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崖っぷちのヤンキース、第3戦先発はエースのセベリーノではなくジギル&ハイドの田中将大、は正解か?

豊浦彰太郎Baseball Writer
ジラルディは運命の第3戦先発にセベリーノではなく田中を選んだ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ア・リーグ地区シリーズでインディアンスに対し0勝2敗と、後がないヤンキース。ジョー・ジラルディ監督の采配にも非難が集中している。そして、彼が第3戦の先発マウンドに送り込むのは田中将大だ。これは当初の予定通りなのだが、エースのルイス・セベリーノをチョイスする手もあった。もし、田中が背信投球となりヤンキースが敗退することになれば、ジラルディは一層激しいバッシングを浴びることになるだろう。

ジラルディが責められているのは、第2戦の投手交代とビデオ判定を要求しなかった判断だ。好投を続けていた先発のCC・サバシアを77球で降板させた。これは結果的には失敗に繋がったが、ヤンキースは強力ブルペンを擁しており、早めの交代の判断自体は致し方なかったとも言える。しかし、引き継いだチャド・グリーンが与えた際どい死球(ファウルであったようにも見えた)に対して、チャレンジ(ビデオ判定を要求すること)しなかったことはマズかった。その後、満塁本塁打が飛び出し大量リードをフイにしての逆転負けの導線となかったからだ。ジラルディがチャレンジしなかったのは、規定の30秒以内に内部での事前確認ができなかったからだという。

さらに言えば、ジラルディ自身の采配問題ではないが、試合後にアロルディス・チャップマンが同監督を批判するSNSに「いいね!」を押していたことも判明、球団内に不協和音が広まった(その後、チャップマンは謝罪したという)。

で、田中である。元々第3戦の先発が予定されており、今季最終登板では自己最多の15三振を奪う快投を見せている。よって、この崖っぷちで命運を託すのは田中しかないと多くのファン(特に日本の)が考えるのは当然だ。しかし、田中の今季の「投げてみなければわからない」ローラーコースターぶりは今更説明するまでもないだろう。実際、15奪三振の前の登板では、同じブルージェイズに5.2回で8失点(自責点7)と炎上している。

ヤンキースには、ワイルドカードゲームで先発しながら1死しか取れず降板したセベリーノを中4日で起用する選択肢もあったのだ。確かにそのゲームでのセベリーノは酷かったが、今季のヤンキースのエースは間違いなく田中ではなくセベリーノだ。レギュラーシーズン中の安定した投球ぶりを考慮すると、ワイルドカードゲームの乱調が例外と考えるべきだろう。しかし、ジラルディはそのセベリーノではなく田中をマウンドに送る。もちろん、これはどちらの投手がより信頼できるかということではなく、ここから3連勝するシナリオを描いた際に必要なローテーションを組むためになされた決断だ。しかし、それでも第3戦の田中が「悪い田中」だったら?その結果、ヤンキースがあさっり地区シリーズでスウィープ敗退となったら?ジラルディの立場は相当苦しいものになるだろう。

メジャーの歴史で、3戦先勝式のプレーオフで0勝2敗に追い詰められたのはのべ75チーム。そのうち逆転でシリーズを制したのは9度。ヤンキースは相当苦しい状況に置かれてはいるが、大逆転は決してあり得ないことではないとも言える。運命の第3戦は、日本時間の9日午前8時半プレーボールだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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