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今年の灯油価格は昨年の1割増し、ガソリンは3週間ぶりの値下がり

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

資源エネルギー庁が10月30日に発表した石油製品価格調査によると、10月28日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は1リットル当りで前週比-0.3円の159.8円となった。

前週比でマイナスとなるのは3週間ぶりだが、基本的には160円の節目を挟んでの小動きが約1ヶ月半にわたって続いており、明確な方向性を打ち出せていない。今年高値の161.40円(9月9日)からは値下がりしているものの、今年上期の平均153.10円は大きく上回る価格水準での取引が続いており、ガソリン高は継続中と評価せざるを得ない。

都道府県別では、値上がりが6県、横ばいが1府5県、値下がりが35都道府県となっている。

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■原油価格が小幅軟化した影響

国際原油価格がやや軟調に推移したことが、ガソリン価格に対しても値下げ圧力に直結している。ドバイ産原油は、10月21日時点の1バレル=107.35ドルに対して、28日時点では106.95ドルまで値下がりしている。

それ程大きな値動きではないが、米国で製油所がメンテナンスシーズンを迎える中、製油所向け原油需要が鈍化していることが、国際原油価格を若干ながら押し下げている。米製油所稼働率は、9月13日の週の92.5%をピークに、直近の10月18日の週では85.9%まで低下している。

もっとも、今後は冬の暖房油需要期に向けて再び製油所稼働率が上振れするのは必至であり、米国内原油需給の緩和圧力を背景に、原油価格に対して調整圧力が継続することはないだろう。季節要因を反映した一時的な調整局面とみており、今後も原油価格は高止まりし、ガソリン価格も急騰リスクこそ軽減されたものの、160円絡みの高値圏での取引が続くとみている。

ドル/円相場には特に目立った動きがなく、今週は為替要因は余り材料視されなかった。国内出荷量は低迷し始めているが、原油価格コスト転嫁を見送るような動きは見られない。寧ろ、精製コストからは末端価格は低過ぎるとの見方も優勢である。

■灯油価格は3週連続の上昇

一方、灯油店頭価格は1リットル=101.8円となり、前週比+0.1円とガソリン価格の軟化に逆行高になっている。これで3週連続の値上がりであり、前年同期を11.4%上回っている。

こちらも原油価格が小幅安となったインパクトは同じだが、需要期を控えて業転市場でも10月の高値水準での取引になっている。まだ出荷が本格化している訳ではないものの、北海道や東北地方では雪も本格的に降り始めるなど、暖房油需要シーズンへの突入が灯油価格をサポートしている。

気象庁が10月24日に発表した最新の「全国 3ヶ月予報」によると、11月は「北日本日本海側では、平年と同様に曇りや雨または雪の日が多いでしょう。東・西日本日本海側では、平年と同様に曇りや雨の日が多い見込みです」とされている。12月も「北日本日本海側では、平年に比べ曇りや雪または雨の日が多いでしょう。東日本日本海側では、平年に比べ雪または雨の日が多い見込みです」とされており、平年よりも厳しい寒波が予測されている。

このため、国内需給要因から灯油価格が大きく値下がりを迫られる必要性は乏しくなっている。仮に昨年並みの灯油使用量でも家計への負担は前年比で10%を超える大きさを想定しておくべきだろう。気象庁の予報通りに厳し目の寒波となれば、更に家計負担は拡大することになる。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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