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世界の食料システムと食品ロス、温室効果ガス排出の3割占める 減らせば2050年目標の22%も削減可能

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
インドネシア バリ島(写真:イメージマート)

*本記事は『SDGs世界レポート』(1)〜(87)の連載が終了するにあたって、2022年6月1日に配信した『 ほころびた食料システムの処方箋 SDGs世界レポート(79)』を、当時の内容に追記して編集したものです。

2022年の世界食料賞はシンシア・ローゼンツヴァイク博士に

出典:World Food Prize Foundation(#FOODPRIZE22)
出典:World Food Prize Foundation(#FOODPRIZE22)

米国のシンシア・ローゼンツヴァイク(Cynthia Rosenzweig)博士が、気候変動と食料システムの相互作用の理解と影響予測への多大な貢献により、2022年の世界食料賞を受賞した(1)。

現在、NASAゴダード宇宙研究所の上級研究員兼気候影響グループ長を務めるローゼンツヴァイク博士は、気候変動と食料システムが相互に及ぼす影響を40年にわたり研究してきた。1985年には気候変動が北米の小麦生産地に及ぼす影響と、気候変動によって小麦の生産地がどのように変化するかをモデル化した論文を発表。1994年には『ネイチャー』誌に、気候変動が世界の食料供給に与える影響についての論文を発表し、温室効果ガスをあまり排出していない低・中所得国が気候変動によって最も影響を受けるリスクがあると指摘した。ノーベル平和賞を受賞した2007年の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書を含む3つの国際評価報告書において調整責任者または主執筆者を務めている。

ローゼンツヴァイク博士は受賞のメッセージとして次のように語っている。

「気候変動は食料システムから排出される温室効果ガスに注意を払うことなしに抑制できませんし、すべての人の食料安全保障は気候変動に対する回復力なしにはありえません。(中略)気候変動は先のことではありません。農業や食料はすでに影響を受けているのです。わたしたちには将来増大するリスクに備える責任があります。さあ、腕まくりをして、この難題に取り組もうではありませんか」

それではまず食料システムの現状についてみてみよう。

食料システムのほころび

•世界で生産される食料のうち、3分の1にあたる13億トンが捨てられている(FAO、2011)。実際の世界の食品ロスは、見過ごされてきた農場からの食品ロス12億トンを加算した25億トン(WWF、2021)。

•2019年にEUの海域で少なくとも23万トンの魚の投棄が行われ、その92%は底引き網漁による混獲が原因(WWF)。収穫された魚介類の約35%がサプライチェーン上で食品ロスになっている(FAO)。

•膨大な食品ロスが排出されている一方で、世界では8億人が飢餓に苦しんでいる(WFP)。

•食料システムは世界で排出される人為的な温室効果ガスのうち25〜42%を占める。食料システムからの排出量だけで、今世紀半ばには、地球の気温はパリ協定の目標である1.5度を超えてしまう(Nature)。

•東南アジアやアマゾンの熱帯雨林を焼きはらって農地を開拓することで、食料システムは生物多様性損失の最大の要因となった。森林破壊と気候変動によりアマゾンの熱帯雨林では、吸収される二酸化炭素よりも排出される二酸化炭素の方が多くなっている(National Geographic)。

•世界中の食品ロスを国に見立てると、中国、米国に次いで、世界第3位の温室効果ガスの排出源である(WRI/FAO)。

•環境に対して有害な補助金への各国政府の年間支出額の合計は、生物多様性の保全に向けられたものの4倍(UNEP)。

このように現在の食料システムが持続可能でないことは明らかである。そこに新型コロナのパンデミックが起こり、世界中で多くの人が食料システムの破綻を実感した。そしてロシアによるウクライナ侵攻が追い討ちをかけた。

ロシアがウクライナ侵攻で食料システムに開けた穴

ロシアによるウクライナ侵攻は、世界中の人に食料安全保障の重要性を改めて認識させることになった。

ロシアのウクライナ侵攻前、世界の輸出量に占める両国の割合は、ヒマワリ油77%、小麦29%、大麦30%、トウモロコシ15%だった(2)。国連食糧農業機関(FAO)が2022年3月25日に発表した報告書によると、供給が止まっているウクライナとロシアの農産物の不足分を別の供給国に頼っても、2022/23年には部分的にしか補うことができず、世界の食料と飼料価格をさらに8~22%上昇させる可能性がある(3)。

