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ドラフト候補が真価を問われる舞台・第90回都市対抗野球大会二次予選が開幕

横尾弘一野球ジャーナリスト
昨年の近畿二次予選を勝ち抜いた時の大阪ガス。日本一への道もここから始まった。

 第90回都市対抗野球大会の各地区二次予選が、5月16日のわかさスタジアム京都と明石トーカロ球場で幕を開ける。今回は90回の記念大会で、通常の32から4チーム増(東北、東海、近畿、九州に各1)の36代表が東京ドームで日本一をかけて戦うが、順調ならば6月10日の近畿第六代表決定戦ですべてのチームが出揃う。その注目ポイントを挙げておこう。

 北海道は、昨年創部した北海道ガスが初出場を果たすか。昨年の日本選手権最終予選に初陣で初勝利を挙げ、4月の四国大会では道外のアークバリアからも白星と、順調に実績を積み重ねている。新人で打線の軸を任される高橋謙太のバットが炸裂するか。

 きらやか銀行やトヨタ自動車東日本の台頭で混戦の東北は、投手力が安定しているチームに分がある。5月の東北大会で準優勝した日本製紙石巻、投打にバランスのいいJR東日本東北は復活出場を狙う。

 北関東、南関東、北信越は都道府県単位の一次予選中だが、東京は二次予選の組み合わせが発表されている。日立市長杯大会優勝の鷺宮製作所、長野県知事旗大会準優勝のNTT東日本は一回戦でクラブチームと対戦するが、企業6チームの力は拮抗しており、どこが代表になっても不思議ではない。ただ、今年は埼玉県営大宮公園球場も使用するため、土のグラウンドで守備が乱れたチームは苦しくなるだろう。

 西関東は、東芝、三菱日立パワーシステムズ、JX-ENEOSのうち1チームを落とす戦い。3年間、東京ドームから遠ざかっているJX-ENEOSが伝統の粘り強さを発揮できるかがカギになる。

メンタル面の成長を確認できる“大人の甲子園予選”

 東海は5月19日から18日間、近畿は16日から14日間の長丁場だけに、チームをどれだけいい状態でキープできるかが結果を大きく左右する。東海は静岡大会を制した王子、長野県知事旗大会優勝のトヨタ自動車を筆頭に、JABA大会で好成績を挙げたチームが多く、例年以上に厳しい戦いになるはず。第一代表を勝ち取るには4連勝、最大9試合を戦い抜いて7つのイスを目指す。近畿も同じような流れだが、昨年の日本一・大阪ガスが推薦出場のために予選には顔を見せず、さらに1枠増ゆえ、代表権獲得は楽ではないものの厳しさも少ないか。そんな中で、14年ぶりに復活したミキハウス、初出場を狙うカナフレックスがどんな試合運びを見せてくれるか楽しみだ。

 中国では、昨年の日本選手権で準優勝したJFE東日本をはじめ、JR西日本、伯和ビクトリーズ、三菱重工広島の広島勢が中心になるが、毎年のように代表決定戦で涙を呑んでいるシティライト岡山が4月の岡山大会で準優勝と着実に力をつけており、悲願の初出場を射程距離にとらえている。また、今季から会社登録となった光シーガルズの戦力も侮れない。四国はJR四国と四国銀行に、春季四国大会を制した松山フェニックスがどう絡むか。

 最近は全国の舞台でやや元気のない九州も、JR九州、九州三菱自動車、5月の九州大会で初優勝した西部ガスが二回戦までに星を潰し合うなど、予選の厳しさに変わりはない。敗者復活戦にまわると地獄の連戦になるため、投手陣のタフさがものをいう。

 前年に全国で上位に進出したチームが予選で敗退するなど、何が起こるか分からない二次予選は、熱のこもった応援合戦も一見の価値あり。また、プロ球団のスカウトは「全国の舞台以上にメンタル面の成長を確認できる」と予選にも足繁く通っており、ドラフト候補にとっては真価を問われる戦いでもある。そんな“大人の甲子園予選”を楽しむのはいかがだろうか。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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