障害と平地「二刀流」のオジュウチョウサンが今年は障害で始動の理由。平地GI再挑戦は宝塚を視野に
オジュウチョウサン、再び障害GIに出走へ
2016~18年の3年連続でJRA賞最優秀障害馬に選出された一方で有馬記念(GI)9着など平地競走にも挑戦し"二刀流"で話題を呼んだオジュウチョウサンが障害競走に復帰することが明らかになった。
オーナーである長山尚義氏(馬主名義は同氏が代表取締役を務める株式会社チョウサン)は「今年はまた障害からスタートして新たな物語をつくっていきたい」と2019年の新たな方針を打ち出した。
具体的には、長山オーナーと管理する和田正一郎調教師が協議した結果、阪神スプリングジャンプ(3月9日、J.GII、阪神芝3900m)から中山グランドジャンプ(4月13日、J.GI、中山芝4250m)を目指すことになった。コンビを組むのはもちろん石神深一騎手。石神騎手はオジュウチョウサンが平地へ挑戦していたときも裏方である調教パートナーとして支え続けてきた功労者でもある。長山オーナーからの信頼も厚く「石神騎手はよくオジュウチョウサンのことをわかってくれている」と目を細めていた。
美浦トレセンへの帰厩は2月上旬を予定
オジュウチョウサンは現在、放牧に出ている。これまで、次走のプランは平地重賞を中心に練られていた。3月30日に行われるドバイシーマクラシックとゴールドカップの予備登録も行っていたし、2月16日のダイヤモンドS(GIII、東京芝3400m)も視野に入れられていた。
しかし、ここにきてあえて昨年の中山グランドジャンプ以来、約11か月ぶりの障害競走への復帰となる。その理由についても長山オーナーに聞いてみた。
「和田調教師からオジュウチョウサンの体調を考えると2月に復帰させるのは少し早いという連絡を受けました。和田調教師はとても慎重に、そしてとても大事にオジュウチョウサンのことを考えてくれていますから、そのとおりにお願いしました。美浦トレセンへの帰厩は2月上旬になると報告を受けています。
では3月、ということでレース選択に入ったわけですが、エントリーした中でドバイゴールドカップなら選出の可能性がありそうだ、という話になりました。しかし、このレースはG2。ドバイまで遠征させるのであれば、やはりGIへ出走させたいですから。」
それであれば、国内の平地GIである天皇賞(春・GI)を視野に出走プランを練るという手もある、と筆者は思った。昨年の天皇賞(春)は出走可能頭数18頭に対して、特別登録したのは17頭でこの時点でフルゲート割れ、つまり登録した馬はすべて出走可能であった。もちろん、今年の天皇賞(春)の特別登録頭数が18頭を超えれば、平地の収得賞金(クラス分けのために示される賞金の額)が1100万円と少ないオジュウチョウサンは真っ先に補欠にまわる可能性は極めて高い。出走が危ぶまれる馬は騎手の確保も難しくなる。それでもスタミナ豊富なオジュウチョウサンに距離等の条件は合っているGIレースなので面白いと考えたのだ。
しかし、長山オーナーに尋ねたところ、天皇賞(春)を選択肢に入れる考えは「ありません」とのことだった。
「昨年掲げた『武豊騎手を乗せて有馬記念へ出走』という夢は叶ったので、その物語は完結しました。わたしは前を向いて進む主義。改めて考えた結果、今年はまず再び石神騎手で障害を走らせたい、と思ったんです。」
長山オーナーの夢は「オジュウチョウサンを種牡馬にすること」
中山グランドジャンプ(J.GI)はオジュウチョウサンが2016年から3年連続で勝っているレース。今年は4連覇をかけての出走となるし、4年連続JRA賞最優秀障害馬も狙える。将来的には、中山大障害4連覇(昭和49年から50年にかけての4勝。当時は春秋開催だった)と京都大障害3連覇の偉業を果たしたグランドマーチス以来の顕彰馬に選ばれる可能性もある。
長山オーナーのかねての夢のひとつは「オジュウチョウサンを種牡馬にすること」だ。
「オジュウチョウサンの父の父はサンデーサイレンス。日本ではサンデーサイレンスの血統は溢れ過ぎているけれど、海外はこの血統を欲しがっているからね。1年単位で移動するようなシャトル形式にするのもいい。ぜひ、オジュウチョウサンを種牡馬にしたいんです。」
種牡馬に良い花嫁を集めるためには箔付けが必要だ。可愛い我が子の将来のために、最善の道を模索した結果が今回の選択につながったと察する。
そして、障害二戦のあとは「ファン投票で出走馬が決まる宝塚記念も視野に入れています」とのこと。もちろん、中山グランドジャンプを走り終えた後の体調等を見てからの決定となるだろうが、平地のGIも狙う"二刀流"は2019年も続く。
オジュウチョウサンのさらなる飛躍を願って
昨年、長山オーナーは中山グランドジャンプを圧勝した後に「武豊騎乗で有馬記念」という夢を掲げた。その当時、オジュウチョウサンは障害界のチャンピオンではあったが平地をひとつも勝っていない競走馬だったので、その夢は"壮大過ぎる"、"無謀"と見る識者は少なくなかった。
しかし、実際にはその夢は叶った。
私見だが、長山オーナーはひじょうに客観的な判断ができる方だ。掲げる夢や目標も過去に事例がない(または少ない)だけで、極端に突拍子がないものではないと感じている。今後も新たな夢が叶う可能性は十分あるだろう。そして、2019年中にまた新たな目標や夢が掲げられることも期待できる。
そんなファンの期待やオーナーの夢を背負うオジュウチョウサン、2019年のさらなる"飛躍"を願う。