そして2022年3月の食料価格指数は159.3となり過去最高を更新。FAOは、この世界的な食料価格の高騰が原因となり、2022/23年に世界の栄養不足人口は800万〜1,300万人増加するとみている。

2022年5月6日当時、世界食糧計画(WFP)の事務局長だったデイヴィッド・ビーズリー氏は、ウクライナのオデーサから次のようにツイートしていた(2023年5月現在のWFP事務局長は、2023年に任命されたCindy McCain:シンディ・マケイン)。

「オデーサ地域の港がすぐに開かない場合、次の2つのことが起こるでしょう。

まず、ウクライナ全土で農業が崩壊します。つづいて世界中に飢饉が迫ります。食料は動かす必要があり、港は再開させる必要があり、これは今すぐ行う必要があるのです」

出典:

https://twitter.com/WFPChief/status/1522588515351117824

何しろ食料支援のためにWFPが購入していた穀物の50%はウクライナ産だったのだから事態は深刻だ。CNNは、ビーズリー前事務局長がロシアのプーチン大統領に直接伝えたいことを聞かれ、次のように語ったと報道している(4)。

「あなたがウクライナのことをどう考えているかは別として、残りの世界のことを思いやる心があるのなら、(封鎖されているウクライナの)港を開放する必要がある」

気候変動は食料支援さえ変える?

しかし、このウクライナ危機が世界の食料価格や食料安全保障に及ぼす影響は、気候変動によってもたらされる食料危機に比べれば取るに足らないものだと指摘する専門家もいる。

世界第2位の小麦生産国として、ロシアやウクライナに代わって世界の面倒をみると言っていたインドは、2022年3月以降の記録的な熱波のため小麦の収穫量が大幅に減少することがわかると、5月には小麦の輸出禁止に舵を切った。急速に進む地球の温暖化を前に、世界の食料供給の不安定さを改めて浮き彫りにするようなできごとだった。

FAOは、あるアフガニスタンの一家が気候変動に耐性のある農産物や農法に転換するには、一軒あたり年間157ドル(約1万7千円)の資金援助が必要だと試算している。しかし、その一家が市場で食料を調達しようとすると、その4倍の費用がかかり、さらに、その一家に対して国際的な食料支援を行おうとすると、その7〜9倍もの費用がかかると指摘している(5)。

注)三菱UFJ銀行の2021年の年間平均為替相場(TTM)USD1=JPY109.80で計算。以下同様。

これまでのような食料援助の方法は、干ばつや紛争による一時的で地域限定の食料危機には有効かもしれないが、気候変動によって世界中で日常化していく食料危機に対処するには、もはや持続可能とは言えない。

今回のロシアのウクライナ侵攻によって明らかになったように、穀物や植物油の供給量が激減し食料価格が高騰すると、WFPでさえ人道支援用の食料を調達できなくなってしまう。各家庭が小規模ながらも災害に対して回復力のある農業を営むことを支援することが、これからの新しい食料援助方法になっていくのかもしれない。

英国では成人の7人に1人が食料難に

食料危機は低所得国だけの問題ではない。英国の最近の調査によると、過去1か月の間に経済的な理由から一日食事を抜いたことがあると回答した英国人は200万人以上に上ると英紙ガーディアンが報じている(6)。

同紙によると、2022年1月〜3月までの3か月間に、食料価格の高騰から食事を控えたり、抜いたりする家庭の割合が57%急増し、成人の7人に1人(730万人)が食料難に陥っていると推定される。これは新型コロナウイルスのパンデミックによる最初のロックダウン(都市封鎖)期間に匹敵する。フードバンクには、光熱費を節約するため、調理の必要な食品や冷蔵・冷凍保管する必要のある食品を入れないでほしいと要求してくる人もいるという。

それでは、ほころびた食料システムをどのように直し、持続可能なものにしていけばいいのだろう?

