台風11号 危険なノロノロ台風
最強クラスの台風11号
台風11号は午後3時現在、マリアナ諸島を西へ進んでいて、中心気圧925ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は50メートル、台風としてかなり発達した段階にあります。
台風11号は現在の勢力を維持したまま、12日(日)にかけ、ゆっくり西進し、13日(月)頃から進路を北寄りに変える予想です。その後は、日本の南海上に進む見通しですが、予報円が拡大しているため、進路や速度にばらつきが大きい(一様でない)と思われます。
一般に、7月-8月は日本付近を流れる上空の風が弱いため、台風の動きは気圧配置の変化に左右されやすく、動きも遅くなりやすい特徴があります。
台風11号は比較的ゆっくりとした速さで日本列島に近づくとみられ、いつ頃から、どの地域に、どのくらいの影響があるのでしょうか。過去、ゆっくりとした動きで日本の南海上を北上し、紀伊半島に未曾有の豪雨被害をもたらした2011年台風12号の例から考えてみました。
記録的な豪雨被害で特別警報制定へ
今から4年前の2011年、台風12号による記録的な豪雨が紀伊半島を襲いました。
台風12号は勢力こそ強くなかったものの、サイズの大きい雲がゆっくり回転しながら日本の南海上を北上し、長時間にわたって湿った空気を本州に送り込みました。
このとき、雨量が最も多くなったのは三重県大台町宮川(みやがわ)です。4日間で1630ミリもの雨が降りました。
紀伊山地は全国で有数の豪雨地域で、ここ宮川の年間雨量は3147.5ミリですが、東京の年間雨量(1528.8ミリ)に匹敵する雨がわずか4日間に降るとは、想像を超えた雨です。
この記録的な豪雨により、大規模ながけ崩れ、濁流が住宅や道路をのみこみ、多くの集落が孤立しました。死者・行方不明者は98人に達し、避難指示のあり方が大きく問われ、特別警報の制定の発端ともなった災害です。
ノロノロ台風は危険な雨台風
さて、台風11号に話を戻しましょう。現時点では比較的ゆっくりとした速さで、来週後半にかけ、日本列島に近づく公算が大きいです。
台風は反時計回りに回転する渦なので、ちょうど湿った空気を日本列島に送り込む役割をはたします。また、日本の東海上にある太平洋高気圧の縁を流れる湿った空気も影響し、太平洋側の広い範囲(南東側の斜面を中心に)で強い雨が降りやすくなるでしょう。
とくに、台風の動きが遅い場合は大雨が長引くため、影響が強まるおそれがあります。先に紹介した2011年台風12号のような豪雨はそう何度も起こるような豪雨ではありませんが、15日(水)頃から台風11号から離れた地域でも雨が強まる可能性があると思います。
【参考資料】
和喰博司,久保勇太郎,2013:2011年台風第12号による大雨.平成24年度予報技術研修テキスト,42-49.