【獣医師が解説】かまいたちの山内さん、2年で5匹の愛猫を失う…腎不全の早期発見ポイントは?
芸能界で愛猫家として知られるお笑いコンビ「かまいたち」の山内健司さんは、過去2年間で5匹の愛猫を失いました。
山内さんは「大切な子達が立て続けに旅立ってしまい、我が家にはもう猫ちゃんが居ません。キャットウォークや猫砂、爪とぎに食器。みんなのお気に入りの場所、カーテンの隙間から覗く影、枕元で聞こえる心地いい寝息、駆け寄って来る足音、水を飲む音、カリカリを食べている音、服に付いて来る毛、本当に全てが恋しいです。もう二度と会えない寂しさが、毎日毎日押し寄せて来ます」と、つらい心境を語ったとスポニチが報じています。
山内さんの愛猫たちのご冥福をお祈りいたします。
猫の飼い主の中には、「2年の間に5匹も猫が亡くなることがあるのか?どうすればいいのか」と悩む方もいるでしょう。
AMEBA TIMESによりますと、今回の猫たちの死亡の原因のひとつが腎不全だそうです(全部の猫の死因ではありません)。
ここで、猫の腎不全について見ていきましょう。
猫の急性腎不全と慢性腎不全
猫の腎不全は急性腎不全と慢性腎不全に分けられ、両者は病態が異なりますが、いずれも腎臓が正常に機能しなくなる状態です。猫の死因の第1位は慢性腎不全であり、慢性腎不全の方がよく知られています。
ただし、飼い主が初期段階でどちらの腎不全かを見つけるのは難しいことが多いです。
動物病院で血液検査や尿検査などを受ければ、臨床症状がほとんど現れていない場合でも腎不全かどうかが判明します。
急性腎不全(ARF)
急性腎不全は、字の通り腎臓の機能が短期間で急激に低下する病態です。
原因は尿道結石、中毒、感染症、交通事故などによる腎臓への血流不足など多岐にわたります。
適切な治療を受けることで回復する可能性があり、早期発見と治療が重要です。主な症状には、多飲多尿、食欲不振、嘔吐、脱水、頻尿または無尿があり、これらは突然現れることが多いです。
慢性腎不全(CKF)
一方、慢性腎不全は、加齢によって長期間にわたり進行し、腎臓の機能が徐々に失われる病態です。
猫における死因の第1位であり、主に高齢の猫に見られます。原因には加齢、腎炎、遺伝的要因などが考えられます。完全な治癒は難しいものの、皮下点滴、食事療法、薬物療法により進行を遅らせることが可能です。
症状は体重減少、多飲多尿、食欲不振、頻尿、脱水などが徐々に現れます。
急性腎不全と慢性腎不全の共通点と相違点
共通点として、どちらも腎臓の機能不全によって体内の老廃物が蓄積し、生命を脅かすことがあります。また、脱水や食欲不振といった共通の症状も見られます。
しかし、急性腎不全は急激に進行し、原因を取り除けば回復が期待できるのに対し、慢性腎不全は長期間にわたり進行する病気であり、治療の目標は進行を遅らせることにあります。
猫の急性腎不全と慢性腎不全の早期発見のポイントとは?
猫の腎不全において飼い主がわかりやすいのは、飲水量と尿量が重要な指標です。
腎不全が進行すると、多飲多尿が現れることが多く、これは体が水分を取り入れて老廃物を排出しようとする代償メカニズムです。
腎不全には急性と慢性の2種類があり、どちらも体内の老廃物や水分の調整がうまくいかなくなるため、初期には多飲多尿が見られることが多いです。
急性腎不全
急性腎不全は腎臓の機能が突然低下するため、飲水量の変化が急激に現れることがあります。初期段階では「無尿」や「乏尿」といった尿が全く出ない、または極端に少ない状態になることがあり、飲水量も減少する傾向があります。
しかし、急性腎不全が進行して回復期に入ると、多尿になり、尿の色やニオイが薄くなる一方で、多飲の症状が見られることがあります。
治療の過程で腎臓が再び機能し始めると、体が過剰に水分を排出するため、猫は大量の水を飲むようになります。
慢性腎不全
慢性腎不全は長期間にわたり進行するため、飲水量と排尿量が徐々に増加します。これは腎臓が老廃物を効率よく排出できなくなり、体が大量の水を必要とするためです。
腎臓の濾過能力が低下すると尿が薄くなり、結果として猫はより多くの水を飲んで多尿になる傾向があります。この「多飲多尿」は慢性腎不全の典型的な症状です。
飼い主は、猫がよく水を飲み、よくオシッコをしているから大丈夫だと誤解しがちですが、注意が必要です。
飼い主ができること
□飲水量の測定
ボトルになっていて、水の量が測定できるようになった水飲みにする。上の写真の目盛りがついている水入れになっていて、大まかな水の量の減り方がわかります。
多頭飼育での場合は、複数の猫が共有して水を飲む場合は難しいかもしれません。
□尿のチェック
それと、尿の量とニオイをチェックしてください。あまり尿がにおわなくなれば、要注意で、動物病院に連れていき獣医師と相談してください。
まとめ
急性腎不全を早期に発見できたとしても、命にかかわることがあります。一方、慢性腎不全は現時点では対症療法しかありません。
急性腎不全であれ慢性腎不全であれ、初期の段階では臨床症状がわかりにくいことが多いです。「何かおかしい」と感じたら、早めに動物病院で血液検査を受けることが大切です。急性腎不全の初期であれば、完治する可能性もあります。
愛猫に治療方針を尋ねることはできませんが、飼い主が多くの選択肢を持っていれば、いざという時に慌てずに済みます。
猫の病気と向き合うためにも、腎不全について理解を深めておくことが重要です。1匹でも多くの猫が腎不全で苦しむことなく、元気で長生きできるように祈っています。