海外の先進的な取り組みを通して考えてみたい。

英誌『TIME』は、短期的にはウクライナ危機による食料危機を緩和し、中長期的に持続可能でより回復力のある食料システムを構築するためになすべきことを、以下のように提言している(7)。

1)食料供給の開かれた貿易の流れを維持すること

2)大豆、トウモロコシ、小麦などをバイオ燃料用ではなく食用に使うこと

3)食料安定供給ための国際的な取り組み

4)緊急人道的資金の提供だけでなく、必要なセーフティネットを提供すること

5)持続可能かつ公平な食料システムへの移行

提言に特別なことは何ひとつ書かれていないように思われるが、試しに上記1と3を取っても、実現はそう簡単ではない。新型コロナのワクチン争奪戦を思い出してみよう。高所得国は資金力と政治力にものを言わせて、早々と自国の人口の2〜3倍もの量のワクチンを確保したが、低所得国にはワクチン接種率がいまだに1桁止まりの国もある(米ジョンズ・ホプキンス大学)。そしてこの問題に対しても国連は完全に機能不全を起こし、リーダーシップを取れていない。

ほころびた食料システムの直し方(米国編)

2022年4月にハーバード大学ロースクール、NRDC、ReFED、WWFの4団体は共同で、米国の2023年農業法案において食品ロスを減らすための提言をまとめた報告書を発表した(8)。

農業法案とは、5年おきに4,000億ドル以上もの予算が計上される米国最大の食料関連法であり、同国の食料システムの運用の中核をなすもの。農業法案に提言が採用されるかどうかは、米国における食品ロス削減や食料システム見直しにとって極めて重要となる。

それでは提言の内容を見てみよう。

1) 食品廃棄物の防止(リデュース):米国では食品の期限表示は、州法や商慣習によってまちまちである。そのため消費者と事業者のどちらにも混乱が生じ、まだ食べられる食品が捨てられている現状がある。食品の期限表示を品質基準と安全基準の二つにまとめ、品質基準の食品は期限が過ぎても寄付できるようにする。

2) 余剰食品の回収(リユース):米国には、善意から行った食品の寄付が原因で食品事故が起こっても提供者の責任を問わないという、「ビル・エマーソン 善きサマリア人の食品提供法」があるが、この法律を改正して、個人への寄付や回収した食品の格安販売も免責の対象に含める。

3)食品廃棄物のリサイクル:米国の埋立地に捨てられている年間2,090万トンにも及ぶ食品廃棄物は資源として、家畜の飼料、堆肥、バイオ燃料として再利用することができ、2億3,970万ドル(約263億円)もの利益をもたらす可能性がある。2023年農業法案で食品廃棄物を埋立地や焼却炉で処理することを制限する。

4)食品廃棄物削減の調整:コロナ禍で見られたように、食品サプライチェーン(供給網)に混乱が生じると、農場では大量の農産物が廃棄されたり、都市封鎖でホテルや外食店が閉鎖されるとロブスターやカキなどが大量に食品ロスになったりする一方で、小売店では買い占めやパニック買いにより食品棚が空になったり、フードバンクに向かう車が何キロも数珠つなぎになったりと需要と供給の調整が難しくなる。そこで米国農務省(USDA)に、この問題を解決するための新しい部署を設ける。また、米国の食品ロスに関する研究とデータの管理、農場からの食品ロスの定量化も行う。

ほころびた食料システムの直し方(英国編)

食品ロスは、農場から食卓までの食品サプライチェーン(供給網)全体で発生するが、特に農場で発生する食品ロスは定量化が難しいと言われている。摘果したり、鳥害や虫害にあったり、病気になって捨てられたりする農産物の量を農家はいちいち計量しないし、生産調整のために収穫すらされず、そのままトラクターで畑にすき込まれてしまう農産物もある。

漁獲したものの市場であまり流通していない魚だったり、うろこがはがれたり、カニの脚が一本もげていたり、サイズが規格外だったりして、そのまま海に投棄される魚介類も計量されないし、鶏卵業者も卵を生まないオスのヒヨコを殺処分しているが、いちいち計量したりはしない。

英国の非営利団体 WRAP(ラップ)は、イングランドで農場から出る食品ロスの定量化に取り組んでいる。WRAPによると、農場から出る食品ロスの定量化において農家の協力を得るには、まず生産者の優先事項と制約をしっかりと理解した上で、得られるデータが生産者にとってどのように役立つかをきちんと説明し、サプライチェーン(供給網)全体を巻き込んで、生産者のニーズと問題に重心をおいたプロジェクト設計を行うことが重要だという。多くの場合、農場からの食品ロスは、サプライチェーンのさまざまな制約があり、生産者だけでは解決できない問題だからだ(9)。

