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WEB面接の落とし穴。コロナショック明けには『内定承諾後辞退』が大量発生する?

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
新卒採用の最終面接をWEB面接化していくべきなのか?そこにはどんな落とし穴が?(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

ここ最近のネットニュースでは就活における「WEB説明会」「WEB面接」を良しとするものが多い。社会人の中では「ZOOM飲み会」が話題としてされている。この流れは当然ながら新型コロナウイルスが猛威を振るい、新卒会社説明会やイベントが中止になり面談・面接を含む就活全般がWEB移行をした背景にある。

当初、学生は面接経験がそもそもない中で「WEB面接」に対しては抵抗感があった。企業側も「WEB面接」は留学生や地方学生と効率よく接点を持つためのツールとして科学し始めていた矢先のことで、本当に評価まで至るのかは懐疑的な声が多かった。

そんな中、大手企業の人事のホンネから「WEB面接の落とし穴」が見えてきた。コロナショックが明けると内定承諾をしている学生が15採用並みに『内定承諾後辞退』をする可能性が出てきているのだ。

4月1日時点の内定獲得は例年以上のハイペース?

コロナショックで就活には大きな影響が出ていて内定取り消し、採用枠縮小など心配事が多い中「21就活」真っ只中の就活生は内定獲得に大きな不安があったはずだが、ディスコ社が発表したキャリタス就活2021学生モニター調査結果(2020年4月)の内定状況は34.7%と前年同時期比較で8.3ポイント上回っている。エントリー状況は平均社数24.6社と前年同時期25.6社をやや下回るも、ES提出/筆記・面接数は前年を上回っている。

21就活|4月 1 日時点の内定状況 (キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果より)
21就活|4月 1 日時点の内定状況 (キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果より)

これは就職活動の停滞が懸念される中、インターンシップ参加者の学生を着実に採用している企業の集中戦略と何より、勇気をもって説明会、面談、面接をWEB化して活動継続したことが3月から急激に内定獲得の数値が引きあがっている要因だと見られる。

就活市場で急加速するWEB化の実態

ディスコ社の企業調査新型コロナウイルス感染拡大による採用活動への影響調査(2020年3月)によると企業のWEB活用状況と効果は以下。

- WEBセミナーを「新型コロナウイルスの影響で新たに導入した」企業は3割強(34.0%)

- 「もともと実施していた/実施予定だった」(16.3%)を合わせて半数以上(50.3%)がWEBセミナーを実施。

- 実施した企業のうち「収束後も利用したい」が約6割(57.3%)

WEB活用の状況と効果|ディスコ社:新型コロナウイルス感染拡大による 採用活動への影響より
WEB活用の状況と効果|ディスコ社:新型コロナウイルス感染拡大による 採用活動への影響より

一方で学生のWEB セミナー視聴状況は、 会社説明会の中止や延期が相次いだことで、WEB セミナーの視聴は大幅に伸びている。

21就活|4月 1 日時点のWEB セミナー視聴状況  (キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果より
21就活|4月 1 日時点のWEB セミナー視聴状況 (キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果より

WEB面接に対してのホンネ

確かに就活市場は企業も学生も工夫と努力で活動を停滞させることなく良い数値で推移している。そして活動のWEB化の移行も順調のように見えて、コロナショックが明けても有効活用したいというネット上の声も多い。そこで、今回は大手企業の人事、21就活生のホンネを複数名に独自調査した。

