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能登半島地震の被災地で水餃子3000食を提供 在日中国人ボランティアグループが支援に取り組む理由

中島恵ジャーナリスト
石川県で炊き出しを行う龍在日華人援助協会の皆さん(写真提供:同協会、以下同)

1月1日に石川県能登半島で発生した大地震から1カ月以上が経過した。現地にはボランティア団体なども入り支援活動が活発化しているが、その中に日本に住む中国人グループもいる。「龍在日華人援助協会(龍チャリティー協会)」がそれだ。

1月中旬には珠洲市を訪れ、市役所や小中学校などで炊き出しを行い、約3000食の水餃子、豚骨ラーメンなどを提供した。代表である劉勇氏とメンバーに話を聞いた。

炊き出しで水餃子やラーメン

「能登半島で大地震が発生したと知り、いてもたってもいられず、すぐに支援を開始。最初は輪島市文化会館にミネラルウォーターや粉ミルク、おむつなどの支援物資の提供を行いました。1月中旬には12人のメンバーで珠洲市を訪れ、地元の方々と相談の上、『空飛ぶ捜索医療団』(民間の災害支援組織)とともに、珠洲市役所や地元の小中学校、健康増進センターなどで炊き出しを行いました。

作ったのは、10時間以上煮込んだ豚骨スープで作った水餃子、豚骨ラーメンなどで約3000食です。ボランティアメンバーの中に元ラーメン店の店主がいて、本格的な中華料理を作ろうということになりました」

炊き出しの豚骨ラーメン
炊き出しの豚骨ラーメン

「カレーや牛丼もよいのですが、スープで温まってほしいなと思って作ったところ大好評。被災者の方々から『ありがとう』『身体が温まったよ』などの感謝の言葉をいただきました。中には、わざわざ水餃子の炊き出し場所を探してやってきてくれた方も……。逆にこちらのほうが感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました」

代表の劉勇氏はこう語る。

これまでに何度も被災地でボランティア活動を行ってきた経験から、彼らの行動は非常にスピーディーだ。中国のSNS、ウィーチャットを駆使して、友人知人に第一報を送り、ボランティアを募り、必要な物資は何か、どこに、どのように連絡を取ったらよいかを即座に見極めて、現地に赴く。

「大事なことは、現地の方々の迷惑にならないようにすること。私たちは車中に泊まり、常に地元の方々とコミュニケーションを取ることを心がけています」と劉氏は語る。

ボランティア先は中国人がそこにいるかどうかに限らない。地震が起きた被災地、災害現場、人道支援、日常的な支援など多岐にわたる。

なぜ、このような取り組みを行っているのか。

ボランティアのメンバー
ボランティアのメンバー

コロナ禍がきっかけに

劉氏によると、「龍在日華人援助協会」ができたのは2021年。それ以前から仲間らとともにボランティア活動を行ってきたが、新型コロナウイルスの流行が協会を設立する大きなきっかけになったという。

「当初はマスクがなくて困っている中国人にマスクを届けたり、日本語ができない在日中国人のオンライン診療などを手伝ったりしました。次第に、中国人だけでなく、日本人、日本に住む他の外国人なども支援するようになり、どんどんボランティアのメンバーが増えていき、組織化されていったというのが経緯です」

現在のメンバーは約650人。主に日本に住む中国人で構成され、職業は会社経営者、個人事業主、会社員、主婦、留学生などさまざま。

ふだんはそれぞれ仕事を持っているが、いざ何か問題が発生した際は、SNSで連絡を取り、参加できる人が現場に急行する。これまで熱海市伊豆山土石流災害や、千葉県松戸市女児行方不明事件などで、夜を徹して捜索活動を行ってきた。

最近多いのは高齢者の行方不明だ。外出したまま戻らない家族の捜索を手伝う機会が増えた。また、在日中国人が詐欺事件に巻き込まれることも増え、中国に住む父母から相談を持ち掛けられることもある。日本語ができない中国人の事件が起きたときには、警察とも連絡を取り合うという。

同協会秘書長の池師文氏は「在日中国人の人数が増えて、かつては起きなかったような、さまざまな問題が増えています。お金で解決できる場合はいいのですが、まだまだ困っている人も多い。中国人の困りごと、相談ごとや事件、事故が多いですが、日本人、中国人など国籍、民族に関係なく、困っている人すべてに手を差し伸べられる団体になれれば……」と話す。

劉氏も「長い間日本に住んできて、私たちは日本人から多くの愛や恩をもらいました。私たちのような活動をしている中国人もいるよ、ということをぜひ知ってほしい」と語っている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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