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「外国人がもうひとつ」なのではなく「中軸打者がもうひとつ」と言おう

豊浦彰太郎Baseball Writer

9月10日の朝、いつものように朝刊のスポーツ欄でプロ野球関連の記事をチェックしていると、某監督のちょっと気になるコメントを見つけた。「外国人がもうひとつ」。これは適切ではない。そもそもメディアに選手に対する苦情を述べること自体いかがなものかとは思うが、それはひとまずおいてもここは「中軸打者がもうひとつ」、または固有名詞を挙げて「A選手とB選手がもうひとつ」というべきだろう。特定の選手が従期待通りの結果を出せないことを、彼らの国籍と結び付けて考えるべきではない。

数日前にも、他の監督による「やっぱり外国人だよ」との発言があった。これらはコメントした方は何の他意もなかったとは思うが、客観的には人種差別発言と取られても仕方ないと思う。それでもごく自然にメディアに掲載され、問題視する意見も出てこないとはわれわれの鈍化力は相当なものだ。

アメリカでは、2012年の10月にテレビの解説者が「イチロー(当時ヤンキース)のバットはチョップスティック(箸)」とコメントしたところ、視聴者からの抗議が殺到したことがあった。解説者氏は、イチローのバットコントロールの巧みさを、欧米人から見ると感嘆するほどの東洋人の箸の使いこなしに例えただけだったのかもしれない。それでも炎上したのだ。「東洋人の食文化を異質なものとして見下す差別的発言だ」というのが抗議の声の主旨だった。

この一件などは、「別にそれほど騒ぐほどでもないだろう」とも思える。しかし、アメリカではそのくらい神経質にならねばならぬほど、人種問題は根が深いのだ。日本でプレーする外国人選手のほとんどもそのような土壌で育った、または触れてきたことを忘れるべきではない。

われわれだって、仮に海外でプレーする野球選手やサッカー選手が「日本人はもうひとつ」と言われると心中穏やかではないだろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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