の秋に、第4回大会では前年の春(ただし4つの予選ラウンド中1つだけは秋に実施)に実施していた。

 その第4回大会のスタイルを踏襲するかたちで、第5回大会でも2020年春に予選ラウンドを実施する予定だった。

 それが新型コロナウイルスの影響で中止に追い込まれたことで、大会全体のスケジュールが完全に崩れてしまった。2021年が前労使協約の最終年だったため、単純に1年の延期で乗り切れなくなったためだ。そのため2021年の本大会も含めて延期が決定していたのだ。

【ロックアウトの影響で今春も予選ラウンドが実施できず】

 元々「次回WBCが開催されるのは早くても2023年」の根拠になっていたのは、2021年オフに新労使協約に合意した上で、2022年春に予選ラウンドを実施し、2023年春に本大会開催という青写真からだった。

 ところがWBCを共催するMLBと選手会が衝突し、ロックアウトが長期化してしまったのだから、今年の春も予選ラウンドどころではなかった。つまり第4回大会のスタイルを踏襲するならば、2023年春に予選ラウンドを実施し、2024年春に本大会を開催するという流れになるわけだ。

 ただ第3回大会のように、前年秋に予選ラウンドを実施することも考えられるが、選手の負担を考慮されたからこそ第4回大会から前年春に移行しており、強行日程を選手会が了解するかどうか疑わしいところだ。

 とりあえずMLBはWBCの詳細が決まり次第、発表する予定だという。まずはそれを待つしかなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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