子どもに多いIgA血管炎 - 紫斑や関節痛、腹痛に注意!
【IgA血管炎ってどんな病気?】
IgA血管炎は、別名シェーンライン・ヘノッホ紫斑病とも呼ばれる、全身性の血管炎です。血管炎というのは、血管に炎症が起こる病気の総称で、IgA血管炎の場合は、主に皮膚や関節、お腹、腎臓の小さな血管が侵されます。
この病気は、子どもに多く見られます。特に3歳から15歳くらいまでのお子さんが かかりやすく、平均すると6歳ころに発症することが多いようです。大人でも発症することはありますが、子どもに比べるとずっと少ないです。
IgA血管炎が起こる正確な原因はまだわかっていませんが、何らかの感染症にかかったあとに発症することが多いと言われています。ウイルスや細菌による上気道炎などがきっかけになることが多いようです。ほかにも、虫刺されやワクチン接種、薬剤なども発症に関係しているかもしれません。
【どんな症状が出るの?】
IgA血管炎では、皮膚、関節、お腹、腎臓に症状が現れます。
皮膚の症状としては、紫色のぶつぶつ(紫斑)が出るのが特徴です。これは、血液検査で血小板が減っているわけではなく、血管の炎症によって起こります。 身体の重力がかかる部位、特に足の裏や足首、お尻などに現れやすいです。
関節の症状としては、痛みや腫れが見られます。足首や膝などの大きな関節に出ることが多いです。
お腹の症状としては、痛みや吐き気、食欲不振などがあります。ひどい場合には、腸重積という腸が詰まる状態や、消化管出血を起こすこともあります。
腎臓の症状は、子どもの場合は比較的軽いことが多いですが、大人では重症化しやすいです。尿検査で血尿や蛋白尿が見つかることがあります。
【どうやって診断するの?診断がついたらどう治療する?】
IgA血管炎の診断は、特徴的な症状を総合的に判断して行います。血液検査や尿検査、場合によっては皮膚や腎臓の組織を採取して顕微鏡で調べる検査(生検)が行われることもあります。
治療は、症状に合わせて行われます。皮膚の症状には、ステロイド外用薬が使われることがあります。関節痛には、痛み止めや安静が必要です。お腹の症状がひどい場合には、絶食や点滴による治療が行われます。腎臓の症状がある場合には、ステロイド薬の内服や免疫抑制薬が使われることもあります。
多くの場合、数週間から数ヶ月で自然に治っていきますが、一部の方では症状が長引いたり、再発したりすることもあります。定期的な検査を受けて、経過を見守ることが大切です。
【最近の研究ではどんなことがわかってきたの?】
IgA血管炎の研究は、近年大きく進んでいます。
原因については、IgAという免疫のタンパク質の糖鎖の異常や、サイトカインというタンパク質の関与が明らかになってきました。また、体質的な要因として、遺伝子のタイプとの関連も指摘されています。
治療については、炎症を起こしているメカニズムを詳しく解明することで、より効果的で副作用の少ない治療薬の開発が期待されています。例えば、BAFFやAPRILというタンパク質をブロックする薬や、補体という免疫のシステムに作用する薬などが研究されています。
また、発症や重症化のリスクを予測するための血液マーカーの探索も行われています。ガラクトースが欠けたIgA1などが有望視されており、早期発見や適切な治療につながることが期待されます。
IgA血管炎は、今なお多くの謎に包まれた病気ですが、日々の研究によって少しずつ解明が進んでいます。原因の究明と、より良い治療法の開発を目指して、今後も研究が続けられるでしょう。
(参考文献)
1. Hetland LE et al. Pediatr Nephrol. 2017;32(8):1329-1337.
2. Heineke MH et al. Front Pediatr. 2017;5:104.
3. Kawasaki Y. Front Pediatr. 2019;7:60.
4. Med Sci Monit. 2024 Jan 28:30:e943912. doi: 10.12659/MSM.943912.