Yahoo!ニュース

新1万円札が登場、新紙幣が必要となるのは偽造防止と、その技術継承のため

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 20年ぶりとなる新しい紙幣が3日に発行され、日銀から金融機関への引き渡しが始まった。東京日本橋にある日銀本店では、3日朝に新紙幣の発行にあわせて記念の式典が行われた。午前8時すぎに日銀から金融機関に新紙幣が引き渡され、束になった新紙幣が輸送車に積み込まれた。新紙幣は順次、金融機関に引き渡され、店舗で手にすることができるが、初日は多くの金融機関が新紙幣の取り扱いを一部の店舗に限定する見通し(3日付NHK)。

 銀行などの金融機関は個人や企業への支払に必要な分を用意するため、日銀の当座預金から引き出すことによって日銀券を日銀の窓口から受け取る。これよって日銀券が世の中に送り出され、お札の「発行」となる。

 紙幣のデザインの変更は、今の紙幣が発行された2004年以来、20年ぶり。一万円札に渋沢栄一、五千円札に津田梅子、千円札に北里柴三郎の肖像がデザインされている。

 どうして自動販売機の変更など費用負担も掛かる紙幣のデザインの変更を行っているのかといえば、紙幣の信用度を維持するためである。

 紙幣の発行は偽造との戦いである。貨幣が生まれてから常につきまとっているものである。このため、高度の印刷技術とその継承が大きな課題となる。次の継承者に引き継ぐ、世代交代をするためには20年以上期間を空けることはむずかしくなる。

 この偽造防止技術については日銀のサイトで詳しい説明がある。

「新しい一万円札について」 https://www.npb.go.jp/ja/n_banknote/design10/

 お札の肖像部分などの主な図柄は、凹版印刷という印刷方式が使われている。額面数字や識別マークには、特にインキを高く盛り上げる「深凹版印刷」が使われ、触るとざらざらした感じがある。

 また「すき入れ」と呼ばれる紙の厚さを変えることによって表現する偽造防止技術も使われている。いわゆる「すかし」である。

 現行の「すき入れ」に加えて、新たに高精細なすき入れ模様を採用。肖像の周囲に、緻密な画線で構成した連続模様が施されている。

 ストライプ型のホログラムを新たに採用。3Dで表現された肖像が回転する最先端技術を用いている。この技術の銀行券への採用は世界初とか。

 せっかくなので、もし新しい1万円札を手にした際には、これら偽造防止技術を確認してはどうかと思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事