Yahoo!ニュース

米CPIで粘着性のある物価上昇が示され、FRBによる早期の利下げ観測がさらに後退

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 13日に発表された1月の米国の消費者物価指数は前年同月比の上昇率が3.1%と、2023年12月の3.4%から鈍化したものの、市場予想の2.9%を上回った。エネルギーと食品を除くコア指数の伸び率は3.9%と市場予想の3.7%を上回った。

 これを受けてダウ平均は524ドル安となり、2023年3月22日の530ドル安以来の下げ幅となった、ここにきて過去最高値を更新するなどしており、高値警戒なども加わった下げであった可能性もある。

 そして、米10年債利回りも4.31%と前営業日の4.18%から大きく上昇していた。国債利回りが大きく上昇したということは、国債価格が大きく下落したこととなる。こちらの変動幅が意外に大きかった。

 これを受けて、さらにFRBの利下げ開始が先送りされたとの見方もあった。7月より前に米利下げが実施されるとの見方が大きく後退したとの解説もあった。

 予想を多少上回っただけにしては反応が大きいようにみえたが、これには消費者物価指数の内容が大きく影響していたようである。

 市場が警戒感を強めたのが、粘着性が高いとされるサービス価格の上昇であった。宿泊費が前月比(季節調整済み)2.4%上昇したほか、医療サービスが1.6%増、教育費も0.4%増と伸びが加速していたのである。

 つまり粘着性が高いとされるサービスインフレが再燃となれば、そう簡単には物価が大きく下がることが見通しづらくなる。3%近辺で当分推移するとなれば、利下げには踏み切れない。

 FRBの物価目標はPCEデフレーターであるが、消費者物価指数の前年比で3%近傍が継続するとなれば、その間の利下げの可能性は後退しよう。これを受けて米10年債利回りが大きく上昇したものとみられる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事