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福岡ソフトバンクの上位指名はあるか!? アマチュアNo.1の超即戦力右腕・荒西祐大

横尾弘一野球ジャーナリスト
ドラフト直前に評価が急上昇した26歳の超即戦力右腕・荒西祐大(Honda熊本)。

 豊かな将来性を備えた選手たちに、新たな扉が開かれるプロ野球ドラフト会議が、いよいよ10月25日に実施される。今年は、根尾 昂(大阪桐蔭高)、小園海斗(報徳学園高)、吉田輝星(金足農高)といった1位で競合必至の高校生が耳目を集めている一方で、大学生や社会人には絶対的な1位候補がいないと言われ、各球団の指名戦略、当日のクジ運などで全体の指名が大きく左右されると見られている。

 そんな中で、どの球団が何位で指名するのか関心の的になっているのが、Honda熊本の荒西祐大投手である。

 地元の玉名工高で1年夏から公式戦に登板していたスリークォーターの右腕は、2011年にHonda熊本へ入社すると、山中浩史(現・東京ヤクルト)がエースの投手陣で頭角を現し、都市対抗二回戦に中継ぎで全国デビューを果たす。2年目の2012年には平田真吾(現・横浜DeNA)が入社してくるが、都市対抗九州二次予選の初戦では先発を任されるなど、140キロ台中盤のストレートと鋭く滑るスライダーを武器に、着実に力をつけていく。

 だが、山中と平田が相次いでプロ入りしたものの、2013年にドラフト指名解禁となった荒西には声がかからない。絶対的なエースとして、実績とともに安定感やスタミナもアピールしてきたが、多くのスカウトが「高卒ならばチャンスがある」と口を揃えた6年目も指名はなし。昨年からは、ドラフト候補としてはメディアに取り上げられる機会も激減した。

 ところが、今年は荒西の周辺が騒がしいのだ。ある球団の編成部長は、その理由をこう語る。

「昨年のアジア・ウインター・ベースボールで5試合に登板し、防御率0.00の投球内容が圧巻だった。間違いなく11~12名の一軍投手枠に入れるという観点では、社会人トップの存在でしょう」

 さらに、今季の幕開けとなる3月の東京スポニチ大会では、準優勝の原動力となって敢闘賞を手にする。先発、リリーフともそつなくこなし、連投でも球威の落ちない点には定評がある。ただ、26歳という年齢と、社会人には大卒2年目の投手に逸材が揃っていたため、荒西にスカウトの視線が集中することはなかった。

水面下の争奪戦で上位指名の可能性もアップ

 それでも、都市対抗が終わった夏頃には、荒西の指名は確実という見方が大勢を占める。社会人投手を追いかけてきたスカウトは言う。

「大卒2年目の社会人投手が軒並み伸び悩む中で、荒西君の総合的評価は高くなった。しかも、アジア競技大会ではチーム最多の4試合に登板して無失点。プロを並べた韓国打線を寄せつけないというダメ押しのパフォーマンスを見せただけに、確実に獲得したいと踏んだ数球団が調査書を送り、徹底マークしています」

 スカウトの背中を押すのは、攝津 正(現・福岡ソフトバンク)の成功例だ。秋田経法大附高(現・明桜高)からJR東日本東北へ入社した攝津も、3年目以降は毎年ドラフト候補と言われたものの、なかなか指名されなかった。しかし、2007年に日本代表入りし、ワールドカップで3位進出の原動力になると、翌2008年に福岡ソフトバンクが5位指名。国際大会での好投が決め手になったと言われ、入団後の活躍は周知の通りだ。荒西も攝津と同じような道を辿り、攝津が指名された26歳を迎えている。

 ただ、前出のスカウトが苦笑しながら語る。

「攝津のように、5位あたりの指名で獲得できれば万々歳。ですが、ドラフト1週間前の調査では、3位でも危ないという情報もある。外れ1位まではいかなくても、2位指名はあるかもしれません。熱心に追いかけている福岡ソフトバンクがどう考えているか……」

 確かに、福岡ソフトバンクのスカウト陣は、アジア競技大会が開催されたインドネシア・ジャカルタでも、荒西に熱い視線を注いでいた。2年連続で日本シリーズに進出したとはいえ、規定投球回数にひとりも到達しなかった投手陣が、ペナントレース2位に甘んじた一因とも考えられるだけに、使い勝手もいい超即戦力の獲得に注力するのは理解できる。

 さて、荒西はどの球団が何位で指名するのか。それは、根尾、小園、吉田を何球団が1位で入札するのかと並んで、今回のドラフトの見どころと言っていい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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