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積極果敢な機動力と若さの爆発力で金メダルへ――アジア競技大会の野球日本代表24名が内定

横尾弘一野球ジャーナリスト
社会人九州選抜とのテストマッチに臨む日本代表。左端が石井章夫監督。

 8月26日からインドネシア・ジャカルタ市を中心に開催される第18回アジア競技大会に出場する野球日本代表が、6月18日に全日本野球協会から発表された。24名の選手はすべて社会人で、ペナントレースを中断してプロ選手で編成する韓国、日本と同じようにトップ・アマチュアで臨むチャイニーズ・タイペイと金メダルを争う。

 2大会ぶりに優勝した昨年のアジア野球選手権大会から田嶋大樹(現・オリックス)ら11名がプロ入りしたため、石井章夫監督は「まったく別のチームを編成するつもりで選手を見ていかなければならない」と、昨年11月から約1か月に渡って台湾で開催されたアジア・ウインター・ベースボールに38名を招集。さらに、今年3月の選考合宿にも新たな選手を呼び、コンスタントに力を発揮できる選手を見極めた。そうしたプロセスを経て選出された24名は、今季の社会人ベストメンバーと言っていい。

 大きな特徴は、経験豊富な佐竹功年投手、細山田武史捕手(ともにトヨタ自動車)のバッテリーを除く22名が20代だということ。社会人で日本代表を編成する場合、近年は30代のベテランを核にして、ドラフト候補と目される若手を融合させる方法論が主流だった。それは、心身両面での安定感に期待できるからだ。

若手強化の方針が機動力のあるチームを生み出す

 だが、全日本野球協会が爆発力を備えたチーム作りを睨み、若手中心の編成にシフトするという方針を打ち出すと、2017年に就任した石井監督はチャレンジ精神に満ちた25歳以下の選手に注目。はじめはノーガードの打ち合いを演じたり、日本の持ち味であるディフェンス面での不安を見せたものの、「国際大会をステップにしてプロを目指したい」という選手たちは次々と課題をクリアし、昨年のアジア選手権大会では積極果敢な機動力でアジア王座を奪還した。

 その結果、韓国代表を率いる宣銅烈監督(元・中日)が「投手はクイックモーションでも安定感を発揮できるかが選考のポイントになる」と語るなどライバルの脅威となり、金メダルを争う上での大きな武器を手に入れた。

 昨年のアジア選手権を経験した選手は7名と、大幅にメンバーが変わっても機動力は発揮され、二死一塁からでも二盗、詰まった安打で生還と、派手な長打力はなくても得点力は着実にアップしている。

 6月21日からは、大分県佐伯市で強化合宿を実施しており、22日に社会人九州選抜と対戦したテストマッチは11-3で快勝。厳しい都市対抗予選を終えたばかりでコンディションは万全とは言えないが、投手陣は先発の岡野祐一郎(東芝)を筆頭に持ち味を発揮し、打線も四番の笹川晃平(東京ガス)が先制2ランを放つなど、やるべき選手が結果を残し、初代表の選手たちもアグレッシブなプレーを見せてくれた。

 8月18日からは千葉ロッテのファームなどと仕上げのテストマッチを行ない、ジャカルタに乗り込む予定。投手を中心に、今秋のドラフト会議で指名されるであろう逸材が揃うアジア競技大会日本代表に、これからも注目していただきたい。

【第18回アジア競技大会日本代表】

監 督 71 石井 章夫 右右 東京ガス

コーチ 72 棚橋 祐司 右右 王子

コーチ 73 若林 重喜 右右 JX-ENEOS

コーチ 74 杉浦 正則 右右 日本生命

投 手 11 岡野祐一郎 右右 東芝

投 手 13 荒西 祐大 右右 Honda熊本

投 手 15 臼井  浩 右右 東京ガス

投 手 16 吉川 峻平 右右 パナソニック

投 手 17 堀   誠 右右 NTT東日本

投 手 18 高橋 拓已 左左 日本生命

投 手 19 佐竹 功年 右右 トヨタ自動車

投 手 20 勝野 昌慶 右右 三菱重工名古屋

投 手 34 富山 凌雅 左左 トヨタ自動車

捕 手 23 辻野 雄大 右左 Honda

捕 手 27 木南  了 右右 日本通運

捕 手 36 細山田武史 右右 トヨタ自動車

内野手  2 堀米 潤平 右左 東芝

内野手  3 青柳  匠 右右 大阪ガス

内野手  4 北村 祥治 右右 トヨタ自動車

内野手  7 田村  強 右右 JR西日本

内野手  8 岡部 通織 左左 JX-ENEOS

内野手  9 森下 翔平 右右 日立製作所

内野手 10 喜納 淳弥 右左 NTT東日本

内野手 12 地引 雄貴 右右 東京ガス

外野手  1 近本 光司 左左 大阪ガス

外野手  5 松本桃太郎 右左 Honda鈴鹿

外野手  6 佐藤  旭 右右 東芝

外野手 24 笹川 晃平 右右 東京ガス

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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