【大手/ブランド企業の人事責任者のホンネ】

・最終面接で絶対にチェックしたい「非言語情報」がどうしてもWEBでは判断しにくい

・いざ、直接会ってみたら印象が違うということが多発している

・WEB面接になると就活生が準備、テクニックで武装しているので評価しにくい

・学生側のWEB環境がどうしても差が出てしまって、どこか平等とは感じられない

・面接経験があれば良いツールかもしれないが若手の現場面接官の評価が過去一番ブレている

・やっぱり人事として最終面接は対面で「人の熱」を感じたい、それが最終判断になる

【21就活生のホンネ】

・対面より緊張しないが、本当に自分のことを理解してくれているのか?不安になることが多い

・対面で伝わる温度感がWEBだとどうしても伝わらない気がする

・面接官から企業の情報を引き出したいがWEBだと雑談の時間が少ないので難易度が高い

・WEB環境によってはペースが乱れて、コミュニケーションが成立しなくなってしまう

・面接官の人柄が実際は伝わりにくいということは自分の人柄も伝わっていないと感じる

当然ながら、留学生や地方学生を支えるツールであり、コロナショックの中で就活を停滞させないためには「WEB面接」は大きな武器となっている。効率化や対面の面接よりも緊張感・抵抗感のない点でいうと双方にメリットはあると言える。一方で人事や就活生の「ホンネ」を聞くと課題も多いことが分かる。

最終面接をWEBで実施?コロナショック明けまで延期?

今回老舗・大手・ブランド企業からベンチャーまで幅広く人事の方々からWEB面接についてヒアリングをした。その中で気になったのは、「最終面接をWEBで済ませるか否か」の議論だ。

賛否になるのは、下記2点に絞られてくる。

『WEBで人がホントに非言語情報まで見抜けるか』

『実際に会ってみると印象が違うケースが実際起きている』

結論、勝負を急ぐ企業は最終面接をWEB面接として今年は対応しているケースが多い。さらに異なる背景としては人気企業として、インターンシップで一定の非言語情報までを捉えている企業は最終面接をWEB化している。

一方で、最終手前までWEB面接としてコロナショックが明けてから対面で最終面接を実施すると判断している企業は人気企業の筆頭で余裕が伺える。

この状況を理解した学生からの声がリアルだった。

「まずはWEBで内定が出る企業に今は集中。コロナが終息して対面で動き出す超大手が最後の勝負。当然、内定承諾後辞退をして超大手に行きます」

就活市場を大きく揺るがした16就活のトラウマ

つまり、コロナショックの影響に対して勝負を前倒しにしたい企業は最終面接をWEB面接で実施をして内定出しまで決行する。一方でWEB面接ではどうしても、、と懐疑的な部分が残る企業、そして人気企業で余裕がある企業はコロナが終息してから対面で最終面接を従来どおり実施するということになる。

16就活では8月選考/内定解禁、10月内定式という世にも奇妙な市場が作られ、企業も学生も大混乱して手当り次第内定を出して、学生が承諾をして落ち着いたタイミングで「内定承諾後辞退」をするというカオスな状態となった。

21就活もWEB最終面接の実施というこれまで注目されてこなかった点がカオスの要因になる可能性があることが分かってきた。

こんな時だから『就社から就職』の意識を

就活生からすれば『内定承諾後辞退』でも第一志望の企業に入社出来ることが一番なのは理解できるし、現実そのような行動に今年は多くの就活生がなるだろう。

そんな中でもで一歩立ち止まって考えたいポイントは整理しておきたい。

・自己分析就活ではなく、未来志向型の就活になっているか?(新しい就活

・その企業はどんな顧客に対して、どんな価値を提供してお金を誰から頂戴しているのか?そのお金を得る為に、社員はどんな能力が必要なのか?その能力は自分のキャリアの中で必要で市場価値としても今後必要になるものか?

・今やりたいことではなく、未来志向/Career Designの視点で「やるべき」を実現出来る環境なのか?

就活生も自宅で就活をしているわけで、情報が錯そうしたり、自分の中で絡み合ったりしてしまうこともこれから多くなると思います。そんな時は、コロナショックが明けた後の日本、世界の厳しい経済状況の中で自分はどんな力を身に付けて、社会にどんな価値を提供する企業の環境で「はたらく」のか?をじっくり考えてみると視点は広がり、リアルが見えて来ることでしょう。

がんばれ、就活生。

はたらくを楽しもう。

はたらクリエイティブディレクター

はたらクリエイティブディレクター パーソルホールディングス|グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクトCAMP|キャプテン、ベネッセi-キャリア|特任研究員、パーソル総合研究所|客員研究員、関西学院大学|フェロー、名城大学|「Bridge」スーパーバイザー、SVOLTA|代表取締役社長、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program|外部評価委員などを歴任。現在は成城大学|外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学|客員教授、デジタルハリウッド大学|客員教員などを務める。 ※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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