四日市ATPチャレンジャー:元世界19位とのリベンジへ――復活の杉田祐一が3大会連続出場を決意した訳
「チョン・ヒョンとやりたかったんです」。
間髪入れず返ってきたその答えは、にわかには不意をつかれつつも、その実、これ以上ないほどに彼らしい理由だなと得心のいくものだった。
2大会連続でATPチャレンジャー決勝進出中の杉田に、現在四日市市で開催中のチャレンジャー出場の真意を問うた時のこと。
2週間前のニューヨークのチャレンジャーで優勝した杉田は、翌週の成都大会でも決勝へ。連勝街道をひた走るその彼を、頂上決戦の舞台で待っていたのは、元19位のチョン・ヒョン(韓国)だった。今年2月以降、腰のケガのためにツアーを離れていた23歳のチョンにとっては、このチャレンジャーが復帰戦。状況は異なるものの、共にかつていた場所へと戻る道を走る中での初邂逅は、チョンに軍配があがった。
この敗戦が、きたる全米OPに備え四日市チャレンジャー欠場も考えた杉田の、闘志に火を灯す。
「これでは終われない。単純に(試合するのが)面白かったですし、ストレートでやられているので……このままUSオープンに入れないという想いもありました」
その、やり残した何かにケリをつけるため、彼は3週連続となる酷暑の戦いを選びとった。
2週間前のニューヨークで約2年ぶりに手にしたタイトルを、杉田は「キャリアの中でも、とても価値のある優勝」と位置づけていた。その理由は、約2年前に36位に上げたランキングを200位代後半まで落とした中で、挑戦し続け、ようやくかつての感覚を取り戻してつかみ取ったタイトルだから。
「苦しい2年間から、ここに戻ってこられたのは評価できる。大きな大きな意味を持つ優勝だったかなと思います」。
踏破してきた苦しい日々を噛みしめるかのように、彼は久々のタイトルを評した。
勝ち星に見放された時期は、「自分のテニスがわからない。どうやってポイントを取って、どう勝負を掛けていたのがわからない」という状態だったという杉田。2017年の快進撃によりランキングを大きく上げ、しかしそのために主戦場としたツアーで敗戦が続くなか、「良い流れが作るのが難しい」状態に陥っていたという。
もがき苦しみ、迷走し、そして再び上昇気流を自ら生み……だからこそ、今もう一度あの高みに身を置いたなら、「もしかしたら踏ん張れるのかもしれない」との手応えも携える。不敵な笑みをこぼす杉田は、「戻りたいですね」と静かな口調に実感を込めた。
そのかつていた場所に戻るためにも、似通った道を歩むチョン・ヒョンと戦うことは、今の杉田にとって単なる再戦以上の意味を持つのだろう。
杉田の想いを叶えるように、先週の決勝で戦ったばかりの2人は、本日(9日)四日市チャレンジャーの準々決勝で相まみえる。
※テニス専門誌『スマッシュ』のFacebookから転載