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いよいよ開幕するプロ野球!! パ・リーグの見どころはここだ

横尾弘一野球ジャーナリスト
秋山翔吾が抜けた埼玉西武でブレイクが期待される川越誠司。新戦力の台頭が楽しみだ。

 昨年の王者・埼玉西武はメットライフドームに北海道日本ハムを迎え、オリックスは京セラドーム大阪で東北楽天と激突。福岡ソフトバンクはペイペイドームで千葉ロッテと対戦するパ・リーグ開幕戦は、いずれも6月19日の18時にプレイボールだ。

 今季のパ・リーグは、開幕カードこそ3連戦で行なわれるが、その後、7月19日まで発表されているカードはすべて火曜日からの6連戦。未消化試合を組み込むシーズン終盤でも経験はないだろう同じ相手との6連戦が、ペナント争いにどう影響するか興味深い。

 リーグ2連覇を成し遂げながら、クライマックスシリーズに敗れている埼玉西武は、守護神の増田達至、セットアップの平井克典と、フル回転を続けたリリーバーが一定の休養を取れたのが大きい。やや不安のあった投手陣を効果的に援護した打線では、シンシナティ・レッズ入りした秋山翔吾の穴をどう埋めるか。外野は新外国人のコーリー・スパンジェンバーグ、金子侑司、木村文紀に加え、練習試合で2本塁打の川越誠司ら若手が必死に定位置獲りを目指している。そうしたポジション争いが、1980~90年代の黄金時代を築き上げたように、競争力が反映するチーム力を3連覇につなげ、今年こそ日本シリーズに進出したい。120試合に短縮されたペナントレースで、主砲の山川穂高はどれくらい本塁打をマークできるか。

4年連続日本一を目指す福岡ソフトバンクでは、今季も左腕の古谷優人ら若手が台頭しそうだ。
4年連続日本一を目指す福岡ソフトバンクでは、今季も左腕の古谷優人ら若手が台頭しそうだ。

 過去10年間で6回日本一になっている福岡ソフトバンクは、育成選手を台頭させる環境や手腕によって12球団一の選手層を誇るが、ここ2年は主力の故障もあってペナントを逃している。今季も甲斐野 央が右ヒジ痛で戦列を離脱し、故障ではないものの、新型コロナウイルスによる入国制限でアルフレド・デスパイネとジュリスベル・グラシアルの合流は遅れる見通し。直近の練習試合で不安は感じさせなかったが、得点力にどう影響するかは気になるところだ。投手陣は、特に7月あたりまでは先発に無理をさせず、継投で白星を拾っていくのではないか。質、量ともに豊富なブルペンでは、左腕なら4年目の古谷優人、右では3月16日に支配下登録された尾形崇斗の活躍に期待したい。

 常勝を目指している東北楽天は、新たに就任した三木 肇監督がコツコツと戦力を整備しているという印象。昨年の3位を上回ると見立てている野球評論家も少なくなく、開幕直後にどんな滑り出しを見せるのか楽しみである。浅村栄斗を不動の四番に据える打線は、千葉ロッテからフリー・エージェント移籍した鈴木大地、銀次、島内宏明ら安定感のある左打者をどう並べるか。劣勢を覆す一発は、ジャバリ・ブラッシュ、ゼラス・ウィラー、背番号を9に変えたステフェン・ロメロと外国人の仕事になる。昨年は2ケタ勝利がいなかった先発投手は、開幕を担うだろう則本昂大の逆襲、ストッパーから転向した松井裕樹、長身の弓削隼人ら左腕の躍進、岸 孝之や涌井秀章のベテランの踏ん張りでパ・リーグ屈指の陣容になる。

同一カード6連戦を上手く戦うチームが上位に

 若手にシフトしている千葉ロッテは、勢いに乗ればどこまでも突っ走りそうな反面、痛い負けを喫すると黒星の蟻地獄に落ちそうな脆さも見え隠れする。ゆえに、6連戦の影響を最も多く受けそうなのだが、まずは敵地で福岡ソフトバンクと3連戦に臨み、そこから6連戦が続く。開幕カードに石川 歩、種市篤暉、美馬 学が先発すると、この3人は次の週から6連戦の後半に先発となる。カードの頭は二木康太、小島和哉、岩下大輝ら若手が先発を担うだけに、ここでの勝敗が順位に大きく関係してくるはずだ。野手でもブランドン・レアード、レオネス・マーティン、井上晴哉の一打で1点でも多く奪うためには、上位をどう組むかがカギになる。開幕時は福田秀平、荻野貴司、角中勝也と並べるのが理想的か。

 北海道日本ハムは、徹底したドラフト戦略で豊かな将来性を備えた選手が揃っており、栗山英樹監督も若手や新たな戦術を積極的に用いる。それで2016年には日本一にも輝いているが、魅力的なチームカラーが定着しないのは玉に瑕だ。負けも覚悟して若手を起用するだけでなく、厳しい競争で力をつけた選手たちで勝ち進む戦いも見たい。最多勝利の有原航平を筆頭に、ルーキー左腕の河野竜生もローテーション入りしそうな先発投手では、杉浦稔大の一本立ちにも期待がかかる。打線は西川遥輝、大田泰示、近藤健介の上位が相手バッテリーを悩ますだろう。四番の中田 翔に続き、五・六番に入る打者の数字で得点や勝敗が変わってくる。ビジターが続く開幕からの9試合を勝ち越せば、いい波に乗れるのではないか。

 オリックスの西村徳文監督は、最高勝率を手にした山岡泰輔を筆頭に、田嶋大樹、山本由伸と期待の3投手を先発ローテーションの頭に配し、打線ではT-岡田を上位に入れて相手バッテリーにプレッシャーをかける。千葉ロッテ時代に日本一を経験した指揮官が、長く優勝から遠ざかるチームに変革を求め、定石だけに止まらない発想や選手起用で闘おうとする方針に、どこまで選手たちが応えてくれるか楽しみである。特に、ポイントゲッターを担う中川圭太、攻守に確実性を高めた大城滉二にはチームを引っ張る姿勢を見せてもらいたい。そして、リリーフ投手や途中出場する野手には、一球、ワンプレーで高い集中力を発揮し、勝負の流れを引き寄せてほしい。

 昨年Bクラスのチームが開幕ダッシュを決め、6連戦を上手く戦ってくれれば、ペナントレースも最後までわからない展開になるだろう。開幕直後は打線のつながり、夏場からは投手陣の踏ん張りがポイントになる。さぁ、プロ野球のある日常が戻ってくる。まずは、応援にかき消されない“野球の音”を愉しもう。

(写真提供=小学館グランドスラム)

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野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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