Yahoo!ニュース

1年目を終え、改めて教わった「野球人としての心得」 ―阪神タイガース新人研修会

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
7月、フレッシュ球宴でのルーキー4選手(左から小野、福永、大山、長坂)です。

 このところ毎日、大幅アップの契約更改が続いている阪神タイガース。6日には今季12勝を挙げた秋山拓巳投手が3000万円アップの4100万円、きょう7日は大車輪の活躍だった桑原謙太朗投手が3700万円アップの4500万円で更改しました(金額は推定)。桑原投手の会見の模様は、次回ご紹介します。

 さて毎年この時期にある、プロ1年目を終えた選手を対象とした球団の『新人研修会』が6日、西宮市内のホテルで行われました。参加したのは、台湾のウインターリーグに参加している長坂拳弥選手を除く1年目の7人、大山悠輔選手、小野泰己投手、才木浩人投手、浜地真澄投手、糸原健斗選手、福永春吾投手、藤谷洸介投手。そして昨年、ウインターリーグで不在だった2年目の坂本誠志郎選手と青柳晃洋投手を合わせた9人です。

 まず揚塩健治球団社長のあいさつの中で「社会貢献活動を一度、考えてみてください」との話がありました。プロ野球選手として、弱い立場にある方や環境に恵まれない方々を元気にすることは、グラウンドの外でもできるというもの。ベテラン選手のこういった社会貢献はよく聞きますが、1年目や2年目の若い選手は少ないかもしれません。でも揚塩社長は「1年目でもできる、プロ野球選手はそういう職業」とおっしゃいます。この言葉を受けて、選手の心にきっと何かが芽生えたでしょう。

「いい慣れ、悪い慣れ」

野村さんの言葉が今も根底にあるという藤本コーチ。今度はそれが選手の心へと伝わっていくわけですね。
野村さんの言葉が今も根底にあるという藤本コーチ。今度はそれが選手の心へと伝わっていくわけですね。

 そのあと約20分ずつの“講義”が続きます。会社の概要や社会人心得、交際心得などを球団の方々から聞き、今度は専門家の方を迎えて「税の知識」と「適正飲酒セミナー」。再び球団から「マスコミ対応」「ファンサービス」「肖像管理権」などの話。そして、ことしは藤本敦士ファーム守備走塁コーチが「プロ野球選手心得」と題し、約30分間の話をしました。最後は参加選手による、2~3分間のスピーチで締めくくりです。

 講義が終わり、講師の方や球団関係者と選手による懇親会が始まるまでの時間を利用して、藤本コーチと、選手代表で大山選手と才木投手が囲み取材に応じてくれました。そのコメントをご紹介します。

 最初は、「プロとしての心得」を説いた藤本敦士ファーム守備走塁コーチ。「1年終わって慣れも出てくるし、(阪神というチームは)ファンも多いし、メディアにも書いてもらえる。そういうところで慢心しないこと。一歩ずつ成長しているのは、すごくわかります。だからこそ、このオフの過ごし方、継続することの大切さですね」

 藤本コーチは、自身が野村克也さんから言われた「野球人である前に、社会人であれ」という教訓が今も心に残っていると話したそうです。そして藤本コーチの「“いい慣れ”と“悪い慣れ”がある」との話が、ことし参加した選手たちは印象に残ったと言っていました。

もう一度リセットして初心に

ドラフト1位としてのルーキーイヤーが終わった大山選手。さらに飛躍の2年目でありますように。
ドラフト1位としてのルーキーイヤーが終わった大山選手。さらに飛躍の2年目でありますように。

 では代表で取材に応じてくれた2選手のコメントです。大山悠輔選手は印象に残った話を聞かれ「全部ですね」という答え。社長から小さいことからでも社会貢献を、とススメがあったとか。「大事なことなので、いろいろ考えていきたいです。まだどういうふうになるか分からないですけど、まずは野球で結果を残さないといけないと思うので。今はまずは野球のことをしっかりやりたいと思います」

 社会貢献については「いろんな方法があると思いますが、一番はグラウンドで一生懸命やっている姿であったり、全力でというか、そういうプレーを見ていただくことで、元気になる可能性もあると。結果ももちろんそうですけど、そういう当たり前のことからやっていきたい」と続けています。そうですね、できることからというのが大前提でしょう。

 藤本コーチの話は?「いろんな話をいただいて、全部覚えています。その中で初心の気持ちというか一年間やってきて、慣れが出てきてしまっていると思うので、いい慣れというのは継続しつつ、悪い慣れというか、そういうところは直さないといけないと思います。一年が終わってもう一回リセットして、入団したときの気持ちに戻ってしっかりやりたいと思います」

 そして「“いい慣れ”というのはたくさんありますね。言葉では言えないような。たくさんいいのがあるので、整理して続けていきたい」と締めくくりました。

お酒を飲んでも礼儀は忘れず

ことしの春先は、鳴尾浜に残留して練習することが多かった才木投手(右)、藤谷投手(中)、浜地投手(左)。
ことしの春先は、鳴尾浜に残留して練習することが多かった才木投手(右)、藤谷投手(中)、浜地投手(左)。

 ついで才木浩人投手です。一番印象に残った話は?「藤本さんの、野球人としての心得は、僕も野球人なので一番心に響きました」。どんな内容でしたか?「最初は挨拶とか、人としての礼儀とかしっかりできているけど、年数が経ってくると慣れで、そういうとこがおろそかになるので、ということです」

 税金の話も聞いたと思いますけど、理解できた?と聞かれ「ちょっと難しい部分があるので、すぐには理解できないけど」と苦笑いの才木投手。でも「わからないとこは、いろいろ聞いたりしていきたいです。資料とかもあるので見ながら。税金の話は、きょうが初めてじゃないんですよ。前の資料なども見て、わからないとこは聞きながら」と前向きです。

 それと、お酒の正しい飲み方についての講義も。「はい。来年は二十歳になって、この前あった納会などの飲む機会があるので、そういう時に気をつけることとか。まあ、あとは先輩方に失礼のないよう接することも大切だと。それを踏まえた上で、体に害のないというか負担のないようにって思います」。よくできました!

10月、フェニックスリーグでのイベントでしっかり笑いも取った才木投手です。
10月、フェニックスリーグでのイベントでしっかり笑いも取った才木投手です。

 最後は、後輩もできる2年目に向けての“心得”をどうぞ。「ことしは最後に1軍で投げさせてもらって経験をさせてもらったので、来年からはしっかり1軍の戦力として、勝ちに、1軍の勝利に貢献できるようにしていきたいと思います」。社会貢献も、まずはそこからですね。期待しています。

     <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

岡本育子の最近の記事