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TRF30周年、25年ぶりの日本武道館公演を大成功。小室哲哉曰く「どの曲も賞味期限が無い」と振り返る

ふくりゅう音楽コンシェルジュ
photo by TRF

●trf、日本を代表するダンス&ボーカルユニットの誕生

TRF、30周年の晴れ舞台となった『TRF 30th Anniversary Live at 日本武道館「past and future.」』公演(2024年2月18日)を目撃した。日本を代表するダンス&ボーカルユニット金字塔による晴れ舞台。もちろん会場は超満員。客層の幅の広さが、ダンスやDJなど音楽カルチャーの成熟を物語っているかのようだ。

https://trf-30th-live.lnk.to/past-and-future_setlist

1993年、trf誕生以前といえば、BOØWY関連やTHE BLUE HEARTS、REBECCA、プリンセス プリンセスなどが人気だった80年代〜90年代バンドブーム最盛期。当時クラブカルチャーは、まだアンダーグラウンドなイメージだったが、ダンサーやDJ人気をマスへ向けて一気に火をつけたのがtrfだった。

trfというダンス&ボーカルユニットの誕生は、DJやダンサーがメンバーにいて、ヒット曲を連発し、イントロや間奏はギターソロではなくダンスソロやスクラッチ、ラップを打ち出すなど、90年代黎明期のJ-POPシーンにおいて驚異の発明となった。

●1993年デビュー時の印象は、完全に洋楽テイストだった

1993年、trfはエイベックスからメジャーデビューした。名前の由来は、trf=TK RAVE FACTORYの略。音楽プロデューサー小室哲哉は、当時イギリスでムーヴメントとなっていたレイヴカルチャーをtrfのコンセプトに取り入れた。誤解を恐れずにいえば今でいう、EDMの元祖のようなシーンである。90年代リバイバルもあってか、昨今あらためて注目されているクールかつ煌びやかなサウンドである。

trfデビュー時の印象は、完全に洋楽テイストな印象だった。しかし、2ndシングル「EZ DO DANCE」による日本語詞曲のヒット、さらに1994年の春に小室哲哉自身が参加していたTMN終了ライブを東京ドームで行い、数日後にはtrfとして「survival dAnce 〜no no cry more〜」、さらに「BOY MEETS GIRL」を立て続けにヒットさせるなど、完全にJ-POPをネクストレベルへアップデートするに至った。

プロデューサーの小室哲哉曰く、trfとは”ブームを作る存在だった”という。なお、その後結成したglobeは”ブームを記録していく存在”だったという棲み分けがあった。結果、trfは洋楽マーケットから邦楽需要への変化を促す、音楽業界を変えるターニングポイント=ゲームチェンジャーとなったのだ。

●TRF楽曲における、歌詞の意味合いがアップデート

日本武道館で行われた30周年ライブ。ポップミュージックは時代の鏡というが、90年代を席巻したtrfのパフォーマンスは、まったくもって懐メロにはなっていなかった。誰が観ても間違いなく最強にカッコいいライブだった。

そのことは、あらゆる問いの答え合わせになっていると思う。

90年代、チャート上位を独占するなどあまりにヒットしまくったTKプロデュース曲へのやっかみもあってか、当時“10年後に聴いている人はいないんじゃないか?”など、したり顔で話すアーティストや評論家は多かった。しかし、30年経った今もなお、trf曲は歌われ聴かれ続けている。このことは評価に値するはずだ。

さらに、日本武道館公演を経てTRFは90年代当時とは異なる感動を与えてくれたことにも着目したい。

それはTRFメンバーの、YU-KI(ボーカル)、DJ KOO(DJ・ラップ・ボーカル)SAM(ダンス・コーラス)、ETSU(ダンス・コーラス)、CHIHARU(ダンス・コーラス)という5人が、平成〜令和という時代の荒波を乗り越え、ボーカリスト、DJ、ダンサーとして成長し続けてきた結果、TRF楽曲における歌詞の意味合いがアップデートして聴こえるようになったのだ。

