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“コロナ禍”で起業することになってしまった人たちの今と挑戦から学ぶコト

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
「コロナ倒産」ならぬ「コロナ起業」をした人達の今とその中での学びに迫る(写真:アフロ)

東京商工リサーチは4月15日時点で「新型コロナ」関連の経営破たんが全国で61件に達したと発表している。個人事業主など細かいリサーチをすればこの件数ではすまないのが現実だろう。地区別では最多が関東18件、次いで北海道・中部・近畿が各8件で続く。中でもインバウンド消失の影響が直撃した宿泊業・飲食業が全体の30%を占めているようだ。

感染拡大の収束が見えない中、外出自粛や休業要請の広がりで小・零細企業は経営体質のぜい弱さなどから疲弊が加速している。すでに手元資金に乏しい中堅クラスの企業でも資金繰りの限界が近づいている。

そんな中、意図せず“コロナ禍”で起業することになってしまった人たちは今、どのような状態なのか。その中から我々が学ぶべきコトにはどんなことがあるのか、緊急取材を実施した。

スタートアップは苦境を乗り越えるために必死

フランスは早々にスタートアップへの支援対策として政府が銀行を巻き込んで5000億近くを捻出しているが、日本はスタートアップを対象にした対策どころか経済対策を含めた「あらゆる支援対策」の進みが悪い。

ところが「新型コロナ」という言葉もなかった昨年より前に起業した日本のスタートアップと言われる複数社の企業に話を聞いてみると、意外にも力強い反応が返って来た。

・こんな時だからあえて、投資として考えてサービスの無償化を進めている

・新サービス開発の時だと知恵を絞っている

・利用可能な政府の支援策を使って動きは止めないようにしたい

流石にスタートアップとして実績を作り始めている企業は人のつながりやスタートアップだからこその小回りで、柔軟な経営をしながら“コロナ禍”を受け止めながら前に進んでいるようだ。

“コロナ禍”で起業をすることになってしまった「コロナ起業」

「新型コロナ感染拡大」を背景に前向きに起業するケースは多くはないだろう。一方で「予期せぬ新型コロナ」という状況で起業をすることになった挑戦者たちが全国でも数多くいる。

日々、メディアでは「コロナ倒産」として話題になっているが、スタートアップのように顧客を掴み、一定の収入を確保する以前の「起業したばかり」の実態に迫るべく、緊急取材として大手企業から独立をした社会人、学生起業に挑戦している学生達に話を聞いた。

これだけ厳しい環境を経営の基準に出来たらこの先が楽しみ

ラーメン店「博多一風堂」などを運営する株式会社力の源カンパニーで人事を幅広く担当していた関口 照輝氏が独立をして『sense.(センス)』という屋号で新しいキャリアをスタートさせたのは3月11日のこと。

今の厳しい状況を基準に考えたら未来は明るいと考えるsense.代表 関口 照輝氏 (写真提供:ご本人より)
今の厳しい状況を基準に考えたら未来は明るいと考えるsense.代表 関口 照輝氏 (写真提供:ご本人より)

本来であれば企業の採用・研修をはじめとした人事業務全般から自身のこれまでの経験で得た能力を発揮出来る仕事であればプロジェクト化して幅広く企業にコンサルティングを行う想定だった。ところが、「新型コロナ」の影響でオファーのあった業務の大半が延期となってしまったそうだ。

何とかオンラインで対応出来ている仕事でも影響は強く感じているようだが、こんな時だからこその意識や学びもあるようだ。

オンラインだと自分の発揮すべき能力がどうしても上手く届かない点がある。そもそも人間関係など新しい環境に適応する前にオンラインからスタートするわけですから現実的には厳しい部分が多いです。

想定していた仕事が延期になっているので時間は確保出来ますので、本来まだ考えていなかった銀行からの融資まわりや経営という視点で多くのインプットをしています。

とは言え、過去にない今の厳しい環境はすべてがオンラインで多くの制限があってリアルがないからこそ、ここを基準にすることで、コロナが終息してリアルな環境で企業と向き合えるようになったら出来ることが沢山あるように感じています。だからこそ、今だから出来るインプットとオンラインの工夫を前向きに捉えています

