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エスコンフィールドHOKKAIDOは日本の野球を変える!!

横尾弘一野球ジャーナリスト
エスコンフィールドのシートは、どの位置からでも試合を存分に楽しむことができる。

 3月30日の開幕日に、北海道日本ハムの新しい本拠地・エスコンフィールドHOKAAIDOへ足を運んだ。東北楽天との開幕戦は午後6時30分にプレイボールだったが、球場を含むFビレッジは午前中から開放されており、最寄りのJR北広島駅から5分ほどでFビレッジを結ぶシャトルバス(片道200円)は午後12時の時点で満員。開場3時間前までは30分毎の運行だから、運転手が乗り切れなかった人たちに申し訳なさそうに「30分お待ちください」とアナウンスする。

 ちなみに、このバス通り沿いを徒歩で向かうと20分ほどだが、長い上り坂なので注意が必要だ。また、開場時はファンが思い思いの時間に現地入りしたが、一斉に退場する試合終了後はパニックに近い混雑となった。自動車の渋滞はやむを得ないとしても、公共の交通機関でアクセスするファンの利便性は早急に解決する必要があると感じた。

 そうして、いくつかの課題はあるものの、Fビレッジには圧倒された。野球場だけでなく、生活やレジャーに密着した地域開発の中に野球も含まれているというイメージで、ファイターズの試合を観戦する目的以外の人も心地よく過ごすことができるエリアになっている。それはつまり、野球に興味のない人が足を運び、ファイターズのファンになる可能性もあるということだ。

どんな楽しみ方にも応えてくれる生き物のような空間

 球場内に入ると、真っ先に感じたのは「生き物のようだ」ということ。近代的な野球場という“器”としてだけなく、「ここで、あなたはどう楽しみますか?」と問いかけられているような、いくつもの楽しみ方に応えてくれるイメージが湧いた。実際、プレイ・フィールドで遊ぶ親子がいたり、球場内や近隣の施設でグルメを楽しむ人がいたり、アートに触れられるミュージアムを訪れる人がいたり……。

球場の外周には、子供たちが遊べる施設がいくつもある(左上)。タワーイレブン2階にある革新的なミュージアム(右上)。北広島駅からのバス通りは長い上り坂(右下)。球場内の飲食店は充実している(左下)。
球場の外周には、子供たちが遊べる施設がいくつもある(左上)。タワーイレブン2階にある革新的なミュージアム(右上)。北広島駅からのバス通りは長い上り坂(右下)。球場内の飲食店は充実している(左下)。

 1試合に相当する3時間程度は、野球を観戦していなくてもあっという間に過ごせてしまう空間ゆえ、若い世代や親子連れを中心に口コミでも魅力が伝わっていくだろう。率直な感想として、エスコンフィールドHOKKAIDOは野球の楽しみ方を進化させ、野球に興味のない人たちの印象を変化させ、大きく言えば日本の野球を変えていくパイロットになるだろう。

 さて、肝心な野球はどうか。デーゲームでもナイトゲームでも気持ちよく観戦でき、恐らくどのシートでも十分に満足できるのではないか。だからこそ、ファイターズがどんな戦いを見せてくれるのかに期待を寄せたい。惜しくも開幕戦には敗れたものの、4月1日の第2戦は延長10回裏に清宮幸太郎選手の右前安打でサヨナラ勝ち。新本拠地での初勝利を挙げた。ただ、第3戦も1対2とシブい展開で落としたように、投手陣は踏ん張っているものの打線にエンジンがかからない。

 千葉、大阪、福岡とビジターが続いたあとに戻ってくる4月14日からの埼玉西武との3連戦では、投打にしっかりと歯車が噛み合った試合運びを見せてもらいたい。この近代的な空間が強いファイターズのスイートホームであってこそ、日本の野球はいい方向に発展していくはずだから。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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