それは思わず涙がこぼれるほどの感動だった。

なぜか? TRFの楽曲はステレオタイプなラブソングではなく、葛藤を抱きながらも前向きな生き方を歌っていたからだ。それが“好きを形にしてきた個性的なTRFメンバーの生き様”と重なり、そして聴き手も自分ごととして、歌詞におけるメッセージ性がハートに突き刺さったのだ。

●TRF、歌い継がれる伝説的な名曲=名言を抜粋

“あなたと過ごした日は 20世紀で最高の出来事!!”
“出会いこそ 人生の宝探しだね”

「BOY MEETS GIRL」
作詞・作曲:小室哲哉 編曲:小室哲哉

“真面目な自分は茶化しちゃう自分に 負けてるいつもね だけど不自然じゃなく素直になれるよ 今夜は!!”

「CRAZY GONNA CRAZY」
作詞・作曲:小室哲哉 編曲:小室哲哉

“学校に行きたきゃ 勉強もできるよ 毎晩うたって楽しく生きれる 時代は全てをあなたに委ねている”

「Overnight Sensation 〜時代はあなたに委ねてる〜」
作詞・作曲:小室哲哉 編曲:小室哲哉&久保こーじ

“ずっと待ってる 平和の鐘が 鳴り響くのを ずっと夢見ている”
“MIDNIGHT TV NEWSの悲劇は 本当かい? ウソかいってわからない 枯れた花の淋しさは 咲いてるままじゃわからない”

「Love & Peace Forever」
作詞:小室哲哉&前田たかひろ 作曲・編曲:小室哲哉&久保こーじ

●レイヴカルチャー、日本武道館がクラブフロアに様変わりした

TRF、25年ぶりとなった日本武道館公演は、エイベックス邦楽グループ第一弾として1993年に発表した1stアルバム『trf 〜THIS IS THE TRUTH〜』から、「Time after Time」、「OPEN YOUR MIND」、「One More Night」、さらにデビューシングルとなった「GOING 2 DANCE」を圧巻の爆音レイヴサウンドで披露した。そう、日本武道館がクラブフロアに様変わりしたのだ。それこそが、TRFのアイデンティティなのだ。

歴史を顧みれば、ミュージックビデオなどプロディジーからの影響も感じられたデビュー時の世界観。ちなみに、DJ KOOのドレッドヘアはハウスミュージックをロックに取り入れ世界を変えたバンド、ジーザス・ジョーンズからの影響だったという。それは、“洋楽からの影響を受け入れ、そして乗り越えていこうという一心”が、trfを日本トップレベルのスターへと押し上げたモチベーションとなったのかもしれない。

そう、この“モチベーション”というワードも、実は「Overnight Sensation 〜時代はあなたに委ねてる〜」の歌詞で、“20才やそこらじゃ 人生のモチベーション”と歌われた結果、一般的に広まった逸話を持つ。音楽はどんなカルチャーにも溶け合う。そう、trfとは文化だ。

BPMの早い、ダンサーが踊りづらいテクノサウンドからスタートしたtrfだったが、「Overnight Sensation 〜時代はあなたに委ねてる〜」は、プロデューサーの小室がtrfブレイク後に、踊りやすい曲としてダンサーチームへのプレゼントという側面があった。結果、日本で最も知られるダンスクラシックナンバーの誕生となったことはとても興味深い。あらためて歌詞を読みながら聴いてみてほしい。時代性を超越しエバーグリーンとなる要素が、絶妙に散りばめられているのだ。

●2024年、ダンス&ボーカルユニット,グループが主流な時代へ

trfが、日本の音楽史に与えた影響はとても大きい。四つ打ちを基調とした、踊れるダンサブルなサウンドの構築。そこに、歌えるメロディーとポジティビティ高い歌詞世界によって、今に通じるJ-POPの基準となる方向性を指し示したのがtrfだ。

