Yahoo!ニュース

ひきこもり支援うたう引き出し業者「あけぼのばし自立研修センター」関連2社が倒産

加藤順子ジャーナリスト、フォトグラファー、気象予報士
クリアアンサーとリアライズが親たちに研修生の引き取りを求めた文書(代表者は当時)

 ひきこもりの自立支援等をうたう「あけぼのばし自立研修センター」を運営するクリアアンサー株式会社(東京都新宿区、代表取締役 監物啓和)と、「東京自立研修センター」を運営するリアライズ株式会社(東京都中央区、代表取締役 監物啓和)が23日、東京地方裁判所で破産手続きに入ったことが破産管財人への確認でわかった。

 ある日突然、居室に入ってきた複数の見知らぬ男女により、集団生活型の自立支援施設に入るよう強引に説得されたのち、従わなければ暴力的な手段で連れ出されたなどといった被害を訴える声が相次いでいる。同様の被害や、適切な支援ではなかったなどと両社に対して起こされている民事訴訟は、明らかになっているものだけでも、クリアアンサー社に対しては4件、リアライズ社に対しては1件ある。クリアアンサー社に関しては今年11月、東京地検に告訴状も提出されていた。

 リアライズ社は、クリアアンサー社の100%子会社であることがこれまでの裁判で明らかにされている。使用していた東京都新宿区住吉町界隈や商店街にある施設だけでなく、職員らもほとんど共通していたことから、実質的な営業窓口会社として機能していたとみられる。

 両センターでは、11月下旬から本格的に研修生を帰宅させる手続きをとっていた。11月29日付で、「重要なお知らせ」という文書が当時の両社代表取締役の連名で発信され、依頼主である研修生の親や家族に対し、研修生を実家や元の居住地へ返すことになったため、「12月2日17時までに」迎えに来るよう求めていた。

 文書にはさらに、研修生を帰宅させる理由として、

・いわれのない誹謗中傷や誤った情報がインターネットやメディアで報道されており、テレビ記者が職員を追いかけ回したこと

・報道に感化された人物が押しかけてセンターへの批判をまくし立てたこと

・脅迫電話や命を危険にさらすメール等が頻繁に届く状態であること

 等が挙げられ、「通常サービスどころか生命の安全さえままならない状態となってしまいました」との説明が書かれていた。

 11月下旬には、熊本県湯前町の研修施設「くまもと湯前町研修所」(職員は株式会社常笑)が閉鎖に向けて準備。並行して東京でも、両センター職員らが、カーパーツ販売事業等で知られる関連会社の株式会社SPREADへ異動したり退職したりしていた。

 12月中旬には、近隣の複数施設から荷物をセンターに引き上げる様子が、脱走した元研修生らによって目撃されており、さらに、研修生たちが生活していた各所の寮も次々と閉鎖されたことから、年内の倒産が噂されていた。

 25日18時現在、両センターのウェブサイトは残っているが、掲載されている電話番号はどちらもつながらない。計画的な倒産とみられる。

 24日午後に東京地裁(下澤良太裁判長)で開かれた同2社が被告となっている法廷では、被害者側の原告代理人が「事務所を閉鎖したようだが、登記が変更されているのか。郵便物も戻ってくる」と尋ねると、被告2社の代理人は、「承知していない。変更があったらお知らせする」と回答していた。前日から破産手続きに入っていたことを、裁判期日に知らせていなかったことになる。

クリアアンサー(株)、リアライズ(株)ともに、

破産管財人:田島正弘弁護士

債権者集会:2020年3月30日午後3時

破産債権届け出等の手続きの詳細は、田島・寺西法律事務所まで

ジャーナリスト、フォトグラファー、気象予報士

近年は、引き出し屋と社会的養護を取材。その他、学校安全、災害・防災、科学コミュニケーション、ソーシャルデザインが主なテーマ。災害が起きても現場に足を運べず、スタジオから伝えるばかりだった気象キャスター時代を省みて、取材者に。主な共著は、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)、『石巻市立大川小学校「事故検証委員会」を検証する』(ポプラ社)、『下流中年』(SB新書)等。

加藤順子の最近の記事