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トヨタ自動車が緊迫の投手戦を制する【第46回社会人野球日本選手権大会デイリー・リポート6】

横尾弘一野球ジャーナリスト
トヨタ自動車の渕上佳輝(左)とTDKの小木田敦也(右)は互いに持ち味を発揮した。

 第46回社会人野球日本選手権大会6日目は、一回戦を締め括るトヨタ自動車とTDKの1試合のみ。トヨタ自動車は、5月のベーブルース杯大会で最高殊勲選手賞を手にした渕上佳輝、TDKは昨年の都市対抗出場に貢献し、ドラフト候補と評される小木田敦也が先発する。

 1回裏のTDKは安打と四球で二死二、三塁とするが、渕上は丁寧な投球で五番の深江大晟を右飛に仕留める。4回表、トヨタ自動車は二死から四番の中村健人が二塁打を放ち、続く北村祥治が初球を狙いすまして中前に打ち返すも、中村は北畠栞人の好返球で間一髪タッチアウトに。その裏、TDKは二死三塁で飯野周太が一塁線にライナーを放ったが、樺澤 健がしっかりとキャッチ。ともに好守も披露して、先取点は遠く思えた。

 勝敗を分けたのは8回だった。トヨタ自動車は二死から代打の逢澤崚介がセンターへ打ち上げると、北畠が靄の中で目測を誤る。ダイビングキャッチを試みた北畠のグラブからボールがこぼれると、逢澤は一気に三塁へ。その直後、樺澤がショートの右を抜いて逢澤を迎え入れる。どうしてもほしかった先取点は、普段から実践しているスキのない走塁から生まれた。

 その裏のTDKも、二死から植村祐介が二塁手のグラブを弾くライナーで出塁。続く青木龍成はレフトへ打ち上げたが、捕球直前にややふらついた新人の坂巻尚哉が落球してしまう。植村は一気に三塁を蹴るが、坂巻はホームへワンバウンドで返球し、植村はタッチアウトになる。坂巻は前の回に守備交代でライトに入り、この回からレフトにまわっていた。しかも、TDKの名手・北畠が目測を誤るような状況なのだ。それが落球の言い訳にはならないが、落ち着いた処理と返球で致命的なプレーになるのを逃れた。

 そうして、9回裏は佐竹功年が3者凡退に抑え、トヨタ自動車が虎の子の1点を守った。攻守にわたる力のみならず、相手のミスにはつけ込み、自らのミスは最小限に食い止めるという姿勢が、緊迫した勝負では生きることをあらためて感じさせられた。

二回戦までのインターバルも大きなカギとなる

 さて、これで一回戦16試合が終わり、二回戦以降は7月9日から京セラドーム大阪で行なわれる。例年の通し日程なら、トーナメント表の右側に入ったチームは試合間隔が過密なため、先発投手のやりくりに頭を悩ますところだ。しかし、今回は雨天予備日が4日間設定されており、結果的に順延がなかったため、しんがりのトヨタ自動車でも1週間のインターバルがある。

 つまり、どのチームもエースの連続先発が可能で、それが二回戦の勝敗、勝ち上がったチームのその先の戦いにも大きく影響するはずだ。そんなイレギュラーな大会を制するのはどこか。ドラフト候補のパフォーマンスとともに、注目していきたい。

(写真提供/小学館グランドスラム)

【7月9日の対戦カード】

◆二回戦

9:00 NTT東日本×ENEOS

13:00 日本製鉄広畑×東邦ガス

17:00 三菱重工East×日本通運

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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