結果、ポップミュージックと溶け合ったクラブカルチャーはメインストリームでも人気となり、ダンサーやDJに憧れるティーンエイジャーが増えた。

現在、中学校ではダンスが必修科目となり、バンドにDJがいる事例も増え、DJ人口は増え、さらに機材もPC&アプリ化したことで導入価格も下がり一気に手が届きやすくなった。J-POP主流のサウンドも、この30年でロックからダンスミュージックへと一変した。trf以降、globe、安室奈美恵、浜崎あゆみ、倖田來未、EXILEやAAA。そしてSAMがライブを演出した東方神起など、K-POPシーンへも大きな影響を与え、SKY-HIプロデュースによるBE:FIRSTの活躍など、2024年の今もなお、ダンス&ボーカルユニット,グループが主流な時代となっている。

その原点となるのが1993年に誕生したtrfだ。男女混合ユニットであったことや、ラブソングだけではない生き方を歌い上げる作品性など、今から顧みればジェンダーバランスを考えても画期的な存在なのである。

2024年、30周年武道館公演以降も、TRFの活動は終わらない。今後、新曲「TRy the Future」含む、BOX SET『TRF 30th Anniversary "past and future" Premium Edition』(初回生産限定盤:3CD+3Blu-ray Disc+ブックレット+Tシャツ+チケットホルダー+ステッカーシート)のリリースも控えている。

デビューから30年。メンバーの年齢を考えれば、30周年以降のステージはダンサーやDJにおいては、まさに未知の領域だ。しかし、YU-KI、DJ KOO、SAM、ETSU、CHIHARUは31年目以降も、TRFとして躍進し続けることをステージで約束してくれた。伝説的ダンス&ボーカルユニットTRFの軌跡、30周年をきっかけに、あらためて多くのリスナーに知って欲しいと願う。

本公演ラストMCで、DJ KOOが「皆さんのこれからの人生とTRFが一緒にいれたら最高に幸せです!」と言い放った。その一言が、胸に響いたかけがえのない夜だった。TRFの楽曲は今後もずっと歌い継がれていくことだろう。

◆TRF 30th Anniversary LIVE at 日本武道館「past and future.」セットリスト

M1 PUSH YOUR BACK

M2 masquerade -30th Version for Budokan-

M3 Overnight Sensation

M4 Love & Peace Forever

M5 BILLIONAIRE

M6 寒い夜だから・・・

M7 Show Time (4 Exective Seats)

M8 LEGEND OF WIND

M9 FUNKY M

M10 TRUTH -30th Version for Budokan-

M11 ENGAGED '06

M12 ダンスナンバー (Feel the Century)

M13 DJ TIME (「Impression of TRF」~「Right here right now」)

M14 メドレー (「TIME AFTER TIME、OPEN YOUR MIND、One More Night」)

M15 CRAZY GONNA CRAZY

M16 Where to begin

M17 TRy the Future

M18 EZ DO DANCE -Version 2023-

EN1 GOING 2 DANCE (Hyper3 ver)

EN2 BOY MEETS GIRL

EN3 survival dAnce ~no no cry more~

EN4 WORLD GROOVE

◆2024年3月20日(水)発売

TRFデビュー30周年スペシャル記念作品

『TRF 30th Anniversary “past and future” Premium Edition』

初回生産限定盤。 クリアケース・スペシャルアートジャケット仕様

AVCD-63558~60/B~D

¥33,000(税込)

https://trf.avexnet.or.jp/news/detail.php?id=1113283

TRF オフィシャルサイト

https://trf.avexnet.or.jp

音楽コンシェルジュ

happy dragon.LLC 代表 / Yahoo!ニュース、Spotify、fm yokohama、J-WAVE、ビルボードジャパン、ROCKIN’ON JAPANなどで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)布袋寅泰、DREAMS COME TRUE、TM NETWORKのツアーパンフ執筆。SMAP公式タブロイド風新聞、『別冊カドカワ 布袋寅泰』、『小室哲哉ぴあ TM編&TK編、globe編』、『氷室京介ぴあ』、『ケツメイシぴあ』など

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