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食料備蓄は「1年ストック法」で 全国地震動予測は参考にせず私たちが備えるべきこと #知り続ける

矢野きくの家事アドバイザー/節約アドバイザー/防災士/食育指導士
地震への備えは個人個人でしっかり必要(写真:イメージマート)

地震発生予測の確率が低くても地震は起きている

2011年3月11日の東日本大震災(地震名称:平成23年 東北地方太平洋沖地震)から今日で13年。あの日のことを鮮明に覚えている人も多いと思いますが、時間の流れとともに記憶が薄れてきてしまっている人もまた多いことでしょう。

この13年の間でも日本国内では震度7を記録した地震が4回発生しています。

2011年「平成23年 東北地方太平洋沖地震」

2016年「平成28年 熊本地震」

2018年「平成30年 北海道胆振東部地震」

2024年「令和6年 能登半島地震」

今年の元日に発生した能登半島での地震は記憶に新しいところで、まだ多くのかたが困難な生活をおくられています。

政府 地震調査研究推進本部により発表されている「全国地震動予測地図 2020年版」は、「2020年から30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」を示しているものです。(https://www.jishin.go.jp/main/chousa/20_yosokuchizu/yosokuchizu2020_mm.pdf

地図を見ていただくと分かりますが、全体的に太平洋側が地震発生確率が高い赤い濃い色で、日本海側は確率が高くはない黄色で塗られている地域が多く、能登半島も黄色で塗られています。実際、石川県の企業誘致のホームページには「石川県は地震リスクが小さい」と書かれていたそうです。(地震後の2月上旬にホームページからは削除)

2024年2月22日にBSーTBS(TBSテレビ)の「報道1930」で放送された内容によると、石川県だけではなく2016年の熊本地震でも当時の発生確率では「0%から0.9%」、2018年の北海道胆振東部地震は「ほぼ0%」となっていたそうです。

このことからも分かるように、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート、ユーラシアプレートと4枚のプレートがひしめき合っている日本列島では、いつどこで地震が起きてもおかしくない状態なのです。

この国に住んでいる以上いつ大きな地震が来てもいいように、ひとりひとりが対策をしておく必要があります。

食料、飲料の備蓄は手間がかからない「1年ストック法」で

東日本大震災後、筆者は福島県いわき市の応援を続けており、被災したかたの話を聞かせていただく機会があります。印象的だったのは、「地震発生から数日は避難所にも満足な量の食料は来ず、おにぎり1個だったのでお腹をすかせた子供にあげていた」という話です。

いくら自宅に備蓄をしていても、家が倒壊してしまったり津波の被害にあうと、備蓄を活用できない可能性もあります。しかし、備えてあれば自宅の食料で数日過ごすことだって可能なのです。

備蓄というとかつては、カンパンなどの数年保存できるものが主流でした。だからこそ、気づいたときには期限切れになっているということが多々あったのでしょう。そこでここ数年は「ローリングストック法」として普段食べているものの在庫を多めに買っておき、食べたら買い足すという方法が推奨されてきました。

しかし筆者の講演への来場者からよく聞くのは「ローリングストックをやってみたけど続かなかった」という声です。実際にどの食材はストック用だから食べたら同じものを買い足すというのを管理していくというのは、とても手間がかかる方法ではないでしょうか。挫折してしまう人が出てくるのも納得できます。

筆者がやっている「1年ストック法」(筆者撮影)
筆者がやっている「1年ストック法」(筆者撮影)

そこで以前の筆者は1つの箱に1週間分の食料を入れたものを作り、それを期間を決めて入れ替えていくということをやっています。昨年までは「半年ストック法」としていたのですが、保存技術の進化から最近では1年保存できる食料品も多くなってきたからです。

