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大阪ガスは2年越しの連覇へ完封発進!!【第46回社会人野球日本選手権大会デイリー・リポート5】

横尾弘一野球ジャーナリスト
大阪ガスの河野 佳は、全国の舞台で初先発ながら5安打シャットアウト勝利を挙げた。

 第46回社会人野球日本選手権大会5日目は、第1試合に前回優勝の大阪ガスが登場、2年越しとなる大会連覇に向け、締まった試合を展開した。

 先発の河野 佳は、広陵高から入社して2年目の19歳だが、すでに昨年の都市対抗で登板し、今季も安定感のある投球を続けている。質、量ともに豊富な投手陣から一回戦の先発を任されるとは、前田孝介監督の期待も大きいのだろう。そして、河野はその期待を上回ると言っていい快投を見せた。

 1回裏は二死から日本製鉄東海REXの三番・吉位翔伍に二塁打を許すも、勝負強い主砲の加藤辰祐を空振り三振に打ち取る。「実戦で使うのは初めて」というカットボールを巧みに織り交ぜ、2回以降は自分のペースでアウトを積み重ねる。

 そんな河野の好投に応えたい打線は、日本製鉄東海REXの林 尚克監督が好調さを買ったという新人の孕石幸寛に序盤は翻弄される。しかし、4回表二死一塁から、こちらも新人の三井健右が右中間を真っ二つに割る二塁打で先制。追加点はなかなか奪えなかったものの、河野はスキのない投球で終盤を迎える。

 1点差で最終回は、さすがの河野でも重圧を感じるのでは思われたが、9回表に3四球で一死満塁になると、古川昂樹と代打・山川晃汰の連打で3点を追加。河野はその裏も3者凡退に斬って取り、119球で5安打6奪三振の完封勝利をマークした。完敗したとはいえ、日本製鉄東海REXも若手が力をつけている。この経験を生かして、都市対抗予選でも代表権を手にしてもらいたい。

西部ガスは正面突破でJFE東日本を上回る

 第2試合では、西部ガスが昨年の都市対抗でベスト8に進出した自信を攻守に表現し、2019年の都市対抗王者・JFE東日本を圧倒した。

 1回表に西部ガスが二死満塁を無得点で終えると、その裏にJFE東日本も一死二、三塁を逃す。そうして3回までをスコアレスで終え、先制点の持つ意味がより大きくなった4回表だった。先頭の竹松瑞輝がレフトへ二塁打を放つと犠打で進め、ルーキーの安永元也が右前に運んで1点を先制する。

西部ガスの主将を務める井手隼斗は、4安打2打点の活躍で日本選手権初勝利に貢献した。
西部ガスの主将を務める井手隼斗は、4安打2打点の活躍で日本選手権初勝利に貢献した。

 これで勢いをつけた西部ガスの打線は、続く5回表にも三番の井手隼斗、四番の代打に起用された米澤健太郎の連続タイムリーで2点を加える。6回裏には守りのミスが絡んで1点を献上したが、7回表には5安打を集めて3点、8回表にも井手の三塁打などで2点を挙げ、JFE東日本のお株を奪う攻撃力で8対1と大きくリードする。

 また、先発の髙椋俊平が6回を1失点に抑え、村田 健、大畑 蓮への継投も決まり、西部ガスは昨年の都市対抗に続いて日本選手権でも初勝利を挙げた。ここからの快進撃はなるか注目したい。

JR四国は三菱重工Westのエース・森 翔平を攻略

 第3試合には、今シーズンのドラフト戦線で社会人ナンバーワン左腕と評される三菱重工Westの森 翔平が先発。しかし、JR四国の打線がその立ち上がりに襲いかかる。1回裏に先頭の笹田 仁が140キロのストレートを左前に運ぶと、二番の高木ちからは、バントをファウルして1ボール2ストライクと追い込まれたが、142キロを右前に。ランエンドヒットで一、三塁となる。

 さらに、自身もドラフト候補に挙げられている水野達稀が、1ボールからの141キロを逆らわずに左前へ。会心の3連打で先制すると、三好大輝の中犠飛で2点目も奪う。速球派投手が揃う三菱重工Westとの対戦が決まってから、速いストレートへの対応力を磨いてきたという取り組みが奏功する。

 また、初回に3つの三振を奪った山本 凌は、伸びのあるストレートを軸に、三菱重工Westの打者に自分のスイングをさせない。4回表に新人の佐藤悠輝に一発を許すも、1点のリードを終盤まで守る。

 地元開催で負けるわけにはいかない三菱重工Westも、8回表二死から代打の松原匡志が四球を選び、代走の湯口郁実が二盗に成功。このチャンスにリードオフの根来祥汰が三遊間を割って同点とし、うちあぐねていた山本を降板させる。

 7回からリリーフした八木 彬も力投し、流れは三菱重工Westに傾きかけたかと思われた9回裏……。先頭の水野が1ボールから高目のストレートを振り抜くと、打球は大きな放物線を描いてライトスタンドへ。

サヨナラ本塁打を放ち、笑顔でチームメイトの出迎えを受ける水野達稀(JR四国=中央)。
サヨナラ本塁打を放ち、笑顔でチームメイトの出迎えを受ける水野達稀(JR四国=中央)。

 水野が「頭が真っ白になった」と振り返る一発で、JR四国は劇的なサヨナラ勝ちを収めた。

(写真提供/小学館グランドスラム)

【7月4日の対戦カード】

9:00 トヨタ自動車×TDK

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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