募集停止ドミノが続く大学・短大・2~2012年の危険62校のその後とは
◆大学の定員割れは昔から
3月に恵泉女学園大学、4月に神戸海星女子学院大学が募集停止となりました。
その結果、私立大学の定員割れが約半数(日本私立学校振興・共済事業団データで47.5%)ある点にも注目が集まっています。
ただし、「定員割れ=即募集停止の危機」というわけではありません。
大学事情に疎い経済評論家やビジネス週刊誌が勘違いしてしまいやすいのですが、大学は学校法人によって運営されています。
その学校法人は大学だけでなく、他の学校(小学校、中学校、高校など)を合わせて運営します。民間企業だと、ホールディングスのようなものです。大学は一部門ないし子会社のようなもの。その一部門・子会社が赤字だったとしても、他が黒字なら財政面では問題ありません。
大学も同じであり、定員割れであっても、多少であれば、学校法人によっては許容範囲です。
大企業も、ホールディングスで研究開発のために赤字会社・部門をあえて残すことがありますが、それと同じです。
しかし、学校法人にとって定員割れが酷くなると、その赤字を許容できなくなります。
そのラインがどこか、2000年以降、募集停止となった17校を精査していくと、募集停止直前の年の入学定員充足率60%割れだった大学が11校でした(11校に不明1校を含む/残りは60%台1校、70%台2校、80%台3校)。
記事では、募集停止となった大学が小規模校、都市部の立地などについても解説しています。
そして、過去の定員割れ状況についてもまとめたうえで、危険水域となるのは入学定員充足率100%未満ではなく、60%未満であること。その60%未満となる大学は2022年に30校だったことも、合わせてまとめました。
◆2012年の危ない私大・62校のその後
ところで、私立大学の定員割れは今に始まったことではありません。そして、危険水域とした充足率60%割れも、2000年以降、20校から最大で56校ありました。
ところが、2000年以降で廃校・募集停止となった大学は5月現在で17校。危険水域の大学数には到底足りず、矛盾してしまいます。
この矛盾(大幅な定員割れであるにも関わらず、募集停止に追い込まれない)、単に学校法人会計だけとは思えません。
「色々あった」で済むのは大河ドラマの話であって、きちんと検証するのは意義があるはず。
そこで、2012年に危険水域ないしそれに近い状態(入学定員充足率70%未満、または非公表の大学)だったと思われる私立大学62校を抽出。2022年データと比較してみました。
2012年とした理由は3点。
まず、1点目は日本私立学校振興・共済事業団データが2012年と20222年がほぼ同水準だからです。2012年は60%割れが、38校(6.6%)でした。100%割れは45.8%で、2022年の47.5%とほぼ同水準です。
2点目は、2012年が大学増えすぎ論で注目された年だからです。
2012年11月2日、田中真紀子・文部科学相(当時)が、新設認可を出す直前だった3校(秋田公立美術、札幌保健医療、岡崎女子)について「大学が多すぎて教育の質が低下している」「認可の判断を審議会に任せていいのか。審査がルーティンワーク化している」と述べ、不認可とすることを公表、賛否両論分かれる騒ぎとなりました。
そもそも、大臣発言の前日には大学設置・学校法人審議会が新設大学の認可を文部科学省に答申していました。審議会答申は大臣が認めるのが一般的であり、これを覆すのは極めて異例です。
結果、審議会答申を覆すのは無理があることなどから、田中大臣は6日後に発言を撤回しました。それでも、大学が増えすぎ、との論は世論からもある程度、受け入れられたのは事実です。
この2012年時点で充足率70%未満だった62校のその後を追うのは意義がある、と考えた次第です。
3点目は、情報公開です。2010年以前、大学の情報公開は義務付けられていませんでした。その結果、定員が大幅に超過して椅子がない・体育館で授業をする、などの大学が出てしまいました。その逆に、大幅な定員割れをしていても、受験生は全く分からない、ということも珍しくなかったのです。
日本私立学校振興・共済事業団の調査に対しては真面目に答える大学がほとんどでした。が、こちらは個別の大学名は不明。
