経団連「コロナ対策で週休3日の検討を」 給料や働き方にどう影響?

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

政府は14日、全国の39県について緊急事態宣言を解除することを決めました。

しかし「特定警戒都道府県」の指定が続いている東京や大阪などに本社や事業所をおく企業が圧倒的に多いですし、それらの会社と取引する他県の企業も含め、今後どのように事業活動を行っていくのかが喫緊の課題となっています。

経団連は、企業が事業活動を行う際の感染予防対策をガイドラインとして公表しました(経団連:「新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」について (2020-05-14))。

ガイドラインでは、通勤頻度を減らし、公共交通機関の混雑を緩和する方法としてテレワークや時差出勤などの他に「週休3日」も挙げられています。

●コロナ以前から注目を集めつつあった「週休3日」

ここ数年、ヨーロッパなどでは「週休3日」への注目度が高まっていました。

きっかけのひとつは、2018年にニュージーランドのある会社が2ヶ月間の実証実験を行い、その結果を公表したことです。実証実験では生産性の向上や社員のエンゲージメントの向上、プライベートの時間の充実といった効果が見られ、同社は公式に週休3日を制度として取り入れることとなりました。

ここから週休3日の可能性が世界的な議論になり、イギリスでは労働党が昨年末の総選挙における公約のひとつとして週休3日の導入を掲げました。労働党は大敗しましたが、二大政党の一方が真剣に検討するほどには身近なテーマなのです。

また今年のはじめには、フィンランドのサンナ・マリン新首相が週休3日を支持していることが話題になりました。これは公的な政策ではなくあくまで個人的な考えだということですが、フィンランドは労働者の働きやすさを向上する施策を積極的に取り入れてきた国ですから、週休3日も非現実的な話とは言えないでしょう。

●日本における「週休3日」をめぐる動き

日本でも、株式会社サタケが2017年から夏季限定で週休3日のトライアルを続けているほか、昨年はマイクロソフトが8月の全ての金曜日を休業にする働き方改革のプロジェクトを実施し、話題になりました。

ユニクロを展開するファーストリテイリングは転勤のない「地域正社員」に週休3日の選択肢を与えていますし、週休3日で働ける会社への就・転職を支援する「株式会社週休3日」という会社もあるなど、働く側のニーズの高まりも感じられます。

とはいえ、日本の多くの会社員は、「週休3日」を自分とは関係のない話と感じていたのではないでしょうか。

それが、新型コロナウイルスの問題で急に現実的な話になってきました。

報道によれば、すでに東芝、ルネサスエレクトロニクス、ワコールが週休3日の実施を決めている、またはすでに実施中だそうです。経団連がガイドラインを発表したことで、今後も増えていくものと予想されます。

●目的によって異なる週休3日の運用方法と働く人への影響

一口に「週休3日」と言っても、何を目的にするかによってその運用方法や、社員が受ける影響も異なります。

筆者の考えでは、従来の週休3日は、企業によって次の3つのうちの1つ、あるいは2つを合わせたものでした。

1.ワークシェア

目的:少ない仕事を多人数で分け合う。

社員への影響:労働時間が減る。それに応じて給料も減る。

2.生産性向上

目的:同じ仕事をより少ない時間で行う。

社員への影響:労働時間が減る。会社側に利益を社員に還元する意識があれば給料は維持されるが、労働時間に応じて減らされる可能性もある。

3.ワークライフバランス

目的:働く人の時間の自由度を高める

社員への影響:労働時間と給料が減る場合と、勤務日の労働時間を増やして給料を維持する場合とがある。

そして新型コロナウイルスの問題で新たに加わったのが以下のパターンです。

4.感染症対策

目的:通勤を減らす、三密を避ける。

社員への影響:労働時間と給料が減るケース、労働時間が減っても休業補償として給料が維持されるケース、勤務日の労働時間を増やして給料を維持するケースなどが考えられる。

●東芝とルネサスの場合は?

同じ新型コロナウイルスをきっかけに始まる週休3日であっても、会社によってその目的や実施方法が異なる場合があります。

例えば、先に挙げた東芝とルネサスエレクトロニクスはどちらも製造業の会社ですが、週休3日となる対象者が異なっています。

報道によると、東芝の場合は在宅勤務ができない工場などの社員が対象で、出勤日数は減らしても労働時間は減らさない(出社する日に多く働く)方針ですから、4.感染症対策を目的とした施策だと言えます。この場合、労働時間は変わらないので給料の増減はないはずです。1日の労働時間が延びることによる心身への影響や、出勤者を平準化するためのシフト調整をうまくできるかなどがポイントになるでしょう。

ルネサスは、工場勤務以外の約5000人が輪番の形で週休3日を実施しています。増えた休みは「休業」扱いとして給与の8割強を手当として支払うそうです。交代で休むことで接触の機会を減らすという意味では4.感染症対策が目的となりますが、需要の落ち込みに対して1.ワークシェアという意味もあるのではないかと推測されます。

●痛みを分け合い、その後に飛躍するための週休3日の可能性

コロナ禍以前、最近の週休3日への注目度の高まりは、どちらかというと2.生産性向上3.ワークライフバランスの観点からきているものでした。

しかし時を遡れば、オイルショック後の不況期をワークシェアリングで乗り越えたオランダのような例もあります。企業が短時間労働者を多く雇うことでワークシェアリングを進め、失業者の増加を抑えて経済を立て直したのです。

その結果、いまのオランダでは週休3日や短時間勤務は全く珍しいものではなく、フルタイム勤務かどうかで正社員・非正規社員と区別するような雇用慣行がなくなっているため、同一労働同一賃金が実現。非常に働きやすく、幸福度の高い社会が実現しています。

最近は非正規雇用の方を中心に、雇い止めや休業手当の不払いといった被害が報じられています。企業が少しでも短期の利益を確保しようとするなかで、そのようなことが起きているのでしょう。

しかし、仕事がなくなって生活が立ち行かなくなる人が増えれば経済の停滞につながり、コロナ後の企業にもダメージを与えることになります。企業には、週休3日も含めた様々な工夫を取り入れ、政府の雇用調整助成金なども活用し、なんとか雇用を維持してこの苦境を乗り越えてほしいと思います。