WRAPによると、2019年に英国の食料システムから排出された二酸化炭素は158メガトン。2015年から2019年の間に再生可能エネルギー普及もあって約8%減少しているという。サプライチェーン(供給網)からの排出量は、製造、小売、家庭では合計で12メガトン削減されたが、物流では1メガトン増加した。また、英国における食品ロス削減の実績は、食料システム全体で排出量を減少させる効果をもたらしている(10)。

注)メガトン=100万トン

WRAPは畜産業界からの食品ロスと温室効果ガス排出量の削減にも取り組んでおり、参加している食肉加工業者は食品ロスを2万トン以上、平均して30%削減し、すべての企業が温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、前年比での改善を報告しているという(11)。

2030年までに食料システムからの温室効果ガスの排出量を50%削減(2015年比)するために、英国では以下のような取り組みをする。

•サプライチェーン(供給網)における森林破壊ゼロの誓約の達成(特にパーム油、大豆、ココア、コーヒーなどの熱帯林産品に関連するもの)。

•再生可能エネルギーに関する誓約の達成。

•英国の食品ロスを少なくとも半減させ、その影響を最大化するような食品ロス防止の取り組みを優先させる。英国におけるSDGs12.3の解釈から、この目標の達成以上のことが求められる。具体的には、農場出荷後の食品ロスを50%削減する目標に「不可食部分(魚の骨、卵の殻、野菜の皮、果物の芯など)」を含めること、そして農場出荷前の食品ロスの削減を実現すること。(中略)食品ロス防止による温室効果ガスの削減可能量の少なくとも80%が家庭や外食であることから、引き続き(消費段階での)食品ロスを削減することに焦点を当てる。たとえば、(英国では)果物や野菜は他の食品よりはるかに食品ロスになる割合が高いので、(肉中心から野菜中心の)食生活の変化は食品ロスの大幅な削減につながる可能性がある。

英国のように食品サプライチェーンの各段階の温室効果ガスが定量化されていれば、食料システムのどこにほころびがあるのか、どこに重点をおいた取り組みが効果的か判断できるようになる。

注)SDGs12.3(国連の持続可能な開発目標)とは、「2030年までに、小売・消費レベルにおける世界全体の一人あたりの食料の廃棄(Food Waste)を半減させ、そして、収穫後損失を含む、生産・サプライチェーンにおける食料の損失(Food Loss)を減少させる」を指す。

ほころびた食料システムの直し方(EU編)

土壌の劣化は現在、欧州連合(EU)に年間1,000億ユーロ(約13兆円)の損失を与えており、気候変動は2050年までに作物の収量を20%減少させる可能性がある(12)。持続可能な食料システムへの移行を加速させることを目的としたEUの「農場から食卓まで(Farm to Fork)」戦略では、「気候に配慮した行動」によって土壌の健全性を回復し、気候変動への適応力を向上させるとしている(13)。

注)三菱UFJ銀行の2021年の年間平均為替相場(TTM)EUR1=JPY129.89で計算。以下同様。

また、環境を悪化させる化学肥料の使用への依存を減らすという目標も設定されており、最大の肥料輸出国であるロシアによる輸出制限や肥料価格の高騰を考えると、この目標はさらに意味のあるものとなっている。

米国アイオワ州立大学の研究チームは、肥料価格高騰の対策として、トウモロコシと大豆の輪作にクローバーやアルファルファなどを加える方法を提言している。マメ科植物が窒素固定をしてくれるので、農家が化学肥料の使用量を減らしても農作物の収量を減らさずに済むという(14)。

世界経済フォーラムによると、EUの農家の20%が気候変動に配慮した農法を採用すれば、2030年までにEUは農業による温室効果ガスの排出量を推定6%削減でき、農地全体の14%以上の土壌を健全化し、それによって生物多様性と食料システムの回復力を向上させ、実施レベルに応じて、農家の所得を年間19億ユーロ(約2, 470億円)から93億ユーロ(約1.2兆円)増加させることができるという。

ほころびた食料システムの直し方(中国編)

