Yahoo!ニュース

NY原油6日:ギリシャショックとドル高、イラン核協議で急落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油8月限 前日比4.40ドル安

始値 54.90ドル

高値 55.34ドル

安値 52.42ドル

終値 52.53ドル

ギリシャ国民投票で緊縮財政策の受け入れが拒否されたことを受けて、マーケット全体でリスク回避の動きが広がる流れで、原油相場も急落している。

原油需給見通しが何か大きな修正を迫られている訳ではないが、これまで国際原油需給の緩和状態にもかかわらず60ドルの節目水準で膠着気味のボックス相場を形成していた反動もあり、本日はアジアタイムから急落地合を形成している。為替がドル高方向に振れたこと、イラン核協議の進展に対する警戒感もあり、4月14日以来の安値を更新している。

原油需給環境に買い材料は乏しかったが、これまではガソリン供給懸念やドル反落などを手掛かりに、WTI原油は2ヶ月にわたって60ドル前後の価格水準を維持してきた。このために大きく仕掛けづらい状況になっていたが、ギリシャ国民投票をレンジブレイクの好機とみた弱気筋が多かった模様であり、一気に価格水準を切り下げることに成功している。

イランの核開発問題について、欧米とイランとの外相級会合が始まったこともネガティブ。7日の交渉期限までに最終合意に至るかは不透明感も残されているが、いずれにしても合意は近いとの見方が、イラン産原油の供給増加に対する警戒感を高めている。現在の国際原油市場にイランの市場復帰を迎えることができるスペースは存在せず、改めて価格低下で高コスト原油に市場からの退出を迫る必要性がある。

需給環境からはこれまでの値位置が高過ぎたと評価しており、ギリシャショックを手掛かりに漸く正常化が始まったと評価している。イランの市場復帰を考慮に入れなくても、このままドル高傾向が維持できれば、50ドルの節目割れを打診することも十分に可能とみている。ギリシャショックそのものは原油価格にとって大きな問題ではないが、それがユーロ安(ドル高)に発展すれば、強力なネガティブ材料になる。チャートも60ドル水準のボックスを完全に下抜けしており、トレンドフォローの売りが膨らみ易い状況になっている。

画像
マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

小菅努の最近の記事