高校の進路教員が絶大な信頼を置く『蛍雪時代 臨時増刊』のアンケート調査に対しては、「民間企業のやっていることで、回答する義務などない」と軽んじる大学もあったほど。そのため、2010年以前の『蛍雪時代 臨時増刊』は情報非公開の大学が実に多かったのです。2011年に文部科学省が情報公開を義務化。その翌年の2012年版には新入学者数を出す大学が増えました。
それでも、62校中、ノースアジア、松蔭、日本経済など22校が新入学者数を公開していません。
かと言って、あまり、近い年だと比較する意味がなく、2011年以前だと、新入学者数が不明で比較検討できません。2012年がちょうどいい年、と判断しました。
以下、2012年の62校データです。
以下の表について
・『蛍雪時代臨時増刊 大学内容案内号』(旺文社)の各年度版から筆者作成
・倍率は一般入試のもの
・偏差値は河合塾データで最高値と最低値の両方を記載。なお、入試形式により異なる場合がある
・偏差値で「BF」はボーダーフリーの状態を指す/「※」は記載なし/2022年データでは共通テスト方式などにより記載がない大学も含む
・「-」は参考図書に記載なし(大学側が非公表)/2012年版で新入学者数を非公表とした大学は、表掲載の大学以外に杏林大学、産業能率大学。ただし、両校については前後年の志願状況などから、対象外とした
・「※」は未開設、偏差値は記載なしを示す
・充足率は入学定員充足率を指す(入学者÷入学定員)
・2012年・2022年とも、入学定員充足率で80%以上の大学はブルー表示、60%以上70%未満の大学は薄いオレンジ表示、60%未満の大学はオレンジ表示とした
・2022年、校名変更・学部新設をした大学は太字表記
2012年・危なかった62校データ・1(北海道~栃木県)
2012年・危なかった62校データ・2(群馬県~長野県)
2012年・危なかった62校データ・3(愛知県~和歌山県)
2012年・危なかった62校データ・4(岡山県~熊本県)
◆安全水域が約半数のカラクリ
以上、3点から2012年の入学定員充足率70%未満の62校がその後、どうなったのか、まとめたのがこちらです。
2012年・危なかった62校のその後(2022年)・1(北海道~栃木県)
2012年・危なかった62校のその後(2022年)・2(群馬県~長野県)
2012年・危なかった62校のその後(2022年)・3(愛知県~和歌山県)
2012年・危なかった62校のその後(2022年)・4(岡山県~熊本県)
62校のうち、募集停止・廃校となったのは3校(創造学園、広島国際学院、保健医療経営)。
それと、成美大学は2016年に公立化、福知山公立大学となりました。
2012年との比較のため、2022年の表に掲載はしていますが、私立大と公立大は別ものですし、完全に持ち直した、と言えるでしょう。
以下、61校の入学定員充足率を見ていきます。
入学定員充足率は、60%割れとなったのは11校。
やや危険水域と言える60%台が7校、70%台が10校。
定員割れながら安全水域とも言える、80%台が11校、90%台が10校。
そして、100%台が9校でした。
まとめますと、募集停止・廃校と危険水域(60%未満)は14校、安全水域にあるのは32校、その中間(60%以上80%未満)は14校。
つまり、61校中、半数の32校が安全水域にあります。え?そんなに持ち直した大学が多いの?
そこで、偏差値・志願倍率データを見ていきますと、どうも怪しい。
最低偏差値が40.0となっているのは東京富士大学。同大は2000年代の低迷から脱却した私立大の、数少ない成功例です。
最低偏差値が35.0ないし37.5の大学は16校。残りはBFか、ほぼ同じとなる「※」となっています。
志願倍率も2倍を超えたのは5校のみ。
1.5~1.9倍も7校。
他49校は1.4倍以下。うち、非公表とする大学が8校でした。
情報公開が義務化されているのに、『蛍雪時代臨時増刊』で志願倍率を出さないのは、出版社の記載ミスでなければ、よっぽど悪いか、それとも大幅な定員超過か、あるいは情報公開の意欲がないか、いずれかが考えられます。
さて、倍率に話を戻すと、地方私立大は一般入試の志願倍率が低迷しやすい事情を差し引いても、不人気すぎます。
一般入試の志願倍率も低迷、偏差値も低迷、なのに、入学定員充足率は順調。いやいや、何かおかしい。
◆充足率20%でも100%になるカラクリ
色々あった、とか、ナレーション抜きでもどうにかなるのは大河ドラマだけです。
そこで改めて、充足率を計算するための新入学者数を再確認しました。
すると、東京神学大学は2022年の新入学者数がわずか5人。
え?
