だれかに似ている……。そうだ、踏み込んだ左足がちょっと突っ立ち気味のフォームは、山本由伸(オリックス)にどこか似ているのだ。東京オリンピックで金メダル獲得に貢献した、日本球界の大エース。ただ、素人としては、左足が突っ張るのは気になるところだが……ある社会人チームでコーチを務める元プロ経験者からは、こんなふうに聞いたことがある。

「あれは、いいんです。左足で止めたエネルギーを、目一杯上体に伝えるためですから。古くは、元阪急の山口高志さんがそうで、だからこそあれだけの速い球が投げられた」

 風間球打(明桜高)。最速157キロが売り物の右腕である。183センチ、81キロの体格は、山本の都城高時代より一回り大きい。

 夏の甲子園では、全国デビュー戦でその潜在能力を披露した。帯広農(北北海道)との雨中の初戦に先発すると、最速149キロをマークするなど4回を4三振で無安打無失点。結局ノーゲームとなり、大記録は夢に終わったが、驚くのは修正能力の高さだ。

「ちょっとマウンドがぬかるんでいたので」、左足のステップ幅をいつもより狭めて、制球を重視したのだ。雨が強まった3回からは、ノーワインドアップからセットポジションに切り替える。これには、帯広農・前田康晴監督も「指にかかったときのスピードはもちろんですが、カウント球もいろいろ考えながら投げるし、ここ、というときはビシッとくる。クレバーさを感じました」。

決してスピードだけじゃない

 3日後の仕切り直しでは、150キロをたたき出して10三振の2失点完投勝利も、本人は「60点です」と満足していない。それでも、"流しのブルペンキャッチャー"こと安倍昌彦さんは、「球速の報道ばかりが目立ちますが、変化球で緩急をつけられますし、ストレートを使わずに三振も奪える。決して球速だけで押す、力まかせのタイプではないですね」と評価する。

 だが、明徳義塾高(高知)との2回戦は、試合巧者の洗礼を浴びた。

「単なる待球だとすいすい行かれる。甘い球はしっかり打ち、ボールになる低めの変化球は絶対振るな。そして追い込まれたらファウルを打て」。馬淵史郎監督のそういう指示を受けた明徳打線は、ファーストストライクになかなか手を出さず、くさい球はファウルし、ボールになる変化球をきちんと見きわめる。初回は3人で攻撃を終わりながら、25球を投じさせた。

 高知大会決勝でも明徳は、ドラ1候補・森木大智(高知高)に8回で124球を投げさせ、マウンドから降ろしている。同様に球数のかさんだ風間は、6回でなんと139球を費やして2失点ながらマウンドを降りると、明徳打線が二番手以降をつかまえ、チームも敗れた。

「悔しい。ストレートだけでは甲子園で勝てないということを学びました。変化球の決め球を見極められて、真っすぐもカットされて苦しかった。まだまだ実力が足りません」

 6回まで8三振と実力の片鱗は見せたが、気になるのはこの試合では変化球でストライクが取れず、きっちり見きわめられたこと。プロ野球に精通している知人によると、「高校野球ではストライクゾーンがワイド。判定がより厳密になるプロでは、どんなに速い球を投げようが、まずは変化球でストライクが取れるようにならないと一軍では通用しません」。

 つまり、ストライクゾーンの甘い高校生を相手に、変化球でカウントを取るのに四苦八苦する精度だと、プロではますますストライクが入らなくなる。そうすると腕が振れず、せっかくのスピードも威力が半減する。プロ入りしたらそのあたりが課題になりそう、というわけだ。だが、明徳・馬淵監督はこうエールを送る。

「高校生で150キロを投げられるのは、それだけですごいこと。将来、頑張ってもらいたいですね」

かざま・きゅうた●明桜高●183cm81kg●右投左打