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「子育てで時間のマネジメント上手くなる」、男性の30.7%が「そう思う」ー「そう思わない」上回る

小川たまかライター

■子育てで時間の使い方が上手くなる? 男性有職者の意見は

「子育てをすることにより、時間のマネジメントが上手くなる」

「子育てをすることにより、段取りを考えながら仕事が出来るようになる」

「子育てをすることにより、思うように仕事に時間を割けなくなる」

この3つについて、あなたの考えは「そう思う」「そう思わない」、どちらに近いでしょうか。

日本労働組合総連合会が1月23日に発表した「パタニティ・ハラスメントに関する調査」では、1000人の男性有職者(20代〜50代まで世代別に250人ずつ、子どものいる男性525人、子どものいない男性475人)に対して、この3つについて、「非常にそう思う」「ややそう思う」「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「全くそう思わない」の5つの選択肢から単一回答で聞いています。

結果は次の通り。

(1)「子育てをすることにより、時間のマネジメントが上手くなる」

…非常にそう思う6.4%、そう思う24.3%、どちらともいえない42.4%、あまりそう思わない16.6%、全くそう思わない10.3%

→「そう思う」の合計30.7%、「そう思わない」の合計26.9%

(2)「子育てをすることにより、段取りを考えながら仕事が出来るようになる」

…非常にそう思う7.5%、そう思う28.6%、どちらともいえない38.1%、あまりそう思わない14.7%、全くそう思わない11.3%

→「そう思う」の合計36.1%、「そう思わない」の合計25.8%

(3)「子育てをすることにより、思うように仕事に時間を割けなくなる」

…非常にそう思う12.4%、そう思う36.5%、どちらともいえない33.7%、あまりそう思わない10.5%、全くそう思わない6.9%

→「そう思う」の合計48.9%、「そう思わない」の合計17.4%

■出産後の女性が口にする「時間の効率化」

私は子育て中の働く女性に取材をすることが多く、取材中には必ず「出産前と出産後で働き方はどう変わったか」について聞いていますが、この質問をすると、ほぼ100%の確率で「時間の使い方について効率化を考えるようになった」答えが返ってきます。出産前と違い、残業ができないのはもちろんですし、時短勤務の範囲内でできるだけ仕事量をこなそうと考えるためです。また、子どもがいつ熱を出すか分からないため、「明日出来る仕事でも先延ばしにせず、今日する」という声もよく聞きます。

ただし、これは働く女性に対して好意的な取材だから口にできた「自己評価」であり、時短勤務をすることに引け目を感じている母親たちには「以前より効率よく働いている自分を評価してほしい」という気持ちはなく、職場に対して働き方の変化をアピールをすることも少ないはず。そのため母親たちが工夫しながら、効率化を考えた働き方に取り組んでいることは、あまり知られていないのではないかもしれない。男性からの理解も少ないのではーー。

私はそう思っていたため、(1)と(2)の結果で「どちらともいえない」という回答が多いとはいえ、「そう思う」が「そう思わない」を上回ったことが意外でしたし、うれしい結果だなと感じました。

■「出産はキャリアと引き替え」、そう思う女性にこそ知ってほしい

もちろん、「時短勤務を取得した女性社員のために負担が増えて大変だ」と感じている人もいるのでしょうが、私は上記の結果や働く母たちの「効率を考えた働き方」について、子どもがいない女性たちにこそ知ってほしいと感じます。妊娠・出産で「自分のキャリアがストップすること」「仕事にかけられる時間が減ってしまうこと」に、心のどこかで躊躇してしまう女性たちにです。

これまで取材した中には、出産前と後で勤務時間は減ったけれど、仕事量自体は変わっていない(つまり、少ない時間で仕事量をこなせるようになった)と言う人もいました。「自分がそう思っているだけ」「出産前の仕事の仕方が悪かっただけでは」と思う人もいるのかもしれませんが、働く母たちが異口同音に「時間の使い方を意識するようになった」と口にすることは、もっと知られていいことだと感じます。

多くの母たちは出産後に「自分の時間が全くなくなった」と言います。わずかな時間をやりくりし、仕事中の時間の効率化を考え、時間の密度を濃くすることは、「自分の時間が全くない」育児中の親だからこそ、それまでよりも「深刻に」考えなくてはならず、そのために力がつくのではないかと思います。

(3)の結果が表す通り、子育てによって思うように仕事に時間を割けなくなると思っている人は多く、事実その通りなのだと思います(育休・時短取得率が多い女性の方が「仕事に時間を割けなくなる」と思っている人は多いはずです)。ただ、その事実を、まだ子どもを持たない女性たちが「自分のキャリアがストップする」と考えるのではなく、「時間の使い方を学べる時期」と、少しでもポジティブに考えられるといいと思っています。

(補足として)

働く母の時間の効率化について言うと、「それは大企業で働く仕事のできる女性だからそうなのでは」と言われることもありますが、私が取材してきた働く女性は、子育てをしながら大企業でキャリアを積み上げてきた、というような「凄い母」ばかりではありません。時間の効率化を考えることは、社内外で目立つポジションで働く”すごく仕事ができる”女性だけではなく、働く母の多くが淡々と当たり前のように行っていることだと感じています。また、子育てをしながら働くことには職場の理解が不可欠であり、「働く親は効率化を考えてもっと頑張れ」と言いたいわけではなことを念のため補足します。

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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これまで、性犯罪の無罪判決、伊藤詩織さんの民事裁判、その他の性暴力事件、ジェンダー問題での炎上案件などを取材してきました。性暴力の被害者視点での問題提起や、最新の裁判傍聴情報など、無料公開では発信しづらい内容も更新していきます。

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