眼鏡を拭いて(比喩表現)再確認すると、入学定員は5人。なるほど、それなら充足率は100%になります。
改めて、定員の推移を見ていくと、東京神学大学含め、61校中30校は2012年の定員から減らしています。なお、2004年との比較だと33校が定員減でした(他は定員が同じ、または増加)。
東京神学大学は2004年時点では定員35人、2012年は定員25人。
2022年の入学者数5人で計算すると、2012年時点・20%、2004年時点・14.3%とボロボロです。それが定員減というリストラ策で、充足率100%に。
これぞ、数字のマジックです。いや、違法というわけではありません。
それでも、数字のマジックに頼らないと、学生数の少なさを隠しきれないことを意味します。
この東京神学大学のように、2004年時点から大幅に定員を減らした大学は61校中25校あります。この定員の推移と2004年・2012年時点の定員数で計算した充足率をまとめたのがこちらです。
定員を大幅に減らした大学・1(北海道~埼玉県)
定員を大幅に減らした大学・2(千葉県~熊本県)
表について
基本は上記のものと同じ
2004年・2012年計算の入学定員充足率は、分母が各年の入学定員、分子が2022年の新入学者数で計算した
2004年・2012年については、定員充足率60%以上70%未満については薄いオレンジ表示、同40%未満については濃いオレンジ表示とした
この25校、2022年時点の定員充足率では安全水域10校・危険水域5校。
それが、2012年時点の定員で計算すると、危険水域は14校。うち、40%割れの重度な危険水域は5校に増加します。
さらに、2004年時点で計算すると、危険水域23校、うち、重度な危険水域は13校と大幅に増加します。
◆定員減で維持するだけに
大学が定員を増やすのも、減らすのも、手続きを踏んでいる以上、なんら問題はありません。
民間企業でも、業績が悪くなればリストラ策に出るのが良くある話です。
身の丈にあった規模まで減らしていくのも、大学経営では必要でしょう。
小規模校の星と言われている、群馬県・共愛学園前橋国際大学も、一時的にではありますが、定員減を実施しています。
ただし、です。
民間企業の場合、再生のためにはリストラ策と同時に、新たなビジネスを伸ばしていくのが常道です。リストラ策だけでは単に規模が小さくなるだけです。
定員を減らすことは、教育サービスの低下を意味します。当然ながら、入学者数も多くなりません。その分だけ、学費収入も私学助成金も伸びませんし、受験生が他大学に流出、さらに定員を減らす悪循環に陥るリスクもあります。
しまいには、東京神学大学のように、入学定員5人というミニ大学が全国で増える可能性もあります。
大学の機能を最低限のものにしてでも、維持をする。そういう発想を否定するものではありません。定員減の大学のうち、東京基督教、東京神学、種智院の3校はいわゆる宗教系大学(種智院は仏教系、他2校はキリスト教系)です。
こうした大学だと、定員を減らせるだけ減らしてでも大学を維持する、という発想は合っていそうです。
大学教員側も、その宗教・宗派関係者が大半でしょうから、大学の維持のためのリストラ策は合意形成がしやすいはずです。
しかし、他の一般大学だとどうでしょうか。
大学教職員の側に立てば、リストラ策は雇用を脅かすことを意味します。
「大学の維持のためにはリストラしかない」と言われても、「そういうずさんな経営をした責任はどうなる」となるでしょう。
こうした大学教員の立場を考えると、リストラさえすればよいと断じるわけにもいきません。
とは言え、苦戦する私立大学の取り得る方策としては、この定員減によるリストラ策は、今後も増加しそうです。
◆原形がほぼ消えた?~奈良学園大学
リストラ策と同時に、新たなビジネスを展開するのが民間企業の再建策では良くある話。大学だと、学部新設やキャンパス移転・新設が当てはまります。
学部新設は15校。うち、奈良学園大学と神戸医療未来大学は少々、説明が必要です。
まず、奈良学園大学から。2012年時点では奈良産業大学でした。
奈良産業大学は1984年開設。当初は経済学部の単科大学でした。その後、法学部(1987年)、経営学部(1999年)、情報学部(2001年)を開設。社会科学系の中堅私大となります。
しかし、受験生獲得に苦戦。その結果、2007年に、経済・経営・法の3学部をビジネス学部に改組します。
さらに、2013年、ビジネス学部と情報学部を統合して現代社会学部に改編すること、人間教育学部と保健医療学部の新設を文部科学省に申請します。
