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[高校野球]地方大会、これからが本番。ビッグ3の甲子園そろい踏みを見たい!

楊順行スポーツライター
(写真:岡沢克郎/アフロ)

 第105回全国高校野球選手権は、これから地方大会が佳境を迎える。注目は、2021年秋の明治神宮大会で1年生として活躍したスラッガー・ビッグ3だ。北から花巻東(岩手)・佐々木麟太郎内野手、広陵(広島)・真鍋慧内野手、九州国際大付(福岡)・佐倉侠史朗内野手。

 記憶にあるだろうか。21年秋の第52回明治神宮野球大会・高校の部。佐々木は国学院久我山(東京)との開幕戦で初回、弾丸ライナーを神宮の右翼席にぶち込んだ。この時点で、1年生ながら早くも高校通算48号。大谷翔平は高校の3年間で56本塁打したが、それをはるかにしのぐ超ハイペースで、昨秋では106本。今年3月には112号を放ち、過去最多といわれていた清宮幸太郎(早稲田実・現日本ハム)の記録を早々に超えた。5月中旬、沖縄市の招待試合で背筋を痛め、2週間ほど練習できなかったが、岩手大会突入までに140号超えを果たしている。

 1年の神宮大会時は、「中学時代、たまたま抽選で当たり(笑)、高橋由伸さんからリモートで指導を受ける機会があったんです。上からさばくようなバットの出し方を教わり、心がけています」と語っていたが、いまは構えたときのグリップの位置を低く修正。これでうまくタイミングを取れるようになり、対応力が上がったという。

前田悠伍(大阪桐蔭)を加えれば四天王

 佐倉は神宮大会の同じ日、1年生四番として登場。クラーク国際(北海道)戦の9回、ダメ押しのタイムリーを放つと、大阪桐蔭との準決勝では2回に先制のホームラン。敗れはしたものの、当時すでに183センチ106キロというパワーを見せつけた。

 この春の九国は福岡の4強止まりだったが、佐倉は4月のU18日本代表候補選手強化合宿に参加した。そこで真鍋のバッティングを見て、「自分より体重は軽いのに打球を飛ばすし、スイングが鋭い。パワーでいくより、タイミングをしっかり合わせれば打てる」とヒントを得たという。

 その真鍋も、1年秋の神宮大会は圧巻だった。花巻東と対戦した準決勝の2回、右翼席に3ラン(もっともこの試合、佐々木も8回に大会第2号の3ランを打っている)。真鍋は初戦でも3安打と大当たりで、中井哲之監督によると、「見てきたなかで、スイングスピードは歴代ナンバーワン」。入学直後、メジャー歴代最多762本塁打のバリー・ボンズにあやかり、"ボンズ"のニックネームをちょうだいしたのはよく知られている。

「中学時代から、水の重みを利用したトレーニング器具などでパワーをつけ、スイングスピードは150キロくらいです」

 と当時の真鍋。スイングスピードの高校生平均は120キロ前後というから、1年でのこれはなんともすごい。

 その神宮大会、準優勝した真鍋は3試合で15打数8安打6打点。ベスト4・花巻東の佐々木は10打数6安打でなんと9打点、同じ4強の九州国際大付・佐倉は9打数3安打2打点。そして3人とも、大舞台で一発を放っているのが大物感たっぷりだった。

 翌22年のセンバツでは、3人とも甲子園そろい踏みを果たし、さらに真鍋はこの春、佐倉は昨夏と2回の甲子園を経験。ただ昨センバツのみの佐々木も含め、甲子園ではまだいずれもノーアーチだ。1年生ビッグ3といわれた3人も、最後の夏。甲子園で豪華競演が見られるか。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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