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村上頌樹と山下舜平大が新人王に選出されたら大変なことだ!!

横尾弘一野球ジャーナリスト
パ・リーグは昨年まで、平良海馬ら入団2年目以降の選手が5年連続で新人王に。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

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 次なるファンの関心は、セ・パ両リーグの最優秀選手賞と最優秀新人賞(新人王)が誰になるかということだろう。ベストナインやゴールデングラブ賞を含め、これらの賞は記者投票で決まるのだが、近年の新人王には興味深い傾向がある。入団1年目の文字通り新人、ではない選手の受賞が増えているのだ。

 新人王は現在、以下の項目を満たす選手が選考の対象となる。

●支配下選手に初めて登録されてから5年以内の者

●海外のプロ野球リーグに参加した経験がない者

●投手として前年までの一軍での登板イニング数が30イニング以内、打者として前年までの一軍での打席数が60打席以内の者

 だから、入団1年目ではない選手が選出されることもあるのだが、新人王が制定された1950年から昨年までの73年間で、2年目以降の選手が受賞したのはセ・リーグが11人、パ・リーグが18人と限られている。ただ、最近10年間を見てみると、セ・リーグは2019年の村上宗隆(東京ヤクルト)だけなのだが、パ・リーグは6人と急増しており、2018年の田中和基(東北楽天)からは高橋 礼(福岡ソフトバンク=来季から巨人)、平良海馬(埼玉西武)、宮城大弥(オリックス)、水上由伸(埼玉西武)と5年連続だ。

 そうした傾向を踏まえて、今季の新人王候補を見ていく。セ・リーグは、日本シリーズでも第1戦の先発を任された村上頌樹(阪神)が筆頭。智辯学園高から東洋大を経て、2021年にドラフト3位で入団し、5月30日の埼玉西武戦に先発で初登板。だが、3回途中までに5失点で降板すると、8月28日の広島戦でも3回5失点と結果を残せなかった。ただ、ウエスタン・リーグでは10勝1敗、防御率2.23で最多勝利、最優秀防御率、最高勝率の投手三冠に輝く。2022年もウエスタンでは目立つ数字を残すも一軍登板はなく、危機感を抱いて臨んだ3年目の今季は、10勝6敗、防御率1.75でタイトルも手にしている。

 一方のパ・リーグは、オリックスの開幕投手を務めた山下舜平大が有力だ。2021年にドラフト1位で入団し、1年目はシーズン通してファームで先発を経験。2年目は腰痛で戦列を離れることもあったが、着実にスキルアップして日本シリーズではベンチ入り(登板はなし)も果たす。そして、今季は中嶋 聡監督から「初登板はどうせ緊張するのだから、開幕戦でもいいんじゃないか」と先発を任されると、6回途中まで1失点の好投。8月下旬に腰の張りで登録を抹消され、第3腰椎分離症の診断でポスト・シーズンの登板はなかったものの、16試合に登板して9勝3敗、防御率1.61をマークしている。

セ・パともに3年目の選手なら史上初

 簡単にまとめた実績でわかるように、村上も山下も3年目だ。過去に、セ・パともに2年目以降の選手が新人王だったのは1951、2008、2019年と3回しかない。ちなみに、1965年までは入団1年目の日本人選手に限られたが、1951年だけは前年入団の選手も対象とされた。その1951年にパの新人王だった蔭山和夫(南海)は前年も規定打席に達しており、特例がなければ受賞できなかった。そうすると、セは3年目の山口鉄也(巨人)、パは2年目の小松 聖(オリックス)だった2008年、セは村上宗隆、パは高橋 礼と、ともに2年目が受賞した2019年の2回となる。

 2年目以降の選手がセ・パともに選出されるのは4年ぶり3回目なのだが、どちらも3年目なのは史上初というレアなケースとなる。そして、先にも書いたように、パは6年続けて2年目以降の選手が受賞となる。では、ルーキーが頭角を現していないのかと言えば、2019年以降のセ・リーグでは新人王と同等の活躍をした選手に送られる新人特別賞を近本光司(阪神)、戸郷翔征(巨人)ら8人が受賞している。一方のパ・リーグでは、2021年に伊藤大海(北海道日本ハム)が新人特別賞に選出されたが、総合的に見てルーキーをじっくり育てる傾向にはあるようだ。

 最後に、村上と山下に対抗する選手も見ておこう。セでは、秋広優人(巨人)が121試合で打率.273、10本塁打41打点でブレイクした。ちなみに、秋広も2021年ドラフト5位の3年目だ。ルーキーでは、門脇 誠(巨人)が126試合で打率.263、3本塁打21打点11盗塁、森下翔太(阪神)は94試合で打率は.237だが、10本塁打41打点で優勝に貢献している。そして、パでは渡辺翔太(東北楽天)が51試合に登板して8勝3敗1セーブ25ホールド、防御率2.40と健闘している。さて、一生に一度の栄えある新人王に輝くのは誰か。11月28日のNPB AWARDS 2023で発表される。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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