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日本新薬が創業100周年を飾るV2!!【第74回東京スポニチ大会レビュー】

横尾弘一野球ジャーナリスト
決勝で東芝をシャットアウトし、3年ぶり2回目の優勝を果たした日本新薬。

 3月11日から5日間にわたって開催された第74回東京スポニチ大会は、15日に準決勝と決勝が行なわれた。

 準決勝第1試合は、東芝のエース・岡野祐一郎が、打線好調のSUBARUを6安打で完封。昨年のドラフトで上位指名有力と評価されながら、指名がなかった悔しさをぶつけ、リーグ戦でJFE西日本を6安打で完封した岡野は、2試合連続シャットアウトで勝負のシーズンを滑り出す。また、準決勝第2試合では、三菱日立パワーシステムズに2点を先行された日本新薬が、4回裏に長短4安打を集めて逆転。追いつかれた直後の5回裏には濱田竜之祐の3ラン本塁打で突き放し、8-6で決勝に駒を進める。

 2014年から3年続けて都市対抗ベスト8に進出した日本新薬は、2017年に吹石徳一監督が就任。4月の四国大会を制し、いよいよ都市対抗優勝も視野に入ったかと思われた。しかし、そんな勢いのある日本新薬を、都市対抗一回戦で4-2と退けたのが東芝だった。舞台は違えど、勝者には今秋の社会人野球日本選手権大会の出場権が与えられる勝負だ。日本新薬の選手たちは、一丸となって名門へのリベンジを狙う。

 東芝の先発は、2年目でドラフト候補と目される宮川 哲。対する日本新薬は、3年前の同大会で最高殊勲選手賞に輝き、今大会のリーグ戦でもNTT東日本を相手に5回1失点の好投を見せた榎田宏樹に先発を託す。埼玉西武で活躍する実兄・大樹と同じ左腕の榎田は、1回表二死から連打で一、二塁とされるも、後続を丁寧な投球で三振に仕留める。宮川も二死三塁のピンチを三振で切り抜けると、2回以降は緊張感のある投手戦が展開される。

創業100周年を飾る最高のスタート

 均衡は思わぬ形で破れる。6回裏の日本新薬の攻撃も簡単に二死となったが、一番の田中一八がファウルで粘り、10球目を三遊間に転がして内野安打となる。続く板倉健人が四球でつなぎ、宮川の2つの暴投で二、三塁になると、濱田もストレートの四球で歩く。そして、四番・中 稔真のカウント1ボール1ストライクからの3球目もワンバウンドとなり、捕手の柴原健介が大きく弾く間に2者が生還。さらに、中がショートの頭上を越える安打を放って3点目を奪う。

 これで流れをつかんだ日本新薬は、7回裏にも代打の福永裕基がソロ本塁打。準決勝から2試合連続で代打本塁打をマークした頼もしいルーキーの活躍で、この試合の雌雄は決したか。9回表には東芝も二死満塁と粘ったが、二番手の岩本喜照で逃げ切った日本新薬は、4-0で名門・東芝をシャットアウトし、3年ぶり2回目の優勝を果たした。

 表彰選手、監督は以下の通り。日本新薬は、創業100周年の記念すべきシーズンに最高のスタートを切った。悲願の都市対抗初優勝はなるか。

【第74回東京スポニチ大会表彰選手・監督】

最高殊勲選手賞/榎田宏樹投手(日本新薬)

敢闘賞/岡野祐一郎投手(東芝)

首位打者賞/金子聖史内野手(東芝)=.455

打撃賞/中 稔真外野手(日本新薬)

新人賞/福永裕基内野手(日本新薬)

新人賞/阿部博光投手(SUBARU)

監督賞/吹石徳一監督(日本新薬)

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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