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阪神の大竹耕太郎が自己最多の6勝目!! 現役ドラフト序盤戦の通信簿

横尾弘一野球ジャーナリスト
甲子園を沸かせ、ドライチで東北楽天へ入団したオコエ瑠偉は巨人で好スタートしたが。(写真:岡沢克郎/アフロ)

 5月27日に甲子園球場で行なわれた巨人との7回戦に先発登板した阪神の大竹耕太郎は、1回表に一死一、二塁のピンチに立たされるも、四番の岡本和真を右飛、大城卓三を空振り三振に仕留め、尻上がりの好投でフォスター・グリフィンとスコアレスの投手戦を繰り広げる。果たして、7回までを無失点に切り抜けると、その裏に打線が3点を援護。3対2で逃げ切り、7回を6安打7奪三振の無失点だった大竹は6勝目を手にした。2019年には5勝を挙げているが、早くも自己最高を更新する活躍に、ファンからは「阪神に来てくれてありがとう」という声がかけられている。

 周知の通り、大竹は昨年から導入された現役ドラフトで福岡ソフトバンクから移籍した。出場機会に恵まれない選手が埋もれてしまうのを防ぐため、メジャー・リーグのルール5ドラフトを参考に議論を重ね、ようやく実施された制度で移籍した12名の中では、現時点で断トツの活躍を見せている。

 熊本県の古豪・濟々黌高で甲子園の土を踏み、早大に進学した左腕は2年春にリーグ優勝と3年ぶりの全日本大学野球選手権大会制覇に貢献。プロからも注目されたが、3年時からは故障に悩まされ、プロ入りはしたものの福岡ソフトバンクの育成4位指名だった。

 それでも、ウエスタン・リーグで8勝0敗、防御率1.87と圧倒的な数字を叩き出して7月下旬に支配下登録を勝ち取り、初先発で白星を手にするなど3勝を挙げる。翌2019年にも5勝をマークしたが、2020年に左ヒジの肉離れで開幕一軍を逃すと、分厚い戦力の中でなかなか目立つ実績を残せずにいた。

 それが、現役ドラフトによって新天地で迎えた今季は、開幕から先発ローテーションの一角を占め、7試合に先発して6勝0敗と、チームの勝ち頭である。今季は、3年目の村上頌樹も台頭したが、エースの青柳晃洋が不振で一軍登録を抹消され、西 勇輝もややもたついているだけに、それでも阪神が首位を快走できているのは大竹の活躍があってこそだろう。

力はあるもののチーム事情で出場機会に恵まれなかったのか

 また、野手に目を移せば、5月27日の横浜DeNA7回戦でトレバー・バウアーにソロ弾2発を見舞うなど4打数4安打2打点と打ちまくり、打率.342でセ・リーグ4位につけている中日の細川成也が光る。

 明秀学園日立高のスラッガーだった細川は、2017年にドラフト5位で横浜DeNAへ入団。ルーキーイヤーはファームでじっくり力をつけ、シーズン終盤の10月3日に一軍の舞台に立つと、初打席で豪快な3ラン本塁打を放つ。驚かされたのは、翌4日にも一発を放ち、高卒新人のデビューから2試合連続本塁打というプロ野球初の記録をマークしたことだ。

 このように、将来のクリーンアップ候補と期待されるも、確実性を高めることができず、一気のブレイクを果たせなかっただけに、現役ドラフトによる移籍は本格化への大きなきっかけとなっている。

 この現役ドラフトで最も注目されたのは、東北楽天から巨人へ移籍したオコエ瑠偉だろう。類稀な身体能力とパワーを備え、ドラフト1位で入団した2016年の開幕戦から一軍出場を果たすも、なかなか定着することができず、次第にチームの中でも居場所をなくしたような状態になっていた。

 大逆襲するためには、環境(チーム)を変えるのが一番だと言われていただけに、現役ドラフトによる移籍は大きなチャンスと思われ、実際にオコエもはつらつとプレー。今季は3月31日の中日との開幕戦に一番レフトでスタメン出場を果たす。

 ただ、23試合で打率.247、2本塁打5打点だった5月8日に一軍登録を抹消される。原 辰徳監督によればイースタンで出場機会を増やす意図もあるようで、どんなタイミングで再び一軍から声がかかるか注目したい。

 今回の現役ドラフトでは、各球団の編成担当者から「チームが変われば台頭する可能性が大きい」と評されていた選手が、その見立て通りに活躍しているという印象が強い。そして、力はあるもののチーム事情で出場機会に恵まれなかったのか、選手本人の意識や自覚もあって頭角を現わすこと、あるいは好成績を継続することができていないのか。現役ドラフトの1期生は、その指標にもなるような気がする。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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