14億人もの人口を抱える中国は、地球上で最も多くの国民を養わなくてはならない国である。ゼロ・コロナ政策で2022年3月下旬から都市封鎖が行われた上海では食料配給がうまくいかず、「われわれを飢え死にさせるつもりか」「このままではコロナではなく飢えて死ぬ」と役人を怒鳴りつける住民たちの姿があった。

主要な小麦やトウモロコシの生産地である河南省やコメの生産地の湖北省では、気候変動が原因と思われる洪水で収穫に影響が出た。世界でいちばん主要穀物が備蓄されている国ではあるが、その食料安全保障が脅かされるような事態がつづいている。

世界経済フォーラムによると、2019年末時点で中国の耕地面積は128万平方キロメートルと、10年前と比べて6%近く減少している。中国の耕地面積は国土面積の13%に過ぎず、今後も市街地や工業団地などに土地転換が進むため、2030年までにはさらに減少すると予想されている(15)。

限られた耕地面積で主要穀物の食料自給率を維持しつつ、14億人以上の国民に食料を安定供給していくには、新しく農地を開拓するか、より収穫量の高い農作物を育成する必要がある。そんななか注目を集めているのが、高収量米と耐塩性の高い野生米を掛け合わせて中国で育成された稲の新品種だ。塩分濃度が高すぎて通常の稲が育たない土地でも対塩性の稲なら栽培できる。中国にはエジプトの面積に匹敵するほどの塩分濃度の高い土地があるが、その土地の10分の1にこの新品種を栽培できれば、さらに2億人を養えるほどコメの収量を増やすことができるという。

他にも中国では、「光盤運動」という消費段階での食品ロス撲滅運動も行われており、食品の無駄をなくすところから食料システムの見直しも進んでいる。

ほころびた食料システムの直し方(気候変動編)

「食料の未来のための世界連合(Global Alliance for the Future of Food)」は、米国、中国、ドイツ、英国など14か国について、温室効果ガス削減の国別削減目標(NDC)で、食料システムの見直しをどのように提案しているかを調べたところ、ほとんどの国で食料システムの見直しへの意識が「驚くほど欠如」していることがわかったと報告している(16)。

食料システムの見直しや食品ロスの削減で、世界の二酸化炭素排出量を年間10.3ギガトン以上削減でき、これは2050年までに削減する必要のある二酸化炭素の総排出量(46.5ギガトン)の約22%に相当する。それだけの削減効果があるとすれば、各国が気候変動対策として、食料システムの見直しや食品ロスの削減に取り組まないなんてことはありえないことのように思われる。

注)1ギガトン=10億トン

食料危機については、2021年に世界食料賞を受賞したシャクンタラ・ハラクシン・ティルステッド(Shakuntala Haraksingh Thilsted)博士の言葉を引用しておこう(17)。

「増加する人口を養うために、もっと生産しなければならないと言われているが、供給を増やす最善の方法は食品ロスを減らすこと!」

参考資料

前年の年末・年間平均2021(三菱UFJ銀行・外国為替相場情報)

http://www.murc-kawasesouba.jp/fx/year_average.php

1-1)2022 Rosenzweig(World Food Prize Foundation)

https://www.worldfoodprize.org/index.cfm?nodeID=96584&audienceID=1

1-2)2022 World Food Prize Awarded to NASA Climate Scientist(World Food Prize Foundation、2022/5/5)

https://www.worldfoodprize.org/index.cfm/87428/48752/2022_world_food_prize_awarded_to_nasa_climate_scientist

2-1)Grain: World Markets and Trade(USDA Foreign Agricultural Service、2022/4/8)

https://apps.fas.usda.gov/psdonline/circulars/grain.pdf

2-2)Oilseeds: World Markets and Trade(USDA Foreign Agricultural Service、2022/4/8)

https://apps.fas.usda.gov/psdonline/circulars/oilseeds.pdf

3)The importance of Ukraine and the Russian Federation for global agricultural markets and the risks associated with the current conflict(FAO、2022/3/25)

https://www.fao.org/3/cb9236en/cb9236en.pdf

4)'If you have any heart at all.' UN official warns Putin millions will die if Ukraine's ports remain blocked(CNN、2022/5/13)

https://edition.cnn.com/2022/05/12/economy/food-crisis-ukraine-putin-un/index.html

