今夜から大雨予想 被災エリアは雨漏りによる低体温症に要注意!

熱帯低気圧による大雨が予想される中、台風で被災した住宅では低体温症に要注意です(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 9月9日の未明、猛烈な台風15号が関東を直撃してから1週間、今度は熱帯低気圧が近づいており、被害の多かった千葉県には、早ければ夕方から16日の朝にかけて激しい雨が降るという予報が出ています。

『今夜関東に熱帯低気圧接近 千葉など大雨注意 今日15日(日)の天気(ウェザーニュース 9/15)

 一昨日(13日)、私は車で南房総の山中を走り、今回最も被害が大きかった房総半島南部の鋸南町、南房総市、館山市などの状況を取材してきました。

<無数の大木や電柱が道路を寸断 千葉県南部の惨状は想像以上だった!(2019/9/14配信)>

 この地域では、瓦や屋根が飛ばされる、窓ガラスが割れる、扉や壁が破損する、建物自体が損壊するといった大きな被害が出ており、住民の方々はブルーシートでの応急処置に追われていました。

 消防庁災害対策室によると、台風15号によって全壊もしくは一部損壊した家屋は、関東の広域にわたっており、千葉県内で1193軒、神奈川県で451軒、東京都で205軒、茨城県で106軒、その他の県も合わせると、計2014軒となっています(9月14日現在)。

 被災からまだ1週間ということもあり、修理や防水が不完全だというお宅が大半だと思います。

 また、熱帯低気圧は台風と違って、長い時間、大量の雨を降らせるため被害をさらに拡大させる恐れがあり、大変心配です。

台風15号で屋根に被害を受けた南房総の家屋(筆者撮影)
台風15号で屋根に被害を受けた南房総の家屋(筆者撮影)

 では、大雨に備えて被災地の方々は何に注意すべきなのか、また、大雨になる前にどのような対策を取るべきなのでしょうか。

■雨濡れによる低体温症に要注意! 高齢者は死に至ることも

 そこで、東日本大震災、新潟中越地震等の大災害の現場で、多数の被災者に向き合われてきた岩手医科大学法医学講座の出羽厚二教授にお話を伺いました。

岩手医科大学法医学講座・出羽厚二教授(筆者撮影)
岩手医科大学法医学講座・出羽厚二教授(筆者撮影)

ー 今夜(15日)から明日(16日)にかけて、関東地方には大雨の予報が出ていますが……。

 

「被災地では多くの家屋の屋根や壁が破損しているようです。長時間雨に濡れてしまうと、『低体温症』になる危険性が極めて高くなります。明るいうちに、屋根のある場所、雨に濡れない場所に避難してください」(出羽教授・以下同)

ー どのくらいの時間、雨に濡れると危険ですか?

「身体が濡れてから1~2時間程度で体温が下がってしまいます」

ー 低体温症に陥る気温は?

 

「20度くらいになると命が危ないと考えてください。夜は気温が下がります。特に高齢者の場合は、被災されてから体力も相当落ちていると思われますので、さらに命の危険が高まります」

ー 日中は気温も高いため、夜の雨の冷たさが想像できないという方も多いかもしれませんね。

「日中は暑いと思って薄着をし、ましてや断水しているとなれば、雨のシャワーが浴びられて気持いいと思う方もおられるかもしれませんが、それは大きな間違いです」

ー ただ、お年寄りの場合は、避難と言っても移動の足がない方も多いと思います。その点が心配です。

「自主避難が難しい方に関しては、自治体の方で大型バスなどを出し、停電していないエリアの避難所まで移送できればベストです。とにかく、「雨が降り出す前に屋根のある場所へ」が必須です。今言っても遅いのですが、本来であれば、台風15号が来る前にそうした対策をとるべきだったと思います」

■過去の大災害の教訓を生かす

 2004年、震度7の新潟中越地震が起こったとき、崖の崩落で車ごと母子が閉じ込められ96時間後に1歳のお子さんが救出されるという出来事がありました。

 残念ながらお母さんとお姉ちゃんは亡くなりましたが、あのとき、現場へ出向いて母子の死亡確認をされたのが、当時新潟大学の法医学教室におられた出羽教授でした。

 また、2011年に起こった東日本大震災のときは、岩手医科大学法医学講座のトップとして多くの被害者の死亡確認を行い、歯科医師や警察と連携しながら、数千体の遺体の身元確認作業に携わられました。

 そうした経験をふまえ、出羽教授は、次なる災害を決して「想定外」で済まさず、できる限りの備えをすべきだと指摘されています。

「岩手医科大学の法医学講座には6名のスタッフがいますが、有事に備え、6人が1か月過ごせるだけの食料や飲料水、簡易ベッド、テント、トイレ、ガソリン、ガスボンベ、カセットコンロなどを備蓄しています。また大学病院の方には、『パワーセンター』という巨大な自家発電装置も設置し、万一に備えています」(出羽教授)

東日本大震災で被害を受けた釜石・鵜住居地区(筆者撮影)
東日本大震災で被害を受けた釜石・鵜住居地区(筆者撮影)

■真夏のエアコンは温暖化が進む今、もはや「生命維持装置」

ー 停電になったうえ、猛暑の中、熱中症の症状を訴える方も多くおられました。低体温症も危険ですが、こちらも深刻ですね。

「これだけ温暖化が進んだ日本では、真夏の暑さ対策は必須で、エアコンはまさに『生命維持装置』と言っても過言ではありません。

 万一の停電に備え、発電機を用意しておくか、すみやかに被災者を電気のある場所まで移動させる、それしかないと思います」

ー 今回は台風そのものによる死者は少なかったようですが、今後心配される点は?

「停電や断水が続き、今夜のような大雨が降ると、災害関連死が増えることも予想されます。しかし、天気の場合は早めに予測できるので、何とか事前に対処して、命を守っていただきたいと思います」

ー 停電や断水は大変なことですが、国民全体がこうした事態に備えるべきですね。

「今回のような台風被害に堪えられないとなると、近い将来来るであろう南海トラフ地震や津波の被害にはとても太刀打ちできません。電気や水はもちろん、食料なども全く足りなくなるでしょう。個人個人が発災直後の困難を乗り切れるだけの備えをしておくことは極めて重要です」

ー 被災地におられる方はこの記事を目にすることはできないかもしれませんが、現地にお知り合いがいる場合は、なんとか切迫する危険性をお伝えいただきたいですね。

「ぜひそうあってほしいと思います」

ー ありがとうございました。

いまだ台風の傷跡が残る千葉県鋸南町(筆者撮影)
いまだ台風の傷跡が残る千葉県鋸南町(筆者撮影)