こんな時だからこそ必要な『日本一熱い学生が集う共創の場』を京都から

「Voltage」という学生無料のコワーキングスペースを運営する株式会社VMKは学生が起業し、本来オープン予定だった5月の準備に向けて走り続けている。今回は代表の田中 優大氏、役員の古川 由貴氏にZOOMを使って取材をさせてもらった。

学生だけで創るコワーキングスペース「Voltage」のメンバー達(写真提供:株式会社VMK)
学生だけで創るコワーキングスペース「Voltage」のメンバー達(写真提供:株式会社VMK)

「Voltage」は世の中がこんな状態になることを全く考えてはなかった中で、若者が身近に繋がって、語って、時に熱狂しながら共にアイディアを共有・そして実現させるスペースを!という想いからすべて学生だけで創り上げて来ました。

コワーキングスペースのオープン予定は崩れてこれから先がまだまだ見えませんが、世の中がこんな時だから若い人のパワーは必要になると考えています。

「Voltage」で未来と向き合える仲間と出会うキッカケ、未来の選択肢を広げるキッカケ、何でも良いので若者がトキメキを生み出し続けられる場所を提供することが学生起業で柔軟に突き進める自分達の価値だと切り替えて走り抜けたいと思います。

幹部2名に直接話を聞いたが、「コロナショック」と向き合いながら先を見据えている覚悟が印象的だった。

学生起業だからという余裕ではなく、事の捉え方の工夫であり起業で社会に提供したい価値の為に「コロナショック」を逆にどうやって活用しようという、若者の柔軟性のようにも感じた。

キーワードは『こんな時だからこそ』

取材をして感じることは「事の捉え方」次第で思考が変わり、今をプラスのパワーに転換できるということ。

本来であれば考えていなかったこと、学ばなかったことを前倒しで向き合える、徹底的にインプットをして時が来たらリアルな世界でアウトプットすれば良いという考えは、学生もビジネスマンも共通して持ち合わせたい価値観のように思う。

そして、『こんな時だからこそ』と現状を捉えて若い人達に刺激を届けるべきだと方向性を定めて走り抜こうとする考え方も、これから挑戦しようとしている人や挑戦に踏みとどまっている人には刺激になるだろう。

学生起業では金融機関からの融資以外で自分達だけで資金調達をする意味を大切に「クラウドファンディング」に挑戦をしているが、(All or Nothing)つまり目標到達しないと全額返済という厳しい戦いに挑戦をしている点からも『こんな時だからこそ』の強い想いを感じられた。

「コロナ起業」となってしまった方で、悩み一歩踏み出せていない方がもしいらっしゃれば、少しでも当記事を参考、きっかけにして前に進んで頂ければと思う。

そして、『こんな時だからこそ』頑張っている若者に大人たちが応援してあげられる社会に期待をしたい。

はたらくを楽しもう。

学生無料のコワーキングスペース「Voltage」

コワーキングスペース『Voltage』完成イメージ(画像提供:株式会社VMK)
コワーキングスペース『Voltage』完成イメージ(画像提供:株式会社VMK)

それぞれの熱狂が交差し、日本ひいては世界を熱狂の渦に巻き込むべく、誰かにトキメキとキッカケを生み出す拠点。

・駅チカ:京阪「出町柳」駅から徒歩4分

・大学から近い:京都大学や同志社大学、京都造形芸術大学、京都工芸繊維大学など全11大学から15分以内のアクセス

・Wi-Fiや電源、ドリンクに加え貸し出しPCなど完備

・立ち上げから運営まで全て学生が行う

学生起業の挑戦を応援する方はこちら

はたらクリエイティブディレクター

はたらクリエイティブディレクター パーソルホールディングス|グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクトCAMP|キャプテン、ベネッセi-キャリア|特任研究員、パーソル総合研究所|客員研究員、関西学院大学|フェロー、名城大学|「Bridge」スーパーバイザー、SVOLTA|代表取締役社長、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program|外部評価委員などを歴任。現在は成城大学|外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学|客員教授、デジタルハリウッド大学|客員教員などを務める。 ※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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