ホロコースト時代の200冊以上の日記、デジタル保存へクラウドファンディング:25万ドル達成、追加調達
第2次大戦中にナチスドイツによるユダヤ人迫害、いわゆるホロコーストでは約600万人のユダヤ人らが虐殺された。ホロコーストの犠牲者の日記といえば「アンネの日記」が一番有名で全世界で既に2700万部以上が出版されている。
ホロコーストの犠牲となったユダヤ人たちの多くは日記を書いていた。だがそれらのほとんどは戦争中に喪失してしまったり、本人ととともに行方知らずになってしまった。それでもホロコースト犠牲者や生存者たちの日記は「アンネの日記」以外にもいくつか残っている。だが、それらは戦後70年以上の時を経て、紙が劣化していることや子孫も高齢化していることから、当時のまま保管しておくことが困難になってきている。
目標の25万ドル達成、追加で5万ドル調達へ
そのためアメリカのホロコースト記念博物館では、ホロコースト犠牲者たちの残存している日記、約200冊をデジタル化して保管し、それらをオンラインで公開していくことを計画。だがデジタル化やオンラインでの公開に向けては、多大な費用がかかることから、クラウドファンディングKickStarterを通じて募金を集めていた。クラウドファンディングとは、ネットを通じて世界中の人から何かしらのプロジェクトに向けて資金調達を行うこと。今回の日記のデジタル化プロジェクトの名前は「Save Their Stories(彼らの物語を守れ)」。
アンネの誕生日である6月12日から開始。目標額として25万ドル(約2,800万円)を掲げていた。4,500人以上から募金が集まり、目標額の25万ドルは達成した。そして現在、5万ドル(約600万円)の追加調達をクラウドファンディングで行っている。この5万ドルで、さらに10冊の日記の英語への翻訳を行うことを目指している。
資金が調達できたら、2018年冬までに約200冊の日記をデジタル化し、2019年春までにはオンラインで公開していき、2019年夏までにはいくつかの日記を英語に翻訳していく予定。
デジタル化され、多くの人に読まれるように
リガのゲットーで殺害されたユダヤ人歴史家シモン・ドゥブノフの最期の言葉は「書き、そして記録せよ」だったと言われている。彼は最期まで歴史の力、記憶の勝利を信じていた。また彼以外にも多くの一般のユダヤ人も日記や日誌の形で歴史を記録しようとする努力を続けていたそうだ。
歴史的な証言でもあるホロコースト時代の日記や当時の写真、絵には1人1人の生きた記録が描かれている。それらをデジタル化することによって、後世に伝えていこうとしている。ホロコーストで家族全員が殺されてしまったが、日記だけが博物館で現在まで保管されているケースもある。日記や写真などは人々の日常生活を生々しく描いており、重要な歴史的資料だ。だがどれだけ貴重な歴史的証言であろうとも、今までは紙の日記だからほとんど誰の目にも留まることがなかった。当時のユダヤ人が命がけで記した日記がようやくデジタル化され、ネットを通じて世界中の人が読むことができるようになることの意義は大きい。