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「海外留学は就活スケジュールに不利になる説」の崩壊。今、海外留学生の救世主になるイベントとは?

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
海外留学は本当に就活スケジュールに不利になるのか?(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

日本人留学生は増加傾向

海外留学協議会(JAOS)は2018年12月、2017年の年間日本人留学生数は8万人弱と調査結果を発表した(国別で見ると資金面や認知度の変化でフィリピン留学が増加の反面、アメリカ留学が減少している)。

※留学渡航国別の日本人留学生数『海外留学協議会(JAOS)による日本人留学生調査2018』
※留学渡航国別の日本人留学生数『海外留学協議会(JAOS)による日本人留学生調査2018』

2013年に文部科学省が2020年をターゲットイヤーとして日本人の海外留学生倍増計画を目的として打ち出した「トビタテ!留学JAPAN」などの影響もあり、近年若者の中で海外留学は

「意識高い学生が行くもの」

「お金持ちの学生の活動」

「そもそも身近な話ではない」

など少し遠い存在であったものから、

「チャンスがあれば行きたい」

「まわりにひとりは誰か留学している」

という身近な存在へと意識の変化が起きている。資金面についても奨学金など学生の可能性を広げるツールが多様化していることも背景にある。

海外留学中に就活が終わってしまう?

一方で学生達の中で都市伝説のように囁かれるのは、海外留学のタイミングと就職活動のタイミングが重なるので就職活動には不利に影響してしまう。という噂。

大学2年生までの海外留学や短期海外留学であれば就活への影響は現時点ではないと言える(インターンシップの前倒しや企業の新卒採用戦略が大きく変化することがここ数年で予想されているので、この先はまた留学への影響は変わるかもしれない)。

ただ近年就職活動のスケジュールが変化したり、ルールが撤廃になったりと動きが激しい。それに伴い企業の採用選考が前倒しになり、海外留学から帰国すると大手やブランド企業の選考が終了しているというケースは実際に発生している。その結果、意図的に留年をして次年度で就職活動に勝負をかける学生は珍しくない。当然、留年は出来ないので帰国してまだ採用選考を継続している企業を探してその中でご縁を見つけて入社を決めるという話も良く耳にします。

そんな中、海外留学生に見解の変化が起きているようだ。

「ボスキャリ」が留学生達の救世主と言われるのはなぜ?

2018年11月アメリカボストンにてディスコ社が運営する「ボストンキャリアフォーラム」が開催された。この通称「ボスキャリ」が留学生達の中で救世主となっている。

そもそもボスキャリは毎年11月頃にアメリカボストンで3日間開催される日英バイリンガル向けの就職イベント。日本人留学生にとっては数少ない貴重な就活のチャンスとなり、帰国子女や交換留学生、長期インターンを探す学生も数多く参加している。企業は外資系コンサルや外資系投資銀行をはじめ、商社・日系金融機関・大手メーカー、日本で勢いのあるITやHR企業など総勢200社近くが参加。就職イベントでは珍しく開催中のわずか3日間で内定を貰える可能性があるというのも大きな売りとなっている。

アメリカで開催される日本の就職イベントに参加する海外留学生
アメリカで開催される日本の就職イベントに参加する海外留学生

これまで海外留学をすると日本での就職活動の時期がズレて不利になるという問題が起きていたが、ボスキャリの認知度が高まる中で、海外留学生の意識が変わって来たようだ。11月にボストンに出向き短期間で勝負をかけることで、留学中に日本にいる学生と同じ就職活動が出来るという捉え方だ。

実際に昨年11月のボストンにはアメリカ全土、アジア・ヨーロッパから数千人の学生が集まっている。中には日本の大学に在籍していて英語が出来ない学生までボスキャリに参加するケースもある。日本で大手・ブランド企業の選考を2か月頑張るよりもボスキャリの3日間に勝負した方が効率的、ライバルが少ないという意識なのだろう。

※ボスキャリに興味のある学生へのアドバイス※

ボスキャリはただ就活イベントに参加するという意識では内定は勝ち取れません。数か月前から自身のPRを可視化して企業から興味を持ってもらう必要があります。多くの参加企業は日本から数か月も前から現地で参加する学生を事前にスカウトして、TV面談をしてアメリカに向かいます。イベントが始まる前日に選抜された学生の懇親会が開催されたり、イベント中は毎晩イベント会場近くで懇親会が開催されます。そこに選ばれることが大前提で、その上でしっかり自身をPRして企業に活躍してくれそうな学生と印象付けないと現地での選考を通過することはありません。日本での採用選考よりも厳しい環境と思って参加した方が良いかもしれません。

海外留学で得た価値観、能力が就活や社会のスタートに大きく影響

昨今、企業が学生を評価するポイントは変化しつつある。どんな経験をして来たか?志望動機がしっかりしているか?ではなく学生時代にどんな価値観の変革、多様化を経験したのか?そしてどんな能力を身に付けたのか?を評価する企業が増えている。その中で海外留学はその経験ではなく現地で得た「価値観」や身に付けた「能力」が評価としてプラスになるのです。

海外留学は就活に不利になるという都市伝説は崩壊している今、留学に行けるチャンスがあるのであれば現地でどんな経験をするという目標ではなく、どんな価値観を得る、視野を広げる、能力を身に付けるという軸をセットして、そのために必要な経験が出来るようにプランすることが海外留学の本当の充実になるでしょうし、ボスキャリでも日本での就職活動でも企業からの評価に繋がるはずです。

はたらくを楽しもう。

はたらクリエイティブディレクター

パーソルホールディングス株式会社グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクト責任者、株式会社ベネッセi-キャリア特任研究員、株式会社パーソル総合研究所客員研究員、関西学院大学フェロー、名城大学「Bridge」スーパーバイザー等を歴任。現在は株式会社SVOLTA代表取締役社長、成城大学外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授、デジタルハリウッド大学非常勤講師、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program外部評価委員などを務める。※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施している。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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