5)The Ukraine Food Price Crisis is Just a Preview of What Could Happen as Climate Change Worsens(TIME、2022/4/29)

https://time.com/6172270/ukraine-food-price-crisis-climate-change/?utm_source=twitter&utm_medium=worldresources&utm_campaign=socialmedia&utm_term=4cba2889-3f91-4dc1-943b-57948011e96a

6)More than 2m adults in UK cannot afford to eat every day, survey finds(The Guardian、2022/5/9)

https://www.theguardian.com/society/2022/may/09/more-than-2m-adults-in-uk-cannot-afford-to-eat-every-day-survey-finds

7)5 Ways to Avert the Global Food Security Crisis(TIME、2022/3/24)

https://time.com/6160147/global-food-security-crisis/

8-1)Opportunities to Reduce Food Waste in the 2023 Farm Bill(Harvard Law School Food Law and Policy Clinic、2022/4/26)

https://chlpi.org/wp-content/uploads/2022/04/2023-Farm-Bill-Food-Waste.pdf

8-2)The Next Farm Bill Can Save Money, Reduce Food Waste, Address Hunger, and Combat Climate Change(ReFED、2022/4/26)

https://refed.org/articles/the-next-farm-bill-can-save-money-reduce-food-waste-address-hunger-and-combat-climate-change/

8-3)22 Ways the Next U.S. Farm Bill Can Reduce Food Waste(EcoWatch、2022/4/27)

https://www.ecowatch.com/reducing-food-waste-farm-bill.html

8-4)Harvard Law School, REFED Talk Opportunities with Food Waste in New Report(Waste360、2022/4/28)

https://www.waste360.com/food-waste/harvard-law-school-refed-talk-opportunities-food-waste-new-report

9)Farmer-led data gathering pilots 2018-2021 (Year 2)(WRAP、2021/9/2)

https://wrap.org.uk/resources/report/farmer-led-data-gathering-pilots-2018-2021-year-2

10)UK Food System GHG Emissions(WRAP、2021/10/6)

https://wrap.org.uk/resources?type=1498&field_initiatives_target_id=2286&sectors=All

11)UK meat sector rises to the challenge of climate change, farm to fork(WRAP、2021/9/14)

https://wrap.org.uk/media-centre/press-releases/uk-meat-sector-rises-challenge-climate-change-farm-fork

12)For secure, nature-positive food systems, Europe must invest in farmers(World Economic Forum、2022/4/11)

https://www.weforum.org/agenda/2022/04/europe-food-systems-farmers/

13)Farm to Fork strategy for a fair, healthy and environmentally-friendly food system(European Commission)

https://ec.europa.eu/food/horizontal-topics/farm-fork-strategy_en

14)As Russia’s Invasion Roils Supply Chains, the World Grows Hungrier(Mother Jones、2022/4/6)

https://www.motherjones.com/food/2022/04/russia-ukraine-wheat-fertilizer-invasion-natural-gas-energy-hunger/

15)Food security: This is how China plans to feed its 1.4 billion people(World Economic Forum、2022/3/11)

https://www.weforum.org/agenda/2022/03/china-seawater-rice-food-security

16-1)Untapped Opportunities for Climate Action: An Assessment of Food Systems in Nationally Determined Contributions(Global Alliance for the Future of Food、2022)

https://futureoffood.org/wp-content/uploads/2022/03/assessment-of-food-systems-in-ndcs.pdf

16-2)Report: Food-system change ‘startlingly absent’ from countries’ climate change commitments(Food and Environment Reporting Network、2022/3/21)

https://thefern.org/ag_insider/report-food-system-change-startlingly-absent-from-countries-climate-change-commitments/

16-3)Reaching Zero with Renewables : Eliminating CO2 emissions from industry and transport in line with the 1.5oC climate goal(IRENA、2020)

https://www.irena.org/-/media/Files/IRENA/Agency/Publication/2020/Sep/IRENA_ReachingZero_Summary_2020.pdf?la=en&hash=7FD100C3C26E161D6C1217B88C1FB7E847D7F08F

17)Shakuntala Haraksingh Thilsted/@trinidad1949(twitter、2022/5/10)

https://twitter.com/trinidad1949/status/1523847713153974272

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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