ところが、文部科学省は2学部新設は認めたものの、現代社会学部については、要件を満たしていないとして「警告」を出します。
これで、学部新設がダメになったわけではありません。が、奈良産業大学は現代社会学部の申請を取り下げます。そして、同年11月には、ビジネス学部と情報学部の廃止を教員に表明します。2014年には、人間教育学部と保健医療学部の2学部体制となり、大学名も奈良学園大学に改称しました。
当然ながら、ビジネス学部・情報学部の教員側は収まりません。
一部教員は地位確認訴訟を起こし、2020年7月、奈良地方裁判所は原告7人のうち、5人の地位を確認、未払い賃金の総額1.2億円の支払いを命じました(毎日新聞2020年7月22日奈良地方版朝刊)。
このあたりの経緯は、田中圭太郎さんの『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書/2023年2月刊)に詳しく、その一部は、JBpress記事でも読むことが可能なので、そちらに譲ります。
少子化対応にしくじった大学の末路か、学部再編失敗で教員の大量リストラも(JBpress2023年5月9日公開)
経緯などが丁寧にまとめられた優れた記事です。
なお、田中さんは記事タイトル等で奈良学園大学について「学部再編失敗」としています。
私は若干、見解が異なります。
2012年の危険水域62校のうち、2022年に一般入試倍率が2倍以上となったのは公立化した福知山公立大学を除くと、61校中5校のみ。その1校が奈良学園大学です。
2012年の入学定員充足率31.5%という惨状を考えれば、短期・中期的には2学部新設は効果があった、と言えるでしょう。
ただ、長期的な視点では、田中さんのご指摘の通り、学部再編は失敗した、と私も考えます。
せっかく、情報学部を2001年に新設したにもかかわらず、潰してしまったのは、IT系学部新設が相次ぐ2023年現在からすれば強い違和感があります。
そもそも、ビジネス学部と情報学部を統合して現代社会学部にする予定でしたが、奈良県には奈良大学が1988年に社会学部を開設していました。仮に現代社会学部が開設できたとしても、奈良大学社会学部と似すぎていて、受験生の混乱を招いただけでしょう。
◆大学名称がコロコロ変わる~神戸医療未来大学
奈良学園大学と同様、2012年時点の原形がほぼ消えたのが近畿医療福祉大学です。
元々は近畿福祉大学として2000年に開設。2008年に近畿医療福祉大学に改称。
2013年には神戸医療福祉大学、2022年に神戸医療未来大学と大学名をコロコロと変更しています。
戦後の混乱期や大学統合などを除くと3回も大学名を変更した例は他に北翔大学くらいです。
1997年・北海道女子大学として開学、2000年・北海道浅井学園大学、2005年・浅井学園大学、2007年・北翔大学に、それぞれ変更しました。
ただ、同大の場合、共学化に加えて、2005年に当時の理事長による補助金不正利用という不祥事を起こしたことが影響しています。
神戸医療未来大学は共学化も不祥事も特にありません。単純な改称回数としては神戸医療未来大学が最多でしょう。
理由は社会福祉学部ブームの終焉にあります。1990年代から2000年代にかけて、高齢化社会を見込んで福祉系学部の新設が相次ぎました。
近畿福祉大学も2000年に社会福祉学部の単科大学として開設されました。
ところが、2000年代後半から、社会福祉士の合格率が注目されるようになります。国家資格の社会福祉士試験は難関であり、結果としては、国公立大学や私立大学だと同志社大学や法政大学など難関大学、または日本福祉大学など福祉系伝統校が上位に入り、新設校はその大半が低迷します。
社会福祉士に合格する・しないでは、福祉業界でのポジションや給料などが大きく変わります。
その社会福祉士に合格できないのであれば、受験生からすれば進学する意味がありません。私立大学側で合格率の低い大学は、合格率ではなく合格者ベースで隠ぺいしようとしますが焼け石に水。福祉系学部の人気全般も低迷しますし、志願者は国公立大学か難関大学、または伝統校を選択します。
そして、福祉系学部ブームでできた新設校は低迷する大学が続出しました。
こうした福祉系学部を私立大学は募集停止として切り捨てるか、大幅に縮小するか、どちらかを選択しました。
神戸医療未来大学は後者でした。2012年時点では社会福祉学部の定員400人のうち、社会福祉学科は250人。医療福祉・介護福祉・こども教育・福祉心理・環境デザインの5コースあり、医療福祉など3コースで社会福祉士の受験資格が得られました。各コースの定員振り分けは不明です。
