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私的興味の夏の甲子園!(12) ベスト8のうち、もっとも東が滋賀県勢なんて、過去にありました?

楊順行スポーツライター
1979年センバツ、牛島・香川のバッテリーで準優勝した浪商(現大体大浪商)(写真:岡沢克郎/アフロ)

 近畿勢の4強独占は大会史上初……など、「史上初」「○○年ぶり」が続出する異例の大会。そもそも7回の順延自体が異例で、個人的には「暑いねぇ……」と口にすることがない涼しさもそうだ。

 さて、4試合中3試合がサヨナラ決着と劇的だった準々決勝だが、関東勢が1校も8強に残れなかったのは1981年以来。8強のうち5校が近畿勢というのも大会史上初だ。で、これ、おそらくだれも気がついていないと思うけど、8強の一番東に位置したのが、近江(滋賀県彦根市)。過去大会の8強所在地の最東端としては、ややこしいけど史上もっとも西で、つまりそれだけ西高東低傾向が強いということだ。

 同一地区である近畿の4強独占は大会史上初だが、春なら過去に2例ある。まず、1939年センバツでは優勝・東邦商(現東邦・愛知)、準優勝・岐阜商(現県岐阜商)、島田商(静岡)、中京商(現中京大中京・愛知)の東海地区。79年センバツでは同じ並びで箕島(和歌山)、浪商(現大体大浪商・大阪)、PL学園(大阪)、東洋大姫路(兵庫)の近畿。もっとも、地区分け自体に意味がないといわれればそれまでだけど。

8強のうち近江がもっとも東なんて……

 で、準決勝の組み合わせが近江対智弁和歌山、京都国際対智弁学園(奈良)となり、がぜん注目されるのが智弁和歌山対智弁学園という、決勝での兄弟校対決の可能性だ。ここまでの戦いぶりから見れば、実現する確率は決して低くはない。

 過去、系列校同士の対戦は何度かあった。1972年春には、日大桜丘と日大三が決勝で激突。兄弟校というばかりではなく、同じ東京のチームとしてよく練習試合もしていた間柄で、この試合は日大桜丘が5対0で勝ち、優勝している。夏には、83年の東海大一(現東海大静岡翔洋)13対11東海大二(現東海大熊本星翔)、97年の佐野日大(栃木)2対1宮崎日大、99年の長崎日大5対0日大三(西東京)がある。

 そして2002年夏には智弁和歌山と智弁学園の対戦があり、このときは和歌山が7対3で勝った。18年センバツでは両者とも初戦を突破し、お互いに次の試合を勝てば準々決勝で再戦となるところだったが、智弁学園が惜敗して実現していない。また13年夏には、日大山形7対1日大三がある。

 日大三が3回も「兄弟ゲンカ」(しかもいずれも、兄貴分の日大三が負けている)をしているように、当然ながら、出場頻度の高い大学付属校の同士の対戦が多い。

 記憶に新しい今年の春には、東海大相模(神奈川)と東海大甲府(山梨)が1回戦で当たり、この試合にサヨナラ勝ちした相模が優勝までたどり着いている。甲府の村中秀人監督は相模のOBで、しかも相模は前任校。前任校と甲子園で対戦した監督はほかに、智弁学園から移った智弁和歌山で智弁と対戦した高嶋仁監督くらいしか思い浮かばない。さらに、前任校かつ母校との甲子園での対戦となると、経験したのは村中監督くらいだろう。

 はてさて和歌山と奈良、智弁対決は実現するのか。夏の決勝で兄弟校対決となれば、むろん史上初めてのことだ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は63回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて54季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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