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和歌山箕島球友会が4回目の優勝【第42回全日本クラブ野球選手権大会】

横尾弘一野球ジャーナリスト
大和高田クラブとの激闘を制し、歓喜の輪を作る和歌山箕島球友会の選手たち。

 社会人クラブチームの日本一を決める第42回全日本クラブ野球選手権大会は、9月1日から4日間、全国の地区予選を勝ち抜いた16チームによってメットライフドームで開催された。昨年優勝のビッグ開発ベースボールクラブ(沖縄県)が一回戦で敗れるなど、出場チームの実力が拮抗していることを印象づける中、決勝に進出したのは西近畿代表の和歌山箕島球友会(和歌山県)と東近畿代表で元近鉄監督の佐々木恭介が率いる大和高田クラブ(奈良県)。かつてはクラブ野球不毛の地だった近畿勢は、この2チームが牽引役となって台頭し、決勝での近畿対決も5回目だ。

 和歌山箕島球友会は、140キロ台中盤のストレートで押すエースの寺岡大輝で一回戦と準決勝に勝ち、準々決勝の完封勝利に続いて決勝の先発を任されたのが、2年目の左腕・和田拓也。対する大和高田クラブは、実力派の投手が揃う中、ルーキーの山本竜也が一回戦と準決勝に完投勝利を挙げ、決勝は10年目のベテラン左腕・米倉大介に託す。

1時間33分で延長タイブレークに突入し……

 すると、両先発とも巧みなコントロールで凡打の山を築かせ、スコアレスのまま僅か1時間33分で9回を終える。クラブ選手権は、延長10回からは一死満塁の設定で攻撃を行なうタイブレーク制度が導入されており、どこまでも見ていたかった勝負はタイブレークで決着することになる。

 表の大和高田クラブは二番からの攻撃を選択し、今里征馬が2球で2ストライクに追い込まれながらも、4球目をセンター前に弾き返して2者が生還。和田は後続を討ち取ったが、その裏の和歌山箕島球友会の攻撃が注目された。

 逃げ切りたい大和高田クラブは、好投の米倉に代えて、30歳の速球派・山田龍平をマウンドへ送る。山田は、和歌山箕島球友会が先頭に指名した五番の穴田真規(元・阪神育成)にショートへのゴロを打たせたものの、これが間一髪、内野安打となって1点。さらに、平井 徹には1ボールからの2球目が死球となり、同点にされてしまう。

 追いついて意気上がる和歌山箕島球友会は、続く水田信一郎が2ストライクからの3球目をライナーでライト前へ。劇的なサヨナラ勝ちに、一塁側ダグアウトから選手たちが飛び出した。実は、和歌山箕島球友会と大和高田クラブは優勝3回で、歴代2位タイで並んでいた。近畿勢同士でライバル意識も強く、2006年の決勝では和歌山箕島球友会が勝っているだけに、大和高田クラブはリベンジに燃えていたが、今回も和歌山箕島球友会に軍配が上がり、単独2位となる4回目の優勝を果たした。

 最高殊勲選手賞には、タイブレークで2失点したものの、2度の先発で18回を無失点の和田。敢闘賞には山本、首位打者賞は16打数8安打の打率.500で、大和高田クラブのリードオフ・岩永幸大が獲得した。

 優勝した和歌山箕島球友会は、第43回社会人野球日本選手権大会への出場権を得た。企業チームが日本一を争う大会でどんな戦いを見せてくれるのか注目したい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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