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いよいよMLBオールスターゲーム!! 過去最高のMVPは誰だ

横尾弘一野球ジャーナリスト
昨年のオールスターゲームでレッドカーペットを歩く大谷翔平。今年はMVPにも期待。(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)がア・リーグ指名打者部門でファン投票選出されたMLBオールスターゲームは、現地時間7月11日にアメリカ・シアトルのT-モバイル・パークで開催される。大谷にはMVPを狙える活躍を期待したいが、日本人選手でMVPに輝いたのは、2007年のイチロー(シアトル・マリナーズ)だけだ。

 サンフランシスコのAT&Tパーク(現オラクル・パーク)が舞台となった試合に、イチローはア・リーグの一番センターでスタメン出場する。日本人選手はほかに、ロサンゼルス・ドジャースの斎藤 隆が監督推薦、ボストン・レッドソックスの岡島秀樹が最終投票で選出されていた。

 先制点はナ・リーグが奪う。1回裏にリードオフのホセ・レイエス(ニューヨーク・メッツ)が中前安打を放つと、すかさず二盗。二死後に四番のケン・グリフィJr(シンシナティ・レッズ)が中前に弾き返してレイエスが生還する。対するア・リーグはチャンスを築くも得点に結びつけられなかったが、5回表一死一塁からイチローが右中間へ大きなフライを打ち返すと、フェンスに当たった打球が不規則に跳ね返り、その間にイチローは俊足を飛ばしてダイヤモンドを一周。

2007年は、イチローが勝ち越しのランニング本塁打でMVPに選出された。
2007年は、イチローが勝ち越しのランニング本塁打でMVPに選出された。写真:ロイター/アフロ

 このランニング本塁打で逆転したア・リーグは、続く6回表にカール・クロフォード(タンパベイ・レイズ)のソロ弾、8回表にはビクター・マルチネス(クリーブランド・インディアンス)の2ラン本塁打で計5点を挙げ、ナ・リーグの反撃を何とか凌いで5対4で逃げ切り、3安打2打点のイチローがMVPに選出される。なお、ランニング本塁打は78回目のオールスターゲームで初だった。

目を見張る強肩で手にしたMVP

 さて、今年で93回を迎えるオールスターゲームで最高のMVPは誰か。最近では2014、15年にマイク・トラウト(ロサンゼルス・エンゼルス)が2年連続で選出されるなど、その時代を代表する選手の名前が並んでいる。ただ、どんな素晴らしいピッチングを見せるか、どれほどインパクトのあるバッティングを披露したか、というMVPを、圧倒的な守備力で手にした選手が忘れられない。

 1979年のオールスターゲームにファン投票選出され、ナ・リーグの二番ライトでスタメン出場した右投げ左打ちの外野手デーブ・パーカー(ピッツバーグ・パイレーツ)である。高校を卒業した1970年にパイレーツへ入団し、1973年にメジャー昇格を果たすと、1975年にはレギュラーに定着して打率.308、25本塁打101打点をマーク。1977、78年は2年続けて首位打者に輝き、1978年にはMVPに選ばれる活躍でワールド・シリーズ優勝にも貢献した。

 そうした勝負強い打撃から「コブラ」の愛称で恐れられたパーカーは、196cm・104kgの恵まれた体格で身体能力にも優れ、特に超のつく強肩で1977年に26補殺。ゴールドグラブ賞を1979年まで3年連続で手にした。その1979年のオールスターゲームはシアトルのキングドームで行なわれ、両軍10安打の熱戦を7対6でナ・リーグが制した。

 パーカーは3打数1安打1打点とバットではまずまずだったが、自慢の強肩が冴え渡る。5対6とリードされていた7回裏に、ア・リーグの四番ジム・ライス(ボストン・レッドソックス)が放ったフライを見失い、ライト線に落ちるヒットにしてしまったものの、人工芝で大きくバウンドした打球をつかむや、三塁を狙ったライスをベースの手前でアウトにする。

 さらに、同点に追いついた直後の8回裏には、二死二塁からグレイグ・ネトルズ(ニューヨーク・ヤンキース)がラインドライブの右前安打を放つと、ワンバウンドで捕球したパーカーは定位置のやや後ろからホームへダイレクトで返球し、ブライアン・ダウニング(カリフォルニア・エンゼルス)に勝ち越しの生還を許さなかった。そうして、ナ・リーグは9回表に決勝点を奪ったのだから、パーカーがオールスター史上初となる守備でMVPに選出されたのも納得できるだろう。

 では、今年の大谷がパーカーのような球史に残るMVPに輝くなら……それはやはり、パワーとスピードを駆使したサイクル安打ではないだろうか。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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