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【第88回都市対抗野球大会第3日】Honda熊本、Honda、JR東日本がシャットアウト勝ち

横尾弘一野球ジャーナリスト
社会人屈指の司令塔・JR東日本の石川修平も田嶋大樹の投球を絶賛した

エースが会心の投球を見せれば、攻撃にもリズムが生まれ、チームは勝利にグッと近づく。第88回都市対抗野球大会の3日目は、3試合ともシャットアウト・ゲームだった。

一回戦/大津町・Honda熊本 4×0 石巻市・日本製紙石巻

Honda熊本のエース・荒西祐大は、入社直後からキレ味鋭いボールで頭角を現し、3年目以降はドラフト候補にも挙げられていた。だが、全国の舞台ではなかなか勝てない。次第に社会人でも研究され尽くし、思い通りの結果を残せない時期もあった。

ただ、7年目、25歳になる今季は、何かひと皮剥けたような印象があった。ヒットを許しても得点は与えない。凄さ以上に巧さを感じさせる投球に進化を感じさせられた。

そうして迎えた東京ドーム。対戦相手の日本製紙石巻は、右肩上がりに成長を続ける難敵だ。序盤は塚本峻大との投手戦。2回、3回は二塁に走者を背負ったが、冷静な投球で先制点を許さない。

すると、4回表に一死から連打で二、三塁のチャンスを築くと、女房役の浜岡直人が右中間に2点二塁打を放って援護する。その裏は先頭を四球で歩かせるも、慌てずに後続を討ち取っていく。日本製紙石巻は4回から7回まで先頭打者が出塁したものの、なかなかチャンスを拡大することができなかった。

7回表は長池城磨のタイムリー、9回表には稲垣翔太のソロ本塁打で4対0とすると、135球で6安打10奪三振。今大会シャットアウト第1号となる好投で、荒西自身ドーム初勝利を挙げた。年齢的にも、まだプロ入りの可能性はあるだろう。次の登板も楽しみだ。

一回戦/狭山市・Honda 10×0 高松市・JR四国

2年ぶり出場のHondaが7回コールドで快勝した。2回まではJR四国の先発・田内 亘が3三振を奪う好投を見せていたが、3回表のHondaは先頭の辻野雄大がライトへ二塁打を放ち、一死一、二塁からルーキー・木浪聖也がライトスタンドに先制3ラン本塁打を突き刺す。

これで勢いのついた打線は、5回表に5安打を集めて4点を追加し、さらに7回表にも3点を奪う。投げては、先発の福島由登が6回までJR四国を散発3安打に抑え、7回は2投手を注ぎ込んでシャットアウトした。JR四国はロースコアの展開に持ち込みたかったが、予選をひとりで投げ抜いた田内がつかまり、攻撃面でも一度しか三塁を踏むことができなかった。

一回戦/東京都・JR東日本 3×0 高岡市・伏木海陸運送

「とにかく1勝」

今秋のドラフトの目玉と評されるJR東日本の田嶋大樹は、入社した一昨年、昨年と東京ドームでは一回戦で敗退している。「プロ入りを考えるのは、大舞台でチームを勝利に導いてから。もちろん、連投もするつもりです」と、200球を超える投げ込みを繰り返すなどエースの自覚を持って臨んだシーズン。春先から大黒柱として力投を続け、いよいよ日本一を目指すマウンドに立つ。

そんな田嶋をリードする石川修平は、社会人屈指のインサイドワークが光る司令塔。先発投手が石川のイメージ通りの投球なら、JR東日本が勝ち星を手にできる確率はほぼ100%と言っていい。

「すべてのボールが僕のイメージ通りでした。田嶋は予選の時にチームを勝たせる投球を身につけ、それをこの試合でも発揮してくれた。ややボール気味にしたいカウントで、そのサインをあえて送らなくても、僕の意図したコースに投げ込んできた。これだけ意思が通じ合えば、リードしていても気持ちがいい」

そう話す石川の笑顔が、田嶋の3年目の成長であり、1安打完封という結果以上の充実ぶりを示している。対戦相手の伏木海陸運送も、JR東日本の重量打線に11安打されながら、要所を凌いで3失点に止めた。どのチームと戦っても接戦はもちろん、予想できない展開も覚悟しなければいけない一回戦だけに、田嶋の安定感は強く印象に残った。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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