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【第88回都市対抗野球大会第9日】三菱日立PSとJR西日本が8強入りし、NTT東日本は4強一番乗り

横尾弘一野球ジャーナリスト
Honda鈴鹿とスコアレスの熱闘を繰り広げ、延長11回サヨナラ勝ちの三菱日立PS

 第2試合までにベスト8が出揃い、第3試合は準々決勝。黒獅子旗を目指す戦いは、さらに熱を帯びてきた。

二回戦/横浜市・三菱日立パワーシステムズ 1×0 鈴鹿市・Honda鈴鹿

 三菱日立パワーシステムズの先発・大野亨輔は、一回戦は2回3失点でマウンドを降りた。エースらしい投球を見せたい2度目の先発は、本来の安定感を取り戻して凡打の山を築かせる。一方、Honda鈴鹿の先発はルーキーの平尾奎太。一回戦では二番手で5回をノーヒットに抑え、勝利投手になっている左腕だ。思い切りのいい投球で、大野と投手戦に持ち込む。

 5回裏、三菱日立PSは先頭の若林晃弘(JX-ENEOSから補強)が左前安打を放つと、犠打で二塁へ進み、佐々木 勉が中前に弾き返して若林がホームを踏む。ところが、三塁を空過したというアピールが認められて得点は取り消しに。これに助けられた平尾はこの後も無失点投球を続ける。

 そうして9回をスコアレスで終え、三菱日立PSは本多裕哉、Honda鈴鹿は鹿沼圭佑に投手を交代。二番手の出来がカギを握ると思われたが、11回裏の三菱日立PSは先頭の八戸勝登が四球を選ぶと犠打で送り、久保皓史が左中間に安打を放ってサヨナラ勝ち。リリーバーとして実績を残す鹿沼だが、この日はやや制球に苦しんだところをつけ込まれた。三菱日立PSは7年ぶりの8強入り。

二回戦/広島市・JR西日本 8×6 東京都・セガサミー

 JR西日本は、1回表に3四球で一死満塁のチャンスを得ると、松野 光と田中勇次の中前安打で3点を先制。セガサミーの先発・横田 哲は1回持たずに降板してしまう。しかし、セガサミーも2回裏に打撃妨害と2四死球で二死満塁になると、宮川翔太と島田隼斗(ともに明治安田生命から補強)の適時打と敵失で4点を挙げて逆転する。

 やや荒れ気味だった試合は中盤から締まり、6回を終えて5対5と勝敗の行方はわからなくなった。決着したのは最終回。表のJR西日本が一死二塁から代打・亀井優輝の2ラン本塁打でリードすると、二死後に3連続内野安打と押し出し死球で1点を加える。裏のセガサミーも振り逃げを皮切りに1点を返したが、JR西日本は寺田健祐(シティライト岡山から補強)を投入して何とか逃げ切り、初のベスト8入り。西日本勢が次々と敗退していく中で、唯一の準々決勝進出となった。

 セガサミーは5投手で勝利を目指したが、四球や失策でペースをつかめなかった。

準々決勝/東京都・NTT東日本 6×5 東海市・新日鐵住金東海REX

 1回裏に宮内和也の左犠飛でNTT東日本が1点を先制し、2回表の新日鐵住金鹿島が倉内誠志の適時二塁打で逆転するという流れは、この時限りのものだった。NTT東日本は、2回以降も攻撃の手を緩めず、6回まで1点ずつを加えて6対2とリードする。対する新日鐵住金東海REXは、なかなか追加点を奪えなかった。

 4点差のまま9回表になると、NTT東日本の勝利を疑う人はいなくなった。マウンドには三番手で西村天裕が登ったが、二死一、二塁から中嶋智仁に3ラン本塁打を浴びてしまう。さらに、福田晃規に内野安打を許したところで、飯塚智広監督はたまらず沼田優雅に交代させ、最後の打者を討ち取った。

 NTT東日本はベスト4に一番乗り。二番を任されている福田周平は、3試合で14打数10安打の打率.714。首位打者賞の有力候補が火を点ける打線は全体に好調で、悲願の黒獅子旗も視界にとらえたのではないだろうか。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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