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脱サラしたフリーランサーがミス・ジャパンファイナリストに。コロナ禍で変化する働く価値観とは。

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
ミス・ジャパンに挑戦するフリーランサーの須田詩さん(画像提供:須田詩さん)

新型コロナウイルス感染拡大の影響で職場環境の見直しが進む中、在宅・リモート・テレワークが浸透し「働き方」が変化している。そして、人々の「働く価値観」にも大きな変化が起きている。

理想の働き方は?どのような制度が魅力的か?

ユーキャンが実施した「コロナ禍での働き方に関する意識調査」では、制度面に関してどのような勤務制度や条件が魅力的かに対して「週休3~4日制」「フレックスタイム制」「リモートワーク可能」が上位に来ている。ここ数年でワークライフバランスが重要視されているが、これからの理想の働き方は、より柔軟な条件で働くことのできる自由な働き方が求められ、働く人たちの価値観そのものが大きく変化していることがわかる。

脱サラしてフリーランスに挑戦

そんな中、コロナ禍でも「自分らしく」を貫きフリーランスという働き方を選択し、自らの新しい挑戦に“ミスジャパン”を選択して全国4位(ミス神奈川)を獲得したフリーランサーに注目したい。彼女の生き方、働き方の価値観は中高に通わないという選択肢から始まっていたようだ。

フリーランサーでありながらミス・ジャパンに挑戦した須田詩さん(ご本人から画像提供)
フリーランサーでありながらミス・ジャパンに挑戦した須田詩さん(ご本人から画像提供)

――現在はどんなお仕事をされていますか?

今はフリーランスとして美容系メディアのコンテンツ制作やマーケティング的な業務を主軸にフリーランスとして、ブライダル企業でお仕事をしたり、モデルとして広告案件や動画で演技をしたり、2020年ミス神奈川としてもボランティアなど様々な活動をしています。

本業や副業というような意識はあまりなく、私という人間に価値を感じてお願いしたい!というお仕事をその時々に応じて引き受けているような状況です。人との繋がりをとても大事にしているので、モデルなどの仕事も事務所などに所属せず活動しています。だからこそ頂けるお仕事への感謝も大きいです。

学校に通わないホームスクーリングで培った価値観

――そもそもの経歴を教えてください。

北海道で7人兄弟という大家族で育ち、父親の仕事の都合で幼少期は各地を転々としていました。今思えば都度新しい環境に飛び込む必要があったので対人コミュニケーションや柔軟性、多様な価値観はここで培われているのだと思っています。

そして私の経歴で最も今に影響を与えているのが中高は学校に通っていないということです。学校に通わずに自宅で勉強をする、教材も自分で選択するという仕組みやルールが固まっているものではなく、日本ではまだまだ浸透はしていませんが欧米ではその選択は不思議なものではないです。

――小学生でホームスクーリングを選択できるものか?

ホームスクーリングを選択したのは親の意思ではなく、小学1年生でホームスクーリングの存在を偶然にも認識していたこと、英語や海外の憧れが子供ながらにあってそこに最も近道に感じたこと、そして両親が「みんなでホームスクーリングをやってみる?」というフラットな提案が、何かに強制されることのない環境を自然に選択させてくれました。

自分らしい、素直な選択

――ホームスクーリングで得たものは?

幼少期は語学や海外に興味があって、ホームスクーリングでは意図的に海外の教材を使用して「海外に行きたい」という未来への想いを実現する為に最短距離を選んでいました。つまり、自分自身の想いや個性・特徴を自分の選択で伸ばしていくという強制力のない環境だからこそ、多様な価値観が受け入れられる柔軟性が育ったように思います。

――海外に興味があるのになぜ日本の大学を選択したのか?

そもそも大学に行くという選択肢すらありませんでした。ところが高校3年生の時に念願だった海外生活(ハワイ島コナで3ヶ月のボランティア)で出会った中国人がきっかけで中国に興味を持つようになり、大学で中国への留学が出来る環境を探しました。

ただ、その時はすでにセンター試験の申込等も終わっていて一般受験しか残されていませんでした。

私らしく併願なども一切せずに一極集中で3ヶ月間みっちり勉強して合格することができました。(どうにか合格するための詰め込み、付け焼き刃的な勉強だったのでオススメはできませんが、人生で一番勉強したと胸を張って言える原体験ですね)

――最初のキャリアは?

就職活動はいたって普通で、何がしたいか明確な目標がなかったのでかなり苦戦しましたが最終的にはサービス内容の社会貢献性と本質性、またそこで働く人の人間性に惹かれて総合人材サービスを手掛ける大手企業に入社をしました。

入社後は“営業“という職業の数字的な側面と私の中に根強くあるボランティア精神というか、損得関係なく人のためになりたいという思いの狭間で葛藤することもありましたが、一年の終わりには年間の新人法人営業達成率No1をいただくこともできました。

特に大きな不満があったわけでも、今後のキャリアを考えて転職活動をしていたわけでもなかったのですが、このままでいいのかな?もっと私が私らしく輝ける行き方ってあるんじゃないか?というような思いはずっと持っていました。

――転職についての考え方は?

