Yahoo!ニュース

社会人ナンバーワン左腕・平尾奎太が2年目も好スタートを切る【日本代表選考合宿レポート】

横尾弘一野球ジャーナリスト
“社会人ドラフト候補・神7”の牽引役と注目される平尾奎太(Honda鈴鹿)

 8月24日からインドネシア・ジャカルタで開催される第18回アジア競技大会に出場する社会人日本代表の選考合宿が、3月16日から18日までJR東日本柏野球場で実施された。昨年のアジア・ウインター・ベースボール(以下AWB)を経て招集された42名が、テストマッチなどでパフォーマンスをチェックされたが、17名の投手陣の中心にいるのがHonda鈴鹿の左腕・平尾奎太である。

 大会最優秀投手に選出されたAWBの疲れを抜くため、今年に入ってからはスローペースで調整してきた。3月初旬の沖縄久米島キャンプからエンジンをかけ、まだまだ本調子ではないが、17日のテストマッチではキレのあるボールを投げ込んだ。特に、右打者にはストライク・ゾーンを通過すると見えるものの、どんどん遠くなるように逃げながら沈むスクリューボールは、韓国のスラッガー相手に大きな武器になるという印象だ。

第3の男から“ドラフト候補・神7”の牽引役に

 大阪桐蔭高では、藤浪晋太郎(阪神)と澤田圭佑(オリックス)の同期で三番手。春夏連覇した甲子園では登板機会がなかったが、「当時から150キロのストレートを投げていた藤浪と、コントロールでは藤浪を上回っていた澤田と一緒にブルペンで投げていた」という経験が、「いつか自分もプロへ」と高い目標を抱かせた。

 ただ、高2秋に腎臓を患い、再び不安なくマウンドに立てるようになったのは同志社大3年の頃。4年秋のリーグ戦ではベストナインを手にするまで力を伸ばしたものの、もうワンランク上の投球を目指して進路を社会人に定め、昨春にHonda鈴鹿へ入社する。世代交代を睨み、平尾を含む新人3投手を中心に起用する甲元 訓監督の方針の下、同期と競い合いながら力をつけ、都市対抗では2試合、14回を無失点と目立つ実績を残した。

 その活躍を評価され、10月に台湾で開催された第28回BFAアジア野球選手権大会で日本代表入り。リリーフで3試合に登板し、無失点で優勝に貢献する。12月のAWBには日本代表初選出の選手が多かったため、国際大会経験者としてフル回転を期待されると、先発、リリーフとも安定した投球を続け、6試合で防御率0.90をマークした。

 今季ドラフト指名が解禁になる大卒2年目の社会人投手のうち、AWBに続いて今回の選考合宿にも招集されたのは、平尾のほか、臼井 浩(東京ガス)、岡野祐一郎(東芝)、坂本光士郎(新日鐵住金広畑)、高橋拓已(日本生命)、堀 誠(NTT東日本)、吉川峻平(パナソニック)の計7名。この“ドラフト候補・神7(セブン)”が、都市対抗に向けて耳目を集めていくと思われるが、平尾は実績と経験でその牽引役と言っていい。

 父親の健二さんは、かつて内野手としてNTT北陸で11年プレーした。昨年の都市対抗予選前には「先輩たちは、この大会にかけてやってきた。おまえがそれを潰すな」と発破をかけられたというが、そんな父親譲りの闘争心を内に秘め、マウンドでは冷静に燃える。また、技術的な面だけでなく、エースの心構え、バックの野手との信頼関係をどう築くかなど、指導者からのアドバイスに耳を傾け、本当の意味で完成された投手を目指そうとする直向きさも大きな魅力だ。

 Honda鈴鹿は23日から行なわれる東海地区春季大会に続き、4月13日から開催される日立市長杯大会から本格的に公式戦に臨む。平尾の登板からは目が離せない。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

横尾弘一の最近の記事