昭和レトロが魅力!ひとり旅で訪ねたい「ひなびた温泉地」10選(東北編)
ひとりでの温泉旅(=ソロ温泉)に適した温泉地と、そうでない温泉地がある。もちろん、旅の目的や個人の好みにもよるが、忙しない日常から離れて一人で静かな時間を過ごすのであれば、観光客が多い有名温泉地よりも、歴史はあるけれど、ひなびている温泉地のほうがふさわしい。
ひなびた街並みは一見「寂れている」という印象を受けることもあるが、見方を変えれば「レトロで落ち着く」と魅力的に映る面もある。
特に東北地方は、湯治の文化が今も残るエリアで、ひなびた風情が魅力の温泉地がたくさんある。そこで、今回はひとり旅で訪ねたい「レトロでひなびた温泉地」を東北エリアに絞って10カ所紹介したい。
温湯温泉(青森県)
黒石市にある小さな温泉街。「ぬるゆ温泉」と読む。とはいえ泉温は60度くらいあり、よく温まるので「温湯」と呼ぶようになったとか。温泉街には共同浴場を中心に、明治から大正時代にかけて建てられた木造宿が並び、ひなびた温泉場の風景を醸し出している。旅館に宿泊している人は、共同浴場に通うのが温湯温泉のスタイルだ。
下風呂温泉(青森県)
下北半島北端、津軽海峡に面した港町の温泉地。最果ての温泉地といった風情がソロ温泉(ひとり旅)にふさわしい。おもに3つの源泉があり、いずれも乳白色が美しい濁り湯。どの温泉施設もかけ流しである。日帰り温泉の「海峡の湯」では、2つの硫黄泉「大湯」と「新湯」を同時に楽しめる。イカやホタテ、ウニ、あんこうなど海産物も美味。
夏油温泉(岩手県)
焼石岳中腹の渓谷にある山間の温泉地。湯治宿としての歴史をもつ旅館「元湯夏油」は湯治棟や売店、食堂、マッサージ店などが並び、その長閑な風情はどこか懐かしさを感じる。湯治場の原風景といえよう。川沿いに複数の湯船が並び、源泉から直接引いたピュアな湯が掛け流しにされている。川に面した露天風呂は絶景が自慢。冬季は雪に閉ざされる秘湯の温泉宿である。
台温泉(岩手県)
花巻温泉郷の一角を占める台温泉は、山の谷間に10軒ほどの旅館と日帰り温泉が並ぶ静かな温泉地。台温泉の源泉を引く近くの花巻温泉は超巨大温泉ホテルが鎮座するが、台温泉は対照的に湯治場風情の落ち着いた温泉地である。小規模の温泉が並ぶが、なかでも中嶋旅館は宮大工の手による築100年の木造建築が目を引く。基本的にどの宿も硫黄分を含んだ源泉が掛け流しである。小さな宿が多く、ひとりでも予約はとりやすい。
小野川温泉(山形県)
米沢市の奥座敷として栄えてきた温泉地。地名が小野小町に由来するほど歴史も深い。温泉街の端から端まで5分ほどで歩ける規模であるが、旅館や土産物店が並び、湯の街らしい風情が漂う。名物のラジウム玉子や温泉まんじゅうの食べ歩きも楽しい。中心に位置する共同浴場「尼湯」は、アツアツの湯が源泉かけ流し。塩分のきいたよく温まる湯である。
湯田川温泉(山形県)
田園地帯に8軒の温泉宿と2つの共同浴場が軒を連ねる小さな温泉地。源泉が豊富なことでも知られ、すべての宿が源泉かけ流し。小規模な旅館が多いので、ひとりでリーズナブルに泊まれる宿もある。作家・藤沢周平ゆかりの温泉地で、小説を読みながら旅館に缶詰めになってみるのも楽しい。
乳頭温泉郷(秋田県)
日本を代表する「秘湯」。なかでも江戸時代にタイムスリップしたかのような風情が漂う「鶴の湯」は、乳白色の濁り湯が人気である。複数の源泉をもつが、最も絵になるのは混浴の露天風呂。足元から源泉がぷくぷくと湧き上がる貴重な源泉である。そのほか黒湯温泉や孫六温泉、蟹場温泉なども、非日常の懐かしい雰囲気が味わい深い。人気のある温泉地なので、できれば休前日やオンシーズンは避けて訪ねたい。
肘折温泉(山形県)
山あいに湧く静かな温泉地だが、伝統的な湯治場の景観が今も残る。車がすれ違うのも困難な狭い通りの両側に旅館や商店がびっしりと連なる。昔からの街並みがそのまま保存されている証拠だ。長期の湯治客が多いのも特徴で、日用品や食料品をそろえた商店もある。早朝、温泉街に朝市が立つのも見どころのひとつ。リーズナブルに宿泊できる宿が多く、プチ湯治体験を楽しめる。
鎌先温泉(宮城県)
白石市にある600年の歴史を誇る温泉地。大正時代に建てられた木造旅館など数軒の宿で構成され、いずれも緑色に濁った源泉をかけ流しで堪能できる。もともと湯治が盛んな温泉地だっただけに、昔ながらの風景が今も残っている。
木賊・湯ノ花温泉(福島県)
ともに奥会津にある鄙びた温泉地。周囲は昔話に出てくるような景色が続く。2つの温泉地ともに、昔ながらの共同浴場が充実している。木賊温泉の名物・岩風呂は、温泉が湧出する川床を利用した湯船で、足元から湧き出す新鮮な湯を楽しむことができる。湯ノ花温泉にも巨大な岩が浴場にめりこんだ「石湯」のほか、独特の雰囲気をもつ共同浴場が4カ所ある。