2年目に入ってたまたま知人がシェアしていた企業の採用戦略に関する記事を読み、その本質性やユニークさに強烈に惹かれ、直接話を聞けるイベントに参加しました。

そこで企業のアイデンティティやカルチャー、人の魅力に雷を受けたような衝撃を受け、転職は考えていない中での突然の出会いだったのですが1社目を退職することとなりました。

フリーランスへの挑戦

――なぜフリーランスになったのか?

転職先では営業部でお客様とのコミュニケーションを担当していたのですが、半年間正社員をしたのちに雇用形態を変え、フリーランス(個人事業主)として業務ベースで関わることを決断しました。その頃ミスジャパンに応募して選考が進んでいたり、現在の主軸である美容メディアでのお仕事を業務委託として手伝わせてもらえるチャンスがあったりと、ちょうど私の幅を広げていけるチャンスが重なるタイミングだった背景が大きいです。

フリーランスは人との繋がりが多く、趣味も多く、常に自分の視野を広げ、新しいことに挑戦したいという私に適した働き方だなと思っていたので少し不安はありながらもフリーランスとしての歩みを決意しました。

ミス・ジャパンへの挑戦

――なぜ、このタイミングでミス・ジャパンに挑戦をしたのか?

ミス神奈川としてミス・ジャパンに挑戦する須田詩さん(ご本人より画像提供)
ミス神奈川としてミス・ジャパンに挑戦する須田詩さん(ご本人より画像提供)

きっかけは広告を見て一位の賞金が1千万円という点に純粋に惹かれたのこと、そして何か新しい挑戦をしたい!という想いでした。コロナ渦だったこともありオンライン審査やYoutubeで自己表現をする中で自身のやりたかったこと、表現したかったことが形になり、しっくり来ている感覚がありました。

人と違う、ユニークな人生を送ってきたからこそ感じること・思うことがあり、それを表現したい!人の選択肢を増やしたい!人の励ましになりたい!ということが私が人生をかけてしたいこと、ありたい姿だと確信することができました。

フリーランスのその先にあるもの

これまで本業に拘りがなくマルチ・フレキシブルという印象が強い須田さんだが、話を聞く中で少し気持ちに変があるようだ。それはこの先の「生き方」について触れている中であふれ出した。

――今後のキャリアや人生設計はどのように考えている?

これまで遠いゴールや、これを成し遂げたい!というものはなく、““与えられているチャンスや状況で何に情熱を感じ、やりたいと思うかというところに対して「フットワーク軽く」というスタンスでやって来ました。それはこれからも変わらないとは思うのですが、年末年始に実家に帰省した際、地元北海道に複合施設を作れたら面白いかも…。という思いが降ってきました。

弟が障害を持っているのですが、障害を持っている人でも得意なこと好きなことを仕事にできる社会になれば…と考えた時に私が起業するかそのような”場“を作れば弟や想いとスキルあるけど”場“がない人も一緒に楽しく働けるのでは?と思いつきました。

私が各地を転々とするユニークな人生を歩んできたこと、そこで得た経験や繋がりをフル活用して社会に貢献できる自分にとって「しっくりくるカタチ」を見つけた気がしました。複合施設案の形自体は変わっていく可能性があるとは思うのですが、こういうことをしていきたい!というカタチがある程度見えた今、そこに向けて少しずつ仲間も増やして進めていきたいと思っています。

地方には良いモノがあるのに、デザインやPRに課題があって広まらないものが数多くあると思います。私の今時点の大きな妄想を形にすることで、その課題も解決していきたいと考えています。

何より弟を含めた「やりたいことはあるけど場がない」人たちの夢の実現が今見える未来です。

変化する働く価値観

須田さんの生き方、働くに対する価値観はまだまだ「凄い」「憧れる」とポジティブに捉える人が多い中で「須田さんだから」「リスクがある」というネガティブに表現する人もいるのは現実です。ただ、コロナ禍で大きく変化した働く環境や価値観はPost/Afterコロナではさらに変化していくはずだ。となれば、日本の働くに対しての価値観は今だから変革できるチャンスにもなり得る。

大卒で新卒就職する、部長職を目指す、年収1000万がステータス、大手・ブランド企業で安定するなどのこれまでの文化、価値観ではなくそれぞれの人生観、働くに対しての価値観、環境によって働き方や生き方を多様にデザインしていく、そしてそれを周囲が当たり前に応援できる世の中になれば今、日本にある多くの課題は前向きに進むのだろう。

学生は、インターンシップや就職活動時に目先の企業や職種よりも未来志向を軸に働き方や環境の変化を意識してみると、今見えている景色が変化するかもしれない。

はたらくを楽しもう。

【須田詩さんについて】

本業を持たないマルチキャリアを選択した須田詩さん(ご本人より画像提供)
本業を持たないマルチキャリアを選択した須田詩さん(ご本人より画像提供)

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はたらクリエイティブディレクター

はたらクリエイティブディレクター パーソルホールディングス|グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクトCAMP|キャプテン、ベネッセi-キャリア|特任研究員、パーソル総合研究所|客員研究員、関西学院大学|フェロー、名城大学|「Bridge」スーパーバイザー、SVOLTA|代表取締役社長、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program|外部評価委員などを歴任。現在は成城大学|外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学|客員教授、デジタルハリウッド大学|客員教員などを務める。 ※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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