コロナ禍の重大事故を1件でも減らしたい! わが子を失った遺族らが国へ緊急対策を要望

17年前、青信号で横断中の6歳女児が死亡した事故現場には今も花形向けられている

 またしてもコロナ休校中の小学生が、交通事故の犠牲となりました。

『死亡の男の子は横断歩道渡る』(NHKニュース/ 2020.5.21)]

 記事によると、5月20日正午過ぎ、滋賀県栗東市の県道で3年生の男の子がダンプカーにはねられ、頭を強く打って亡くなったというのです。

 現場は見通しのよい片側一車線の直線道路。男の子は信号のない横断歩道を横断中だったそうです。

 私はこの2か月間、休校中の子どもたちが被害に遭った交通事故について繰り返し記事を書き、その危険性について発信してきました。

 しかし、記事を書くたびに新たな死亡事故のニュースが飛び込んでくることに愕然とし、恐怖すら覚えています。

「コロナ禍」から子どもを守るためにとられたはずの休校措置が、結果的に「交通禍」を招き、かけがえのない命を奪ってしまう。

 なぜ、このような惨禍が続くのか……。

 この1週間を見ても、「暴走」「信号無視」「飲酒」「ひき逃げ」といった極めて悪質な事故の報道が相次いでいます。

 子どもたちがどれだけルールを守っていても、違反をして突然飛び込んでくる鉄の塊には、絶対に勝てないのです。

■コロナ自粛下での交通事故増加を防ぐための要望書提出

『コロナ禍の今、全国各地で起こっている異常事態をなんとしても食い止めなければならない……』

 そんな思いで、早速、行動を起こした団体があります。

「クルマ優先でなく人優先の社会へ」をスローガンに活動を展開している『クルマ社会を問い直す会』(共同代表/青木勝・足立礼子)です。

 同会は5月14日付で、'''『コロナ自粛下での違法運転と交通事故増加を防ぐ緊急対策」を求める要望』'''を警察庁長官と内閣府政策統括官交通安全対策室長宛てに提出しました。

 要望書では、新型コロナウイルスによる自粛要請で交通量が減ったものの、都市部などではスピード違反や不注意運転によるとみられる死亡事故が増えていること、また、休校中の児童・生徒が犠牲になる事故が相次いでいることを重く見て、次のような記載がされています。

日本では以前から歩行者など交通弱者の死亡率の高さや、ドライバーの交通弱者軽視が問題になっていますが、コロナ危機という状況下でさらに被害者を増やすことは断じて許されません。コロナの緊急事態宣言によって生じる人命リスクは、国が責任をもって防ぐべきものです。交通事故の抑制は、コロナ対応に追われる医療機関の負担を緩和し医療崩壊を防ぐうえでも重要視されています。

 共同代表の一人である足立礼子氏は、こう語ります。

「歩行者・自転車通行者の安全を守るため、当会では、市街地や住宅街では時速 30 キロを超えない低速走行の徹底をクルマに強く呼びかけるよう要請しています。 国の対応はどうしても後手後手になりがちですが、これ以上被害者を出さないためにも、すぐに対策してほしいと願っています」

■交通事故減少の裏で死亡事故増加の危険な現実

「もはや、全国的に『交通緊急事態宣言』の発令が必要な状態ではないかと感じています」

『交通事故でまた子どもが犠牲に 遺族らが緊急の訴え「青信号でも車は飛び込んでくる!」』(2020.5.11)で、こうコメントしてくださった東京都の佐藤清志さんも、『クルマ社会を問い直す会』で活動する会員の一人です。

 佐藤さんは、現状の交通対策に疑問を投げかけます。

「関東より一足先に緊急事態宣言が解除された大阪では、平成以来、交通事故件数が最少となりましたが、逆に死者数は増加したとのことです。では、そのことに対しての緊急事態宣言はないのでしょうか? 毎年、毎日、死者が出ながら、交通事故の場合は感覚が麻痺し、大きな話題性がない限りは取り上げられることもありません。でも、被害者・遺族にとっては、最大の事件がそこでは起きているのです」

 佐藤さんの長女・菜緒ちゃん(当時6歳)が交通事故で亡くなったのは、17年前の今日、2003年5月24日のことでした。

青信号で横断中、左折巻き込みのダンプにひかれて亡くなった菜緒ちゃん(左) (佐藤さん提供)
青信号で横断中、左折巻き込みのダンプにひかれて亡くなった菜緒ちゃん(左) (佐藤さん提供)

 この日、菜緒ちゃんは自転車に乗り、お母さんと一緒に青信号で横断歩道を渡っていました。

 そのとき、左後方からダンプカーが停止せず、突然左折してきたのです。

「菜緒の身体は大きなダブルタイヤに自転車もろとも踏みつぶされ、ダンプはそのまま100メートル進んで、目撃者の制止によってようやく止まりました。警察から知らせを受け、私が駆け付けたときには、もう、菜緒の可愛い顔を見ることはできませんでした。唯一原形をとどめていたのは、小さな手のひらだけです。でも、その手を握った瞬間、すぐにわかりました。いつも手をつないで散歩した、あの菜緒の手だと……」

左折してきたダンプに踏みつぶされた菜緒ちゃんの自転車(佐藤さん提供)
左折してきたダンプに踏みつぶされた菜緒ちゃんの自転車(佐藤さん提供)

●菜緒さんの事故についての記事

『4月10日は「交通事故死ゼロを目指す日」娘の命を突然奪われた父の訴え』

■事故当日、亡くなった娘におにぎりを買って……

 佐藤さんは語ります。

「『自粛疲れ』という言葉も多く聞かれますが、交通被害者・遺族たちはクルマ社会の恐ろしさ・理不尽さを日夜思いながら、『被害疲れ』の状態で毎日を過ごしています。疲れ切って、萎えてしまっている人ばかりです。片時もそのことは頭から離れていません。こんな生活を死ぬまで一生過ごしていかねばならないのが、交通事故の被害者・遺族なのです」

 私は佐藤さんと共に、菜緒ちゃんが亡くなった国道1号線の事故現場を訪れたことがあります。

 横断歩道のわきには、お花とたくさんの飲み物やおもちゃが供えられていました。

 その現場で、佐藤さんは私にこんな話をしてくださいました。

「事故が起こった日の深夜のことでした。私は無意識のうちにコンビニでおにぎりを買い、ふと気づくと、この交差点に来ていました。『菜緒は今日、まだ晩ごはんを食べていなかったな。きっとお腹がすいているだろうな』と思いながら……」

菜緒ちゃんが亡くなった事故現場の横断歩道(筆者撮影)
菜緒ちゃんが亡くなった事故現場の横断歩道(筆者撮影)

 あの日から今日で17年……、佐藤さんは菜緒ちゃんのような交通事故被害者をなくすため、学校等での講演をはじめ、今もさまざまな活動を続けています。

 緊急事態宣言を出して交通量が減れば、事故件数が減る。しかし、道路が空いていると速度が上がり、死亡事故が増える。逆に、速度を落とせば、重大事故を減らすことができる……。

 新型コロナウイルスに対する全国民挙げての「外出自粛」という対応は、クルマ社会の現実を初めて具体的にあぶりだしました。そして今、さまざまな課題を突き付けています。

 国には、同様の事故でこれ以上被害者、遺族を生まないために、ぜひ前出の要望書に目を向け、検討していただきたいと思います。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

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