この社会福祉学部を2000年に改組してできたのが、現在の人間社会学部です。さらに、2022年に社会福祉学科を名称変更して未来社会学科(定員120人)となりました。
同学科は3モデル(領域)に分かれ、社会福祉士の受験資格が得られるのは社会福祉モデルのみです。このモデルの定員振り分けは不明ですが、学科全体で見ても、2022年は2012年の250人からほぼ半減の120人としています。
開設当初の社会福祉学科はできるだけ縮小して、文系学部のイメージを強くするためにも、神戸医療未来大学は3回も大学名称変更が必要だったのでしょう。
◆中身の総とっかえも
大学名はほぼ同じでも、中身が大きく変わったのが東京純心大学。
2012年時点では東京純心女子大学であり、現代文化学部のみの単科大学でした。
その後、2015年に共学化に伴い、東京純心大学となり、合わせて看護学部を開設します。
しかし、2022年に2023年度から現代文化学部の募集停止を発表。
※表では学部は看護学部のみとしていますが、入学定員充足率は看護学部と現代文化学部の入学者数を合わせた数(86人)を使っています
結果、2023年現在、新入学生を募集するのは看護学部のみとなっています。
東京純心大学と同じく変わったのが、桃山学院教育大学。2012年時点ではプール学院大学、1996年開設で国際文化学部のみの単科大学でした。
国際文化学科だけでなく、子ども教育学科(2007年)、英語学科(2008年)、教養学科(2012年/国際文化学科と英語学科を統合)を設置するも、好転しません。
2014年に子ども教育学科を改組、教育学部となり、2016年に国際文化学部を募集停止。
2018年に設置者変更で、桃山学院大学を擁する学校法人桃山学院に変更となります。大学名も桃山学院教育大学となりました。2020年には学部名称を人間教育学部にしています。
総とっかえ、とまでは行きませんが、大きく変わったのが京都先端科学大学。
2012年時点では京都学園大学でした。同大は1969年開設。しかし、立地が京都亀岡キャンパスでした。京都駅から普通列車で27分、そこからバスで9分。乗り換えなどを考えると50分前後。
私立大学の激戦地である京都で、ターミナル駅から50分圏内では勝負になりません。2012年で5学部を擁していても入学定員充足率68.0%は、当然と言えるでしょう。
同大は2019年、設置者が学校法人永守学園に変更、校名も京都先端科学大学となります。
学校法人永守学園の理事長は永守重信。日本電産の創業者であり、カリスマ経営者としても有名です。
その前の2015年には京都太秦キャンパスを開設。経済経営学部(経済学部と経営学部を統合)、人文学部(人間文化学部を改組)が同キャンパスで4年間学ぶことになりました。京都駅からだと、地下鉄2本で17分、乗り換えを考えても30分圏内です。
同時に、健康医療学部を新設(京都亀岡キャンパス)、法学部を募集停止。
さらに、校名変更後の2020年には工学部を新設しました。
その結果、2012年時点と同じ学部はバイオ環境学部のみ。
入学定員充足率は68.0%から83.9%まで上がり、偏差値も最高値は37.5から42.5となりました。
もっとも、永守理事長はたびたび、偏差値批判をされているので無意味な数字と感じているかもしれませんが。
その後も、医学部新設構想を打ち出す(2020年7月9日「日刊工業新聞」)など、大学改革で話題となる大学に変わりました。
◆学部新設は明暗分かれる
学部を新設した大学は61校中、15校。
結果は、8校は入学定員充足率が80%超に。4校が60%以上80%未満。3校は60%未満で苦戦したままです。
2012年との比較だと、7校は10ポイント以上、伸び、うち3校(医療創生、奈良学園、環太平洋)は危険水域から安全水域にまで伸ばしています。
学部としては看護学部、医療系学部が多く、他に教育系学部(人間教育学部/桃山学院教育学部)、経営系学部(経済経営学部/環太平洋大学)など。
ただ、看護学部を新設しても、そこまで好転していない大学もあります。
需要のある看護・医療系学部を新設すれば必ず志願者が増えるというわけではありません。大学の立地や特性、周辺環境などを見極めながら検討することが重要であることをよく示しています。
さて、学部新設を分析していくと、別の側面も見えてきました。
それは…というところで、このシリーズ、もう1回、続きます。