「1年ストック法」として、パックご飯や乾麺、それらにあわせるレトルトの食材などを箱に入れ、毎年3月に入れ替えることとしました。

水は飲料と生活用水をあわせると以前は一日一人あたり2.5リットルと言われていましたが、最近は3リットルというのが主流です。一人分で考えると1週間21リットルなので、2リットル入りのペットボトル6本の箱を2箱積んでおけば足りる計算となっています。

何をどれくらい備蓄で用意したらいいか検討がつかないという方は、東京都の「東京備蓄ナビ」で人数や住まいの環境などを入力すると、揃えておいたほうが良いものの量を提示してくれるので、利用してみるといいでしょう。

家具の固定や生活空間で備える

揺れで家具が倒れてきたことにより命にかかわる怪我をする可能性もあります。本棚やタンスなどはL字型の金具で壁に固定するようにします。賃貸住宅などで壁に穴が開けられないという場合、家具の下に敷くジェル状の耐震マットも市販されています。家具店やホームセンターで売られているもののパッケージを見ると「震度7対応」というものもあるので、そのようなものを大きな家具の下に敷いておくと良いでしょう。

大きな家具の前で寝ないことも大切です。家具や中のものが倒れてこない位置で寝るようにしましょう。

また寝ている場所の近くに靴を1足置いておくと、万が一家の中に割れたものがあったりしても外に出るときに足を守ることができます。1日の約3分の1は寝ている時間なのでその時間に対する備えも大切なのです。

電気・ガス・水道が止まったときの生活をイメージして備える

ライフラインが止まった場合に必要なものは、その家庭の環境によっても違ってきます。自分の生活ではどうなるかを想定して、備えておくことが必要です。

その中でも例えば停電のときの照明として備えるのは、ろうそくではなくランタンタイプのものにしましょう。ろうそくは地震のときは余震を考えて使用は避ける必要があります。

懐中電灯よりも光が広範囲に広がるランタン型がおすすめ(筆者撮影)
懐中電灯よりも光が広範囲に広がるランタン型がおすすめ(筆者撮影)

ガスが止まったり、IHコンロのご家庭では電気が止まった場合でも調理に役立つのがカセットコンロです。カセットガスを何本備えておけばいいのかは、カセットコンロの老舗メーカーでもある岩谷産業が試算し「大人2人で気温10度の環境では7日間で9本」となっています。(https://www.iwatani.co.jp/jpn/consumer/products/cg/useful/stockpile/

お金・情報の備え

キャッシュレス決済が普及している今、手持ちで現金がないという人も多くいます。しかし災害時は現金しか使えないという環境になる可能性も多いので、ある程度の現金は備えておく必要があります。その際も紙幣だけでなく硬貨も準備しておくと自動販売機などで使うこともできるでしょう。

また通帳や印鑑がなくても大きな災害のときには、個人が証明できればお金をおろすことができる場合もあります。そのためにも身分証明書となるもののコピー、口座の番号などは控えておき、非常用持ち出し袋の中に入れておくことをおすすめします。

まだまだ備えておきたいものはありますが、大切なのは個人個人が自分の環境にあわせて何が必要になるかを考えて備えることです。この機会に是非万全の備えをし、「いつ地震がきても大丈夫」という状況にしておきましょう。

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家事アドバイザー/節約アドバイザー/防災士/食育指導士

家事の効率化、家庭でできるSDGsを中心に、テレビ、講演、コラム連載などで活動。働く人向けの時短家事術、シニア層への家事改革などをアドバイス。「防災士」の資格を持ち家庭での備え、「食育指導士」の資格も持ち、食品ロス削減をテーマにした講演も定評がある。100円ショップや業務用スーパーでのお得な買い物術の紹介や、便利グッズの開発にも携わる。【テレビ出演】NHKごごナマ(準レギュラー)・日本テレビミヤネ屋・TBSテレビはなまるマーケット・フジテレビ笑っていいとも他。【連載実績】HONDA・東芝・イオン等企業のオウンドメディアや、日経新聞・時事通信 他。【著書】シンプルライフの節約リスト(講談社)他。

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