片側2車線の道路を自転車で横断する2人の少年。そこへ、ブレーキをかける様子もなく、猛スピードで突っ込む白い乗用車……。

 5月24日、事故現場をとらえた鮮明な映像と共に、乗用車を運転していた57歳の男が過失運転致死で逮捕された、というニュースが報じられました。

『「事故は一瞬だからどうしようもない」逮捕の57歳男 時速100kmの車で中学生をはね死なす(フジテレビ系(FNN)) - Yahoo!ニュース』

 公開された防犯カメラの映像は、衝突の直前までを切り取ったものですが、まさに交通事故は秒単位のタイミングで生死を分けるのだということを痛感させられます。

 2人の少年たちは、これほどの速さで左側から車が突っ込んでくるなんて、とても予測できなかったのでしょう。

 もし、乗用車がこの道路に定められた制限速度(時速50キロ)を守っていたら……、2人は間違いなく道路を渡り切っていたはずです。

■「時速50~60キロ」と供述した容疑者

 本件は、事故発生から逮捕まで、22日という日数が経っています。

 なぜ、現行犯逮捕されなかったのか。その理由は定かではありませんが、上記ニュースの中に気になるやり取りがありました。

「何キロくらい出していたか?」という記者のインタビューに対して、容疑者はこう答えているのです。

「スピードメーターを見て走ってるわけではないので、50km~60kmだと。(事故は)一瞬なので。同じ立場だったら、どうしようもなかったと思いますよ」

 事故直後の現場検証でも警察官にこのような説明をしていたとすれば、制限速度を守って運転していたことになり、「逮捕」には当たらないと判断されたのかもしれません。

 しかし、実際の速度は、本人の説明とは大きくかけ離れたものでした。

 映像には制限速度の2倍近い、時速100キロの猛スピードで現場を走る容疑者の車がはっきり映っていたのです。

 もし、防犯カメラの映像が残っていなければ、どうなっていたことでしょう。

 自己防衛的な加害者の虚偽供述を覆し、一瞬で起こる交通事故の「真実」を立証するのは極めて困難です。

■3年前にも事故を起こしていた容疑者

 実は、この事故が発生した直後、筆者のもとに「近隣住民」を名乗る方から具体的な情報提供がありました。

 その方は、亡くなった中学生を批判するような一方的なコメントがネット上に相次いでいることに心を痛めておられる様子でした。

 今回逮捕された容疑者は、日ごろから危険な運転を繰り返す様子が目撃されており、3年前にもニュースになるような事故を起こしていたというのです。

 早速、過去の記事を調べてみました。

 2018年3月6日付けの『産経新聞』によると、情報提供者が指摘していた過去の事故とは、以下のようなものだったようです。

『6日午前9時50分ごろ、福岡市早良区の親和銀行西新支店前で車同士が衝突し、弾みで近くに駐車していた別の車が押し出され店に突っ込んだ。客や行員に負傷者はなく、運転手1人が軽傷を負った』

 事故から3週間がたった5月24日、私に寄せられていた情報とほぼ同じ内容が、『テレビ西日本』(以下)でも報じられていました。

『周辺住民「事故起こすだろうなと」中3死亡事故 逮捕の男 直前にも危険な運転 逮捕前の男を直撃 福岡市』

 こうした声が上がっていながら、命を落とす被害者が出る前に、なんとか抑止することはできなかったのでしょうか。

■事故を起こしやすいドライバーは存在する

(財)交通事故総合分析センターのデータによれば、「事故を起こしやすい特性を持つドライバー」は実際に存在し、3年間に事故を2回以上起こしたドライバーがその後の3年間に事故を起こす割合は、無事故のドライバーよりかなり高くなっていることが指摘されています。

 ちなみに、時速100キロで走ると、車は1秒間に27.8メートル進みます。50メートル先にいても、わずか2秒で目の前に現れるのです。

 一般道を制限速度の2倍である時速100キロで走行するというのは、狂気の沙汰と言っても過言ではありません。

「同じ立場だったら、どうしようもなかったと思いますよ」

 と語った容疑者。

 なぜ、一般道でそれほどの速度を出す必要があったのか?

 普段の運転はどのようなものだったのか?

 そして、今回の事故が、本当に「どうしようもなかった」事故だったのか……。

 この先の取り調べで